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少年:「おいら、一割貰うよ」


サラリーマン:「ああ、構わないとも」


 駄賃の催促をものともせずに、サラリーマンは少年にお金を手渡しました。何と優しい男でございましょうか。少年は満面の笑みを浮かべると、忙しなく店を飛び出しましていきました。


ノミ達:「馬鹿だねえ、あんた。金なんざ戻ってきやしないよ」


 呆れたノミ達。まるで酒でも飲むかの如く、チビリとグラスの水を啜りますと、思わず本音がポロリと出てしまいました。


サラリーマン:「あの少年が戻って来ないとでも?」


ノミ達:「そいつはまだ分からないが…」


 今は昼時で出走は十五時半位。まだまだ時間はございます。素知らぬ素振りで水を啜っていると、何と息を切らしながら少年が走って戻って来るではございませんか。これにはノミ達も口の中の水を全部吹き出してしまいました。


ノミ達:「おいおい、まだレースは始まってもいないだろうよ」


 と、ノミ達が問いましたる所、


少年:「そんな事言ったって、おじさんがいないと待ち合わせ場所の競馬場に入れないじゃないか」


 確かに盲点でございました。機転を利かして入り口辺りで待っていれば良いものですが、相手は五つか六つですから、それはあまりに酷というものでございます。


ノミ達:「馬鹿。一体、何言い出すんだ、手前は」


 嫌な汗で手を濡らしながら、吐き出した水を配給されたおしぼりで雑に拭うノミ達。先程と比べますと、随分と顔色が良くありません。


サラリーマン:「えっ、知り合いの大人っていうのは…」


 物分かりの悪いサラリーマンに、見かねた定食屋の女将さんがハァと溜息混じりについに止めの一言。

女将さん:「そいつは『ノミ屋』だよ」


ノミ達:「なっ、おま、ちょっ…」


 焦るノミ達に、流石のサラリーマンも怪訝な顔で眉間にシワを寄せました。


サラリーマン:「『ノミ屋』って何です?」


ノミ達:「いや何、早く仕事を切り上げて冷たいビールが飲みたいだけの、只の『飲みたがり屋』でございまして」


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