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異世界録  作者: 世界記録端末


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9/26

side:とある地域では

――エルフ自治領《深森域エルドレイン》


大陸西方。

人族の地図には“立入困難”とだけ刻まれる原生林。


天を覆う千年樹。

濾過された陽光。

魔素を含んだ静かな風。


森は、ただの自然ではない。

記憶を蓄え、歴史を抱く“生きた領域”。


ここはエルフ自治領《深森域エルドレイン》。



樹上回廊の先、環状議場。


白木と蔦が編まれた神聖な空間で、

数名のエルフが魔力観測陣を囲んでいた。



「……揺れました」


静かに告げたのは、

蒼銀の長髪を揺らす若き学士

セレスティア=リュミエル


外見は二十代前半。

実年齢は百二十七歳。


魔素流動学の第一人者。



「どの規模だ、セレスティア」


低く問うたのは、議場守護を務める戦士長

ガルド=フェルン


褐色の肌。

長弓を背負う歴戦の守護者。



「局地的ですが、質が異常です」


空中に展開される魔力流動図。

森を巡る力の循環網。


その一角が歪んでいる。



「方角は?」


議長席から声。


深緑の法衣を纏う長老

イシュタル=エルヴェイン


森政を司る評議会筆頭。



「東方。人族圏」


「レグナス王国方面です」



議場の空気が僅かに変わる。



「戦の兆しか」

「勇者召喚では」

「周期反応……」



発言したのは記録官

ミレイユ=サナリス


古樹記録を管理する年輪司書。



セレスティアは首を振る。


「断定は早計です」


「ですが自然発生の波形ではありません」



「“意図された力”の痕跡です」



沈黙。



イシュタルが目を閉じる。


「静観とする」



「人族の選択は人族の責任」

「我らは森を守る」



干渉しない。

それが長命種の矜持。



だが。


セレスティアの視線は東から離れない。



(……似ている)


古代災厄期の魔力波形。

文明崩壊前夜の記録。



ミレイユが小声で問う。


「気になりますか」



「ええ」


「記録樹に追記を」



森は再び静寂へ還る。


だが“知る者”だけが違和を抱えていた。



――天嶺域《神獣座》


雲海を貫く白き霊峰群。

魔術も届かぬ天上領域。


神獣のみが棲まう不可侵の地。



峰頂の霊石台座。


白銀の巨躯が横たわる。


神獣王

白霊王フェン=ルミナス


星を宿す双眸。

吐息は霧となり天空を巡る。



「……目覚められましたか」


傍らで頭を垂れるのは側近獣

蒼角のリュゼル


蒼水晶の角を持つ神獣族の参謀。



フェンの瞳がゆるやかに開く。



「動いた」


概念に近い声音。



前肢の先に浮かぶ水鏡。

世界の魔力潮流が映る。



「東方人族圏に綻び」


報告するのは観測役

白翼のエルミナ


翼持つ神獣族の観測官。



「周期の歯車が軋む音だ」



リュゼルが問う。


「介入なさいますか」



長い静寂。



「否」



「流れに委ねよ」



神獣は守護者。

世界の管理者ではない。



だが。


フェンの瞳が細まる。



「……記録にない揺らぎが混じる」



エルミナの翼が震える。


「未知の存在、ですか」



「断定はせぬ」


「だが、もしも」



霊峰の風が止む。



「理の外にある者なら」



言葉はそこで途切れた。



フェンは再び瞼を閉じる。


世界は静かに回り続ける。



(Side:了)

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