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場所は、記録に残らない。
地図にも記されない。
人の領域でも、魔の領域でもない境界地帯。
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空は薄く白み、
風は音を持たない。
世界の継ぎ目のような場所。
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一人の影が立っている。
年若い。
軽装。
武装は最低限。
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だが。
佇まいだけで分かる。
“戦える者”ではない。
“戦いを終わらせる側”の気配。
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足元に広がるのは、
崩壊した魔獣の残骸。
地形ごと抉られた戦闘跡。
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派手な魔術痕はない。
大規模詠唱の余波もない。
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ただ。
最短で終わらせた痕跡だけがある。
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「……また、か」
小さな呟き。
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声は若い。
だが感情の起伏が薄い。
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空を見上げる。
雲の流れ。
魔力の流れ。
命の流れ。
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それらが“見えている”かのような視線。
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胸元に淡い光。
刻印。
紋章。
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それは一瞬だけ輝き、すぐに沈黙する。
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誰にも気づかれない。
気づかれる必要もない。
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“選ばれた”ことを誇る様子はない。
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ただ。
役割を理解している者の静けさ。
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遠く。
世界のどこかで生じた歪み。
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視線が、東へ向く。
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「ズレてる」
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短い言葉。
意味は語られない。
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風が吹く。
次の瞬間、姿は消えている。
転移でも高速移動でもない。
“そこにいなくなった”だけ。
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残された大地に、
淡い光の軌跡がしばらく漂う。
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世界はまだ、気づかない。
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二人の勇者が
同時代に存在していることを。
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(Side:了)




