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8 実習

朝食を済ませた後、山田にもらった冊子にある通りグラウンドに向かった。


そこにはすでにジャージを着た実習生が何人か集まっている。


その中には寛治もいてこちらに向けて笑顔で手を振ってきた。


その内座学を担当した佐藤が現れた言った「点呼取るぞ」


名前を呼ばれた実習生が次々に答えていき、最後は霞の番になった。


「柊霞」


「はい」


「よし、全員揃っとるな」





点呼の間に実習生の顔を確認していくと、十代から三十代頃までで、極端な中年や年寄りは見られなかった。年齢制限があるのだろうか。


そうこうしているうちにCDプレイヤーから音楽が流れだした。


ラジオ体操だ、霞もそれにならう。


ラジオ体操は職場の朝礼で毎日行われていたため、戸惑うことなくスムーズにこなすことが出来た。




「では、ランニング三周開始」


佐藤がそう言うと皆佐藤の後について駆け出した。


(高校の部活みたいだな)霞はそう思いながら走りランニングは終わった。


地面に座り込む者やぜぇぜぇと喘ぐ者がほとんどだ。


そんな中で霞は肩で息する程度で平気な顔をしていた。




佐藤が声をかけてくる。


「柊、お前何かスポーツやっていたのか」


「はい、登山とあと毎日ランニングを」


「おおそうかそれじゃあ楽勝なわけだな、実習でも体力を使うからな、期待しているぞ」


佐藤は霞の肩をバンバンと叩くと、CDプレイヤーをさげてグラウンドを出て行った」




「かぁすみくぅ~~んなんでそんなに平気なの、もうこれ一番いや、キツい」


東雲香里シノノメカオリが話しかけて来たので、佐藤に話したのと同じことを答える。


「えええええ~~~~毎日ランニングぅ、すごいなーそりゃ余裕だよねぇ」


「あ、そうだこのまま実習の場所に移動するから、ついてきて」そう言って香里は皆に混じって館内に入って行った。


てっきりこのままグラウンドで実習するのかと思っていたので、館内に戻るのは意外だった。


香里についていくと体育館のある場所に着いた。


(確か体育館は改装中のはずじゃ)


そう思っているとジャージを着た数人が合流してきた。




その中の一人が体育館の端にあるパネルの、円形の凹みを押すと穴が出現した。


手慣れた様子で何か小さな端末のようなものを穴に差し込むと「ゴワッ」とした音とともにパネルがスライドし階段が出現した、同時に照明がバッと点灯する。


霞は少なからず動揺していた(隠し扉、なんでそんなことを...いやそうか秘匿性が最高の施設で、異能実習をするからか)




次々と実習生が階段を降りるのを見つめていた霞は、最後に階段を下って行く。


霞が降りてしばらくすると後ろでパネルが閉じる音がした。


階段を降り切るとそこには広大な空間が広がっていた。


(写真集で観た東京地下...なんだっけかなそんな雰囲気があるな)


そんなことを考えながら見回すと、区切られた区画や何がしかの器具やヤグラのようなものが目についた。どうしたらいいのか分からずポツンとしていると、一人の女性が霞に近づいてきた。




「あなたが柊霞君ね?私はあなたの担当教官、水異能の斉藤洋子、よろしくね」


「はい、よろしくお願いします」


霞はぺこりと頭を下げた。


「こっちだから来て、水異能はこっち」


そう言われて斉藤の後を追いかける。


斉藤はフロアの端に行き厚手の金属扉を強く叩いた。


「斉藤、入るよ大丈夫」彼女がそう言うと中からドンドンと答えが返ってきた。




中に入るとプールがあり、ヤグラと大きなサークルが書かれた的がいくつかあった。


「自己紹介して」


「あっ、柊霞ヒイラギカスミと申します」


あなたたちも、と斉藤が他の実習生に声をかけた。


他の四人も霞と同じように自己紹介してきた。


「あなた含めてきょうから五人で実習するからよろしくね」


「ああ、それから、新入生が入るたびに必ず言っておくことなんだけど、水異能は戦闘ではあまり役に立たないからね、現実的な話だから先に言っておくから」




「だけど手を抜かないで、現場に出ると死ぬからね、まぁこれは他の異能でも言われてると思うけど」


霞は半異能であり、さらに役に立たない水属性をメインにしなければならないことに肩を落とした。


「柊君、これに着替えてそこに更衣室あるから」


と斉藤からビニール袋を受け取った、更衣室は端の方にあり男性女性と分けられている。


更衣室はこれもまた厚い金属で出来ていた。


「なんだよ更衣室まで要塞みたいになってるじゃんか、何があるんだよ」


彼はそう呟いてビニール袋を開けた。


そこにはジャージ上下が入っていたので着替えることにした。




「空調スーツが無いと困るんだけどな」そう呟きながら小林の元に向かう。


「あのう、空調」


「スーツを着ないことも訓練の一環だからね、いつまでもびしょ濡れでいたくないでしょう、そこから始めないと何も進まないの」


霞の言葉は、予想していたとばかり小林に先回りされむなしく消えた。



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