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#2

 子ウサギの魂がすでに肉体から離れてしまっていることを、(朧気ではあるものの)生寿はちゃんと理解していました。


 「魂」という言葉についてはまだ知る由もありませんでしたが、なんとなくなら、生きていることと死んでいることの区別くらいはつく年頃になっているものですから。


 なので彼が、このままでは子ウサギに申し訳の立たない気がしてきて、間もなくその亡骸をどこかに埋めてあげようと思い立ったのは、ごくごく自然な成り行きだったのかもしれません。


 生寿にとって、お留守番の約束を破って飛び出した外の世界は、何もかもがいつも以上に大きく感じられました。


 特大のブロックを積み重ねてできたような住宅の数々は、重量感たっぷりに空威張りしています。


 様々な色形の、いかにも強そうな車の数々は、おのが不機嫌を見せつけるようにして、それぞれの駐車スペースからこちらを威嚇してきます。


 図が高いぞ人間ども、なんて今にも威圧してきそうな電信柱の数々は、我先にと空に向かって先端部を突き立てています。


 見慣れた景色のはずなのに、生まれて初めてひとりきりになった今の生寿には、なんだか全てが妙にデンとしいてるように感じられて、ちょっと圧倒されてしまうのでした。


 左手には、冷たい感触の水筒を。右手には、硬い感触のショベルを。それらを心の拠り所に、生寿は初秋の日差しのなかを歩きました。


 風に吹かれて枝から切り離された朱色の葉が、カーポートの柱に引っかかってとりとめもなく揺れています。


 視線を斜め上に向けると、綿あめみたいにご機嫌な雲をぶらさげた青空が、遠くの方で燃えている紅葉の一団と相重なって、対照色の景色を形成していました。


 四つ目の小さな窓をふたつだけ携えたグレーの住宅からは、(恐らくクッキーでも焼いているのでしょう)膨らんだ小麦の良い香りが。


 そうやって周囲の現象と少しずつ心通わせていくうちに、だんだんと胸の不安感が解消されてきた生寿は、左手に握った水筒のキャップを外し、なかのオレンジジュースを勢いよく溜飲しました。


次回へ続く

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