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第__話 布団の中の真実

目覚めると昨日案内された豪華な客間。


随分と長い夢だったな


文字数にすると6000文字くらいありそうな怒涛の記憶の開示。


正直あまり寝れた気がしない……魔王国に近付く度に頻度も内容の濃さも明らかに上がってる。


アングラントにいた時はあんなに熟睡出来たのに。


(マリィの姿も安定してる様だし、早いとこモチャを見つけて獣の巣に帰りたい)


そんなことを考えながら身体を起こそうとした時、布団の中に違和感。もぞもぞと動いてる。


一つ溜息をつき、布団越しに撫でてやった。


「マリィ。 また猫みたいに暖を取りに来て」


「ウゥッ!!」


「ッ」

(今の声、マリィじゃない!? え、誰 怖い)


心を落ち着かせつつ。そっと布団を捲ると


ーーイエナと目が合った。


「え」


次の瞬間、彼女の手が俺の口を覆い、押し倒される。


布団の中での密着。


(マズイ。イエナめっちゃいい匂いだし彼女の吐息が掛かって段々と邪な気分になって……)


「ちょっ 流石にコレは!!」


なんとか寸前の理性で抵抗をする 


(俺だって伊達に狭間で40年君を想い続てない 家に帰るまでこういった事はしないと決めてんだ)


「なんだよ……契りを交わしたメオトでツガイなんだ この位普通だろうがよっ!」


「わかってる!!わかってるけどムードってもんがあるでしょう!!

 こんな襲われるみたいなの……いやまぁ嫌いじゃないけど、そもそも客間で致すのはどうなのさ!」


「うるせぇ口だな 塞ぐぞテメェ!!」


力が強すぎて、全然振り解けない。多分これはクロノアの力が働いているんだろう。


(色々当たって……てかもう別にいいか 俺から手を出すんじゃない。彼女からなんだから。

 だから、もうどうなってもいい。 だからありったけを彼女に)


抵抗をやめようと心に決めたその時、彼女は覆い被さり耳元で囁いた。


「誠一郎 このままで聞け」


以前に噛み付かれた時じゃない極めて理性的な声が耳元をくすぐった。


少し残念に思いつつもただ事でないと小声で尋ね返す


「……どうしたの」


「この城は縄張りが存在しねぇ。

 アタシが見て回った限り、どの部屋にも監視視座ってのがあって要はそれで全て筒抜けなんだよ」


(監視カメラって所か。 なるほど、それでこの密着と小声……)


「情報共有として、まずはモチャについてだ。奴は数年前、既に……戦死しててだな」


「戦死!?」


「声がデケェんだよ!! 音まで拾うんだろあれって!!」


「……ごめん。モチャがモチャじゃないってのは理解してたつもりだけど……さっき見たし……」


「?……また夢か?」


「うん」


「そうか……なら話が早い。 アタシも探ってはみたが、行方は未だ掴めてねぇ。

 ただ、入院中のネリュスとマリィがだんまりな理由は理解出来ちまった。」


「その理由って」


「……これだ。」


そう言って渡されたのは画面がひび割れた魔導端末。

電源をつけると布団の中、白い光が俺たちの顔を照らす。


「これは…! ヴェル美さんに貰ったやつ!

 壊れてなかったんだ」


「あぁ。ネリュスがずっと握ってやがったからな

 ってそうじゃねぇ 肝心なのは中身なんだ」


再度、目を向けるとMAONが既に入っており、そこに映し出されたメッセージにURLが添付されていた


(英雄を継ぐ者へ……か)


「ゲルヘナ……あぁお前はまだ会って無いな。魔王代理にここでの生活の助けになるからってMAONっての入れて貰ったんだが……数日後、その(ふみ)が突然送られてきたんだ」


URLっぽいけど見た事ない文字列――指で触れれば中身が展開されるタイプだろうか


俺がタップしかけた瞬間。


イエナの手が俺の手首を掴んで止めた。


「待て。開く前に……これだけ言っとくぞ」


「ん?」


「開けば、確実に面倒事に巻き込まれる。

 ここで引き返せば英雄の後釜に座っちまったアタシの中だけで済む話だ。」


薄暗い布団の中でもわかるくらい真剣な表情。


(そういう君は、その面倒事(俺達)の為に魔王国までついて来てくれたのに……ホント優しい)


その顔と優しさに自然と笑みがこぼれた。


「……じゃあこのまま二人とも何も見なかった事にしとく? 

 魔王国ヨクワカンナイで済ませちゃおうか」


彼女も一瞬目を見開いて微笑む。


「………それも悪くねぇな。

 けどお前そんなつもり更々ないだろ?」


「……そうだね」


俺が小さく頷くと、イエナは身体を密着させたまま、耳元で囁く。


「声出すなよ。驚いても」


「努力はする……」


指先が光に触れる。



《受信ログ:未登録送信者》


件名:英雄を継ぐ者へ

送信元:UNKNOWN

受信先:端末ID-NE/MAO-GuestLine

受信時刻:午前三刻(推定)

添付:閲覧鍵(URL形式)

追記:この通信は検知されない回線を使用しています。


「……検知されない回線?」


イエナが小さく舌打ちする。


「まぁ……大っぴらには出来ねぇよな」


その言葉に思わず身構えて、喉の奥で唾を飲み込みながら添付を開く。



画面が暗転し、次に映ったのは――


無機質な文字だけで構成された一覧。


まるで、誰かが“歴史”を報告書に落とし込んだみたいだ。




《記録:魔王国侵攻戦争 年代ログ(抜粋)》


【第一章:起点】


――X年 ゲルムンヒルデ王国、滅亡

・王立境界理学研究院より瘴気漏出

・王都一夜にして機能停止

・生存者:ごく僅少

・周辺国へ瘴気汚染拡大


――X年 暦信教団本部 箱庭より声明

・「魔王国が派遣した使者による侵攻である」と告発

・「魔族の瘴気兵器」と断定

・各国の世論誘導、聖戦扇動


――X年 魔王国、公式回答

・関与の否定(部分)

・瘴気の発生源が“狭間の門”である可能性に言及

・再発防止として、門の情報を秘匿する方針を決定


――X年 諸国、開戦

・教団の働きかけにより連合軍形成

・魔王国、迎撃態勢へ移行

・戦争開始


――補足記録:融界思想(当時)


・魔王国が採用していた対外方針

・「文明・軍事・技術の過剰行使を避け、他国と段階的に“レベルを合わせる”」思想

・侵攻ではなく抑止と調整を主目的とする

・戦争状態においても、意図的な戦力制限が行われていた




「無茶苦茶だ。」


思わず漏れ出た言葉にイエナは小声で返す


「だよな……けどきっとこれは事実だ。アタシが戦場で聞いた噂とも一致してる

 無理もねぇ 他ん国は多少無理を通してでもこの国が欲しかったんだろう。」



――蹂躙じゃない。

これは、手加減をやめただけだ。


ネリュスが蹂躙という言葉を使った理由が今分かってしまった。



【第二章:後期】


――X年 マコト、前線に出現

・魔王国側に属する“人間”

・交渉役/治療師として活動

・敵味方問わず救護を実施

・アヴァンヘルム王国にて勇者の生命を救命

・その功績により「英雄」称号を授与される


――同年 燈守、秘密裏に結成 

・発起人:魔王国王子 ダンシュペン・カリオン

・主目的:英雄の保護及び支援

・副目的:教団の情報網・プロパガンダへの対抗


――構成方針に関する内部決定事項 (補足記録)

・本組織は、意図的に魔物・魔族主体としない

・人間、亜人、混成種を中心に構成

・魔王国直属組織としての形式を取らない


――理由(要約)

1.教団による「魔王国の傀儡」「魔族による侵略」という既存の印象操作を無効化するため

2.マコト個人を「魔王国の駒」として扱わせないため

3.万一、マコトが人間側に戻る選択をした場合でも彼の居場所を奪わないため


――備考

・本記録は正式な公文書から削除済み

・現存する写しは、ごく一部の導燈以上のみ閲覧可能




「……あぁ」


「モチャやマリィが今の燈守を嫌う理由……だな。

 次の英雄を添えたい。国に縛って置きたいなんざ、当初の理念と完全に反してる」


彼らはずっと俺とその周囲を守ろうとしてくれていたんだ。

ダンやマリアとしてでなく、別人として

俺は彼らの知るマコトじゃないのに


だけど俺は気づかないフリを続けて、裏があるんじゃないかって彼らを疑いまでした。


「……大丈夫か?」


「正直……大丈夫じゃない……けど……見届ける義務が俺にはある」


「はっ…色々垂れ流しながら言われても拍が付かねぇな。」


「今だけだから」



【第三章:休戦と破綻】


――X年 ヴァルグラード帝国との休戦協定締結

・交渉団:勇者、英雄、随行数名

・場所:中立域(記録は黒塗り)


――同日 勇者クリフト・アルヴェール、死亡

・死亡原因:静眠の剣 ネリュス・ヴァルシオンによる暗殺

・称号変化:静眠の剣 → 魔勇者(以後、史料改竄多数)


――備考:関連事項

・ダンシュペン・カリオン

 最終確認地点:リュグナ

 公式記録:戦死扱い

 遺体未回収

・教団関与濃厚

・燈守内部から情報漏洩の可能性


――思想転換記録(機密指定)


・ダンシュペン・カリオン失踪を契機に、融界思想は事実上破棄される

・理由:

 1. 教団による介入が戦争構造そのものを歪めていると判断

 2. 段階的抑止では被害が拡大する一方であると結論

 3. 内部より「これ以上、手加減は無意味」とする意見が多数を占める


・以降、魔王国は対教団殲滅を前提とした軍事行動へ移行

・ただし対外的には「侵攻の激化」としてのみ観測される



ネリュスが勇者を殺した理由。

それが“激情”でも“魔族の本性”でもなく、教団に友を、消されたからなのか。


「……ネリュス」


イエナの指が、俺の頬を軽く抓る。


「モチャがアタシらの前から消えたワケは恐らくこれで間違いはねぇだろう」


「にしても一体……これ、誰が……」


画面をスクロールすると、さらに下に続きがあった。



《追記:送信者メモ》


このログは、閲覧者が“英雄を継ぐ者”である可能性を考慮し、

事実のみを抽出して再編集したものです。


あなたが誰であっても構いません。

“正しい敵”を知ってください。


――ここから先は、文字では残せません。


真実を知りたくば、来てください。


魔王国首都のはずれ。

廃棄区画第三層。

使われなくなった排水路。


地表に残された、錆びた円形の鉄蓋マンホール


そこが、入口です。


※監視視座は届きません。

 ――少なくとも、今は。


《署名:L》



布団の中の空気が、急に重くなった。


「……イエナ」


俺が囁くと、イエナは視線だけで答える。


「分かってる 行くんだろ アタシも一緒に行く」

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