冷徹な騎士団長の話し方がギャル語になりました~古代のフィジカル治癒はもう二度としませんから許して~
※残酷な表現、流血表現があります。苦手な方は読まないことをお勧めします。
※ご都合主義です。初投稿なので暖かい目でご覧になってください。
※挿絵有です。
______大きな戦いの後は、必ずしも静かなわけじゃない。
大きな鐘の音が鳴った。北門付近で現れた黒竜を倒したのだろう。
皆がホッっとする中、治癒班の人間はピリピリしていた。
「きっ、緊急だ!ブライア団長が!黒竜に、、、!」
若い騎士が声を荒げる。担架には、血にまみれた長い白髪の男が乗っている。
「まずい、もうポーションがない、、、。誰か!治癒魔法を使えるものは!」
治癒班の誰かが叫ぶ。
私は周りを見渡す、、、。誰も名乗りあげない。今日は負傷者が多すぎたのか、皆もう魔力がカラカラだ。私が行くしかないのか、心の中で大きく深呼吸をして覚悟を決めた。
「私。治癒魔法が使えますわ!けっ、けど一つだけ条件が_______」
「条件なんてあとで聞く!早く団長を!」
「いや条件を聞いて______」
「ほら早く!!!!!報酬ならいくらでもやるから!!!!」
若い騎士は全く聞く耳を持たない。
「もうどうなっても知らねぇから!あとでぜってぇ難癖つけんなよ!」
令嬢らしからぬ言葉遣いで叫んでしまった。言葉遣いの訂正よりも今は目の前の命が優先だ。
担架の方へ駆け寄ると、白髪の男の腹には爪に引っかかれたような深い傷があった。
このくらいなら私でも治せそうだ。わたしは傷の上に手をかざし、唱えた。腹から声をだして。
「ヒーーーーーーール!!!!!!!!!!!!!!!」
周りにいる騎士や治癒班が思わず耳を塞ぐ。本来、ヒールにこんな大きな声をだす必要はない。
小さな、しかし目が開けられないほど眩しい光が、深い傷を照らした。すると、いつの間にか傷が塞がって、いや、消えていた。
治癒班の、”何やってんの!?”という表情と、騎士たちの阿呆面が____驚いた顔が目に入る。
「、、、は!?今の一瞬で、、、!?黒竜の傷を、なっ治した!?」
「傷が消えただと!?あの短時間で!?」
まずい、このままだと誤解されたまま神格化されてしまう。恐る恐る口を開く。
「え~と、でっ、では!ごきげんよう!」
「おい!待て!」
一人の騎士にガシっと腕を掴まれてしまった。感情が昂っているとはいえ貴族令嬢に許可なく触れるとは無礼だ。しかし今その貴族令嬢の心は別のことで荒れていた。
まずい、非常にまずい、
______ガタッ
音がした方向を向くと、
「え、マジやばい、ギリ生きてんだけどwうちを救ってくれた子どこ~?」
白髪の男が、言った。通りがかった下町の娘とかではなく、だ。
「、、、え?」
「だっ団長?嘘だろ?」
「いや、幻聴だろ、もしくは後遺症。」
「そんな後遺症きいたことねぇよ!」
「申し訳ございません!!!私ですわ!!!」
あ~、自分でも初めて知った。これが、わたしの治癒魔法の、副作用ということを。
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私には前世があった、らしい。はっきりとは覚えていない。
せいぜい、”治癒魔法が使えた” ”自由奔放な公爵令嬢だった” ”魔力と生命力を使い果たして死んだ” ことしかはっきりと覚えていない。
しかも、前世と現代の治癒魔法は仕組みが違うらしく、先ほど使ったのは前世のほうだ。
現代の治癒魔法は精密だがどうしても大きな傷は治しにくい。前世の時の治癒魔法は威力が半端ない分、今の治癒魔法に慣れた人間には副作用があるかもしれないのだ。
そして、今世は伯爵令嬢として生きている。今世の治癒魔法と前世の治癒魔法どちらも使える。誰にも前世の治癒魔法は使う予定はなかったが、治癒魔法はなんとなく馴染みがあるし、
伯爵家とはいえども、兄、姉、自分という家族構成だったため、大きな戦いがあった後だけは働いていいとお許しがでた。
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前世のこと以外の事情をうまい具合に話した。今使った治癒魔法に関しては古代の本を参考文献にして一か八かでやったということにしたが、ともかく視線が痛い。
治癒が終わったブライア団長は湯あみをし、本来の美貌を取り戻しつつあった。
埃をかぶって白髪に見えていた髪は、照明に照らされて銀色に輝き、腰まである。長い前髪はゆったりと耳にかけられている。
鋭い双眼は華やかな赤ではなく、血に濡れたような濁った色をしていた。それを縁取るまつ毛は長く繊細で、思わず筆にしてみたら良い品ができるのではないかと考えてしまった。
さすがに人様のまつ毛を筆にするような趣向はないためやらないが。
「まあ、どんな理由があっても、うちが助かったんだし、このあげ~☝な話し方もいつかは治るっしょ?いけるいける!そーいえばうちのこと救ってくれたかわいこちゃんの名前教えて~!」
凛々しい顔でそう言われると一周回って笑えない。しかし、さすがに恥ずかしいのか本人の頬がうっすら紅に染まっているのは少し可愛らしいと思ってしまった。
「伯爵家次女、セレスティア・メルローズと申しますわ。」
「セレスティアちゃんね~!よろしく^^うちらこれからマブね~♪wうちけっこー有名だから名前知ってるかもだけど、シルヴァ・ブライア~」
危ない。よくブライア団長という名前だけはよく聞いていたから下の名前を間違えるところだった。
セレスティアちゃんと呼んでいるのは恐らくセレスティア嬢と呼びたいのだろう。呼び名まで変わってしまうとは。我なが副作用の効力が恐ろしい。
「てか、これを機に研究しちゃえばいんぢゃない?このアゲ☝な喋り方の発動原因」
治癒班と団長以外の騎士たちがざわつく。治癒班の男爵令嬢が口を挟んだ。
「しっしかしブライア様、日々ご公務で忙しいのにそんな研究に___」
「うちがやりたいって言ってんの!も~部外者口だすなら流石に激おこぷんぷん丸になるから~」
口調は穏やかだ。というかふざけた口調なのに、この部屋だけ温度が下がっていくような感覚に襲われた。
正直私自身もこの副作用の原因が気になる。が、人の命が関わっていない限り面倒事には付き合いたくない。現在進行形で現れた面倒事は喋り方が変わるだけだ。だが、公務に支障がでてしまっている以上、土下座でも謹慎でも解雇でも国外追放でも素直に受け止めたいと思っている。
「申し訳御座いませんわ。」
「週休二日制朝昼晩おやつ全額負担上限なし必要であればブライア家の客室にお泊り会OKってゆー条件でもだめ~?」
「流石に福利厚生が手厚すぎますわ、申し訳ないので____」
目上の人のお願いをここまで断るのが良くないのは分かっているが、いかにも口調以外は怖そうな人と一か月過ごすのは精神的にきつい。もうなんなら島流しでも良い。
「人懐っこいワンコ撫で放題も追加しちゃお♪」
「やりますわ、やらせてください。」
犬は、ずるい。
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わしゃわしゃわしゃ、、、
もふもふもふ、、、
「は~、幸せ。このまま死んでも良い。」
「今死なれたらうちめっちゃ困るからやめて~w」
心の声が駄々洩れになってしまっていた。気を引き締めよう。いま私は、ブライア公爵家にいる。色々な紙にサインをしてあれよあれよと支度がおわり、その日のうちに泊めてもらうことになった。
ちなみにブライア団長は溜まりに溜まった有休を使い休むそうだ。副作用のせいで申し訳ない。
「こほん、失礼致しましたわ。ではさっそく研究を。」
「その前に、夜ごはんたべちゃわな~い?うセレスティアちゃんもそろそろはらぺこだろうし!さっきからずっと指に力入ってるしw」
「え、あ、はっはい。お気遣いありがとうございますわ。」
自然にエスコートされた。改めて口調と不愛想な表情以外は完璧だなと思う。
そういえば。なぜほとんど面識のない団長が私の癖を知っているのだろうか。そんな疑問は頬が落ちるほどに美味な夕食によってかき消された。
そして、夕食を食べている私の顔を見ているブライア団長の表情も、見ていなかった。
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俺はセレスティア嬢を客室まで送り届けたあと、湯あみをして寝室へと向かった。
そして、確信を得た。あのプラチナブロンドの髪に薄い紫の瞳。高い治癒能力。
幸せを噛みしめながら寝台に潜った。
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「おはようございますわ。ブライア団___ブライア様。」
「呼び方とか呼びやすいやついでおっけ~だよ♪てか昨日ねれた~?睡眠不足はまぢ良くないからね!」
心なしか昨日よりも団長の表情が柔らかい気がする。いままで聞いた噂だと”冷徹” ”鬼“ ”人形” などと言われていたが当てにならないな。
あと何故か廊下を歩いている使用人がこちらを見るたび微笑みを浮かべている。そんなにこの団長の口調がツボに入ったのだろうか。
朝食の前に少し検査をすることにした。まずは、”魔病”を検査する器具を使う。魔病とは、魔法によって引き起こされる病のことで、全ての魔病をこの器具で探知できるといわれている。
器具を団長の体にかざしてもなんの反応も無い。
「まだ登録されていないだけで、この副作用もまびょーの可能性もワンチャンないんかな~?」
「それはないですわ。まず魔病というのは有害な魔法特有の波動をだしていることが条件で魔病と呼ばれ
ているんですの。その波動を探知するための器具で反応しないということは、少なくとも人体に有害な
魔法はかかっていないということですわ。」
「なる~!でもこれも十分悪い魔法だとおもうんだけど~wうけるw」
たしかに有害な魔法だが私の治癒魔法の副作用なのでグサッとくる。
「ま、とりま朝ごはん食べよ~☝今日は焼き立てのパンケーキとバリうまいベーコン♪」
脊髄反射で首を勢いよく縦に振った。
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その日は少し研究に進歩があった。まず、この副作用は呪い、魔病、魔力過多によるものではないということ。
次に、徐々によくなるというものではなく、ある日パタリと症状が消えるということだ。
あまり役に立たない情報かもしれないが一歩前進だ。
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そこから二週間がたったが全く手がかりをつかめていない。私は焦っているのだが当の口調を変えられてしまった本人は呑気だ。毎朝おはようの後に朝食のメニューを言うし、悩んでるときに犬をつれて部屋に入ってくるし、お昼もおやつも晩御飯も美味しいしい犬も可愛いし。
後半はただの感想だ。
終わりの見えない研究の気晴らしに中庭に向かった。
黄色の花を咲かせている大きな木へ向かった。あそこの下は日陰になっていて、暖かくなった今の季節にぴったりだ。昼寝をしようと足を運ぶと季節と相反して涼しげに揺れる銀が見えた。
近寄ると小さな寝息をたてて寝ている。
普段の、、、いや、最近の口調がやかましいからか、黙っていると顔の美しさが際立つ。
男らしい引き締まった体躯に、中世的で美しい顔。目は切れ長でまつ毛は筆に(以下略)、よくみるとはだけたシャツから見える鎖骨には黒子がある。もはや存在が破廉恥だ。
よく見ると冷や汗をかいている。日陰にいて気が付かなかったが顔が青白い。悪い夢でも見ているのであろうか。
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「アイリス様!!!逃げましょう!!!」
目の前には俺が忠誠を使った人がいる。彼女は令嬢らしからぬ口調でしゃべる。
「無理でしょ~。うちのビジュ目立つし。」
「では鬘をご用意いたしますから!!!」
「はぁ、もう分かったよ。すぐ髪と瞳変えれるからちょい待ち。」
そう言って目の前の桃茶の髪の毛は淡い金色に代わり、薔薇色の瞳は薄紫に変わった。
残念ながらいつもと違う美しさに見惚れている時間はなかった。
「行きましょう!!!」
「ふふ、なんが駆け落ちみたいでおもろ!w」
いちいちドキリとしてしまう。彼女は本気で言っているわけがないのに。
急がないと。でなければ、
外に出た。途中までは逃げ切れた。なのに。
「おい!魔力探知があの娘に反応しているぞ!」
「きっと姿を変えたんだ!オリュントスの魔女め!」
「生け捕りにしろ!」
中途半端な獣どもめ。うるさい。彼女とオリュントス国をいちいち紐づけるな。
「黙れ!うちがおめぇらみたいな野蛮な奴らに生け捕りにされるとでも!?黙ってくだばれ!!!」
あぁ、好きだ。乱暴な口調も、男勝りなところも。でも、笑うと薔薇が咲いたみたいに、綺麗な所も。
でも今はそんなこと考えている暇はない。そんなこと奴隷契約を交わした日から。いや、彼女に拾って貰った頃から思っていた。
気づけばあたり一面死体で埋め尽くされていた。
「これでひとまずは大丈夫そかな!久々にやってスカッとした~~~~!☝」
「そうですね!魔力の方は?」
「だいじょ~ぶ!ほぼ物理でやったし!よし!ここまで来たらぜってぇ生きてやる!」
「そんな口調で話していたらお嫁に行けなくなりますよ」
「また始まったお小言~!wお母さまよりお母さんらしいじゃない! 、、、まあ、その時は■■■が___」
ザシュッ ザシュッ
肉が切れる音がした。
ああ、思い出したくない。その時、彼女の右手と左足が無くなったのは。目も。
背後には獣の耳をはやした男がいた。
「はははっ!!!!やっとだ!オリュントスの魔女を___」
俺は何も言わずその男を切った。が、
その男の最後のあがきか、反撃をくらい、俺の胸に深い傷ができてしまった。
痛い。胸が熱い。痛い。口から血が流れていく。
そんなことはどうでも良い。どうせ死ぬんだ。最後の瞬間は彼女を見たい。許可も取らず彼女を抱き上げた。いつもより軽かったが、今は抱き上げるのも苦痛だ。
「■■■!!!だっだめ動かないで!!!」
「嫌です。最後は好きにします。それんなことより、アイリス
様、ご自分の治癒を。」
「うるっさい!!!これは命令だ!!!いまから契約の追加をする!!!」
俺の右腕に刻まれた奴隷紋が痛む。奴隷は主に逆らえない。彼女から命令をされたのはこれで初めてだった。
「アイリス様、何をなさるおつもりで!」
「一つ目、今の体勢を私が死ぬまで続けること。」
「なっ何を」
「二つ目、貴方は致命傷を負っている。わたしは出血量と痛みを抑えたけどいつまで持つか分からない。
手っ取り早く■■■を治癒する。この治癒を拒まないこと」
「は、、、?」
何を言っているんだろう、この方は。今思い出しても可笑しい。奴隷を救うなんて。
「三つ目、貴方は私に関連することで自害をしないこと。これはうちを守り切れなかった■■■への罰だと思って。」
「っダメです、だっ」
「四つ目、好きに生きて。この戦いが終わったら平和に暮らすのもいい。■■■がこの世界を壊してしまってもそれはそれでおもろいかもね。」
魔法によって変えられていた髪の毛の色と瞳の色が元に戻った。彼女は笑った。きられてない左目でこちらを見た。
「五つ目、これだけ覚えといて、うちは、シルヴァが、好きだった。ありがとう。大好き。」
「っ、、、。俺も、俺も、好きだった、いや、ずっとアイリス様のことしか考えません。」
「はははっ!告白、遅すぎたね。ありがとう、さようなら。また会おう。」
体の力が一気に抜けた。胸の痛みも、奴隷紋の痛みも消えた。ああ、終わりなんだ。何もかも。
”また会おう” この言葉もきっと命令だ。命令じゃなかったとしても、俺が叶える。絶対に。
治癒魔法にしては珍しく副作用はなかった。
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しばらくするとブライア団長は飛び起きた。すると突然私を抱き上げた。
「腕は!?足は!?魔力使い果たしてないよね!?まぢで!」
「えっはい!私は恵まれているので五体満足で生きてますわ!」
団長は心底安心した顔を見せる。いや、なぜこの体勢。
「あの~、なぜこの体勢に致しましたの?」
「あっ!ご、ごめん!ガチはずい、、、。今おろしたげるからちょい待ってて~☟」
人形に命が宿ったかのように頬が薔薇色に染まる。瞳がいつもより澄んだ赤色に見える。
なんだかものすごく既視感がある。でも、分からない。
「がちでごめん、ちょ~怖い夢みちゃって動揺しちゃって、☟」
「いえ、それよりブライア団長が人間らしくて安心しましたわ!いつもより柔らかい表情をしていらっし
ゃいますし!」
今度は驚いたような表情をした。初対面の時と違い表情がコロコロ変わり見てて面白い。
「それは、、、アイリス様、、、セレスティア嬢と一緒にいるからですよ。顔も名前もそのままで待ってたんですから。」
風が強く吹いてよく聞こえなかった。
「今なんて?」
「なんでもない♪」
なんだかやっぱり見たことあるな、この人。
まだしばらく研究は続きそうだ。
最後までお読み頂きありがとうございました。☟の☆の評価、よろしくお願いします。
好評でしたら長編にします。




