15.選定
王城、謁見の間。
重い扉が閉じられる。
その中央に立つのは――
勇者。
まだ制服のままの青年。
この世界に召喚されてから、まだ数日。
だが視線はすべて彼に向いていた。
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王座の上。
レグナス王。
重厚な王冠を戴いた男が口を開く。
「勇者殿」
低い声。
「此度の召喚、改めて礼を言う」
勇者は少し戸惑いながら頭を下げる。
「いえ…」
「まだ何もしてないですし」
正直な言葉。
その様子に
騎士たちの間から小さな笑いが漏れる。
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王の隣。
白いローブの男が立っていた。
聖国ルミナから派遣された神官。
勇者召喚の立会人。
その男は静かに勇者を観察している。
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王は続ける。
「本日、勇者殿に最初の任務を与える」
ざわめき。
勇者の初任務。
騎士団長が一歩前へ出る。
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ガルド=ヴァレス
レグナス王国騎士団長。
巨大な体躯。
傷だらけの顔。
いかにも戦場の男。
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「王都北方」
低い声。
「黒霧森」
勇者が首を傾げる。
「森?」
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騎士団長
「最近魔物の活動が活発化している」
「本来この地域では出ない魔物も確認された」
勇者は少し緊張した顔になる。
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その時。
部屋の端。
一人の男が記録を書いていた。
羽ペン。
古い羊皮紙。
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レオン=アーデル
王国記録官。
勇者召喚の記録担当。
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彼は視線を上げる。
そして勇者を見る。
少しだけ目を細めた。
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(不思議だ)
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彼は何度も
勇者を見ている。
だが
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(記録に残る感じがしない)
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説明できない違和感。
まるで
存在の輪郭が
曖昧なような。
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レオンは首を振る。
「……気のせいか」
小さく呟き
再びペンを走らせる。
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王の声が響く。
「これは討伐ではない」
「勇者殿には――」
少し間を置く。
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「実戦経験を積んでもらう」
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勇者は小さく息を吸う。
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異世界。
魔物。
戦闘。
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ついに
「物語」が始まる。
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王が言う。
「同行するのは」
騎士団長が振り向く。
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三人の騎士が前に出る。
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一人目。
女騎士。
短い赤髪。
鋭い目。
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「リナ=フェルド」
剣士。
素早い剣技。
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二人目。
大盾を背負った男。
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「ダグ=マルド」
重装騎士。
防御の要。
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三人目。
ローブの少女。
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「エミリア」
王国魔術師。
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三人が勇者の前に立つ。
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リナがニヤッと笑う。
「よろしくな、勇者様」
砕けた口調。
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ダグ
「護衛は任せてください」
真面目。
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エミリアは少し緊張している。
「よ、よろしくお願いします…」
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勇者は少し笑う。
「こちらこそ」
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その時。
王城の窓の外。
遠くの空。
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見えない場所で
魔力が揺れた。
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聖都ルミナ
観測区画。
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エルディオンが目を開く。
「……動いた」
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同時刻。
深森域エルドレイン。
セレスティアが空を見る。
「また揺れました」
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神獣座。
白霊王フェンが瞼を開く。
「因果が歪む」
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そして
灰境の旅団。
焚き火の前。
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リゼリアが小さく呟く。
「未来が…また増えた」
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アルドは欠伸をする。
「面倒な予感しかしないな」
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そして
勇者はまだ知らない。
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この遠征が
世界を揺らす
最初の一歩になることを。
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続く。




