最強冒険者レイの娘
わたくしの母さまは、とってもきれいな人。
でも、ふだんはあまりお家にはいないの。
お家にいつもいるのは父さま。
父さまはお顔がちょっとおこりんぼさんみたいだけど、とってもやさしくて、美味しいごはんやおかしを作ってくれるのよ。
このまえのパイ、すごくおいしかったなぁ。
母さまは「冒険者」というおしごとをしているの。
こわい魔物をたおして、わたくしたちや街をまもっているんだよ、って父さまが教えてくれた。
母さまは、すごくすごーく強い「ミスリル級」なんですって。
冒険者にあこがれているお友だちのレオにその話をしたら、顔をまっ赤にして
「すげぇ!」
って、何度もさけんでいたわ。
「ミスリル級は、この国に一人しかいないんだぞ!」
そう言われたけど、
「レイチェルの母ちゃん、すげえな!」
って言われたほうが、わたくしはうれしかった。
母さまが持っている冒険者タグというネックレスは、水色で、きらきらしてるの。
父さまのは、ぜんぜんきらきらしてない灰色。
でも父さまは、とてもたいせつにしている。
父さまは、母さまに冒険者になるお勉強をしてもらって、冒険者になったんですって。
そのときにもらったものなんだよ、って笑ってた。
母さまは、お勉強もたくさんできるのよ。
だって、わたくしがお姫さまになりたいって言ったら、
お姫さまにひつようなお勉強を教えてくれたんだもの。
お話のしかた。
きれいなスカートをよごさない歩きかた。
おじぎに、ごはんの食べかた。
母さまは、いつも出かけるまえに、わたくしたちをぎゅっとだきしめてくれる。
そして帰ってくると、
「ただいま!」
って言って、わたくしとテオドールの頭をなでて、さいごに――
「ちゃんと帰ったよ」
って、父さまをだきしめるの。
父さまは、ぎゅうぎゅうって母さまをだきしめて、
「おかえり」
って言う。
そのときの父さまは、いつも泣いている。
「ぶじでよかった……」って。
魔物って、そんなにこわいものなのね。
母さまがいないときの父さまは、母さまにもらったものをたくさんならべて、
「どうか、ぶじに帰ってきて……」
って、かなしい顔をする。
だから、テオドールと二人で、父さまをぎゅーってするの。
そしたら父さまは、ふっと力をぬいて、
「ありがとう」
って笑ってくれる。
「二人がやさしい、いい子でうれしいよ。
さすが、レイの子だね」
*
「えぇ? かぁたまはね、
『さすがカルのこ!』
って言うよ?」
きょとんとしたテオドールの言葉に、父さま――カルは、くすっと笑って、小さな頭をなでた。
「そうだよ。
『レイとカルの子』なんだからね」




