誘拐②
本部の電脳室にいた霞と御剣は出鱈目に見える文字や数字を見つめているしかなかった。
しばらくするとその文字などは停止し、佐々見がヘッドギアを外して声を出す。
「芥の住所が割れました」
「本当か」と加藤が答える
「芥とは何かねと郷田が聞いてくる」
「失礼しました、異管では容疑者に当たる者を芥と呼称しております」
加藤が答える。
「では、容疑者の住所が割れたのか」
郷田がスマホを手に取った。
「そうです、郷田さん、芥の場所が判明したんです」
佐々見は自信ありげな表情だ。
「どうやったのかね」
郷田が当然の質問をする。
「まず、芥はSIMフリーで電話をかけてきていることがすぐに判明しました、そこから電話番号を掴んで販売会社、念のため製造番号までを洗いました、薄い防壁がありましたのでそれを突破して販売履歴と送付先、つまりは芥の住所まで突き止めました」
佐々見は頭をかいた後続きを話し始めた
「SIMフリーは今回だけだと判断したので、そこから本体の電話の契約会社と住所も押さえました、念のためGPSを調べ一番多く居る地点を割り出し、住所を特定しました、三つの手段で同じ住所が割り出させました、芥の住所で間違いありません」
佐々見はよどみなく話していった。
「ううむ、専門用語が多くてよくわからんがどう言うことだ」
郷田は頭をひねっている。
「もっとわかりやすく説明しろ」
加藤はそう促す。
「逆探に成功して容疑者の住所が判明しました」
「あの短期間にか・・・」
郷田は驚きを隠せないと言った様子で佐々見を見ている。
「で、住所はどこです」
霞が問いかける。
「青梅の小作一丁目です」
佐々見は異端にマップを送ってきた。
「柊、すぐに芥を処理しに向かうぞ、郷田さん失礼します」
そう言って加藤は電脳室を出て行くので霞たちもついて行った。
加藤の運転で現場に向かう。
「時間はどれくらいです」
「一時間と言ったところだな」
加藤がそれに答える。
しばらく走り「川島IC」に入り西に向けて走った。
夜の高速は空いていた、加藤は法定速度ギリギリを維持して走行している。
一時間ほど走った後で「青梅IC」で下道に降りるとすぐに芥の住む住所に到着した。
「マップで確認した建物と同じだな」
加藤がつぶやく。
そこは二階建ての一戸建で、ごく普通の家族が住むような空気だった。
「よし、行ってこい、くれぐれも人質は傷つけるな」
加藤の命令で霞たちはタヨト社のプロパックスを降りて家のインターホンを押した。
中から女性の声が聞こえてきたと思うと、扉が開いた。
「政府から派遣された調査員です、土足で失礼ですが上がらせていただきます」
霞はそう言うと玄関を上り階段を登り、一つの扉を開けた。
中には二十台ほどの男がゲームをしており、こちらを見てきょとんとしていた」
霞は男を水糸で縛り上げ、その間に御剣が押し入れの扉を開ける。
「やめろぉ」男は大声を上げる。
押し入れの中には、大型犬用のケージに入れられた女性の姿があった。
「郷田亜美さんですか」
御剣がたずねると女性はコクリと頷いた。
霞が男の方を見て。
「芥を確認」とつぶやいた。
「どうしてバレたんだ」
男は下を向いてうなだれている。
「日本にはお前の想像できないような部署が存在するんだよ、それが俺たちだ」
郷田亜美と男を連れて階段を降りると母親が聞いてきた。
「あの、いったい何が」
霞も御剣もそれを無視して、待機していた「東京公衆衛生局」のバンにそれどれ二人を預けた。
二人がプロパックスに戻ると、加藤が声をかけてきた。
「よお、早かったな、良くやってくれた」
加藤は高速に乗り東に向かっている。
「加藤さん、光の異能はこんなにも正確に割り出せるんですね、もしかして光の異能者がいなければもっと難しい案件もあったのでは」
霞が話し掛ける。
「まさにそうだ、光の異能者の本当の能力が判明してからは劇的に処理の確率が上がっている。
「あの、今回の件は電話がかかってこなければ、もしは公衆電話だった場合はどうなっていたでしょうか」
御剣が加藤に問いかける。
「かなり難しく、下手をすれば住所は掴めなかっただろうな、今こうしている間にも誘拐事件が発生しているのかもしれん、だが我々は万能ではない、そういう人達を救うことが出来んのが現状だ、それでも丁寧に潰していかねばならん、俺はお前たちを尊敬している」
ヘッドライトが路面を照らす中、三人はそれきり黙ってしまった。
まず始めに警察機関の扱いにお詫び申し上げます。
異管が活躍するためには、警察が手を出せない、手を出さないことが前提になります。
しかし、現実的に日本の警察は優秀で、多くの事件を解決しています、そのためこの世界ではネガティブな存在として扱わざるを得ませんでした。
本当は200話ほどまで続けたかったのですが、これもまた警察が解決できる事柄が大半ため、ネタが無くなり完結と言うことになりました。
元ネタは様々にありますが、それをなぞるような感覚で、書いていけたのは楽しかったです。




