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#3

 乾いて擦り切れてしまいそうだった喉の粘膜を、命の水分と糖分がまんべんなく潤していく手応え。


 その素晴らしい多幸感を誰かと共有したくなって、子ウサギにも分けてあげようと思いつきます。


 ランドセルのフラップを開けて、巾着袋の紐に触れようとした時、彼は「あ、そっか」と当たり前の摂理を悟りました。魂不在の肉体は、水分を摂取することができないのです。


 生寿は潤んだ両目に手首のくぼみを強く擦りつけ、それから水筒をパーカーの前ポケットにねじ込んで、ランドセルを背負い直しました。


(待っててね。今、埋めてあげられる場所を見つけるから)






 それにしても、自然界からの借り物であるはずの大地をどこまでも覆う、罰当たりな灰色のアスファルトときたら、本当に困ったものです。


 四方を舐めるように見回してみても、肝心要の生きた土の姿はどこにも見当たらないのですから。


 申し訳程度の人工芝や庭の類ならあちこちに認められるのですが、それらはどれもよその家の所有物なので、侵入して一部を掘り起こすことは当然のことながら許されるはずがありません。


 苛つきを覚え始めた生寿は、車道と歩道の仲を取り持つ縁石のつけ根に十本指を思い切りめり込ませ、力いっぱい引き剥がしてやりたい衝動に駆られました。


 それほどまでに、どれだけ歩いても、どこを見渡しても、黒々とした地球の生肌は、どこにも見つけられないのです。








 無益とも思える探索を根気強く続けていくうち、次第に彼のふくらはぎが痛み始めます。生寿は矢も盾もたまらなくなって、バス停前のベンチに腰掛けました。


 と、そのタイミングであることを思い出します。


(そういえば、ここからもっと進んだところに、確か小さな公園があったはずだ)


 これ以上、ひとりきりで家から離れていくのは心細くもあり、また恐ろしくもあったのですが、彼は勇気を振り絞ってベンチからお尻を引き剥がし、再び歩き始めたのでした。


 真新しい住宅街の景色を突っ切るようにして、先へ先へと進んでいきます。


次回へ続く

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