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76 テロリスト⑤

菅藤が爆発物を所持していたことが発覚した翌日、霞は「日本異能者管理機構」に呼び出され、冲田の部屋のソファーに腰かけていた。

「今回の件では霞君、良くやってくれた、そうでなければ大量の異能者を失うところだった」冲田は肘をついて霞を眺めている。

「偶然です、電視のスキルが無ければ全員死んでいたと思います」霞はそう返した。

「あのスキルがこんな場面で役に立つとは予想外だった」冲田はにこやかな笑みを浮かべている。


「菅藤はどうなるんです」霞が訊ねる。

「これから聴収を始めるところだ、君も来たまえ今回の功労者だからね、所見も聞いておきたい」そう言って席を立ち、ドアから出て行くので霞もそれに続いた。

建物の外にはすでにタヨト社のプロパックスが待機しており、加藤が立っていた。

「お疲れ様です」加藤は冲田に頭をさげた。


そのまま三人はプロパックスに乗り込み、加藤が運転席についた。

しばらく走ると田舎の風景に比較的大きな建物が目につく。

建物の前に来ると、鉄柵は自動的に開き自動車は中に入った。

正面には「吉河市職業訓練センター」と書かれている。

加藤と冲田が自働車を降りたので霞もそれに続いた。


「これも偽装ですか」霞が冲田に問う。

「その通りだよ、ここが拘留と、まぁ刑務所のようなものを合わせた施設だよ」冲田はにこやかに言った。

「しばらくしたら菅藤の聴収が始まります」加藤はそう言うと建物の中に入って行った。

建物の奥まったところに、二重の鉄格子があり、その中が取調室だった。

冲田と霞の二人は取調室に対面する一面ガラスに覆われた小部屋に入った、ガラスはマジックミラーで出来ている。


霞は耳にかけるタイプで大き目のイヤホンを片耳分渡され、耳に付けた。

「それで中の会話が聞けるよ」冲田が取り調室を指さして言った。

しばらくすると手錠をかけられた菅藤と、スーツ姿の男が二人取調室に入ってきた。

菅藤は奥の椅子に座らされスーツの男二人は、一人が椅子に座り、もう一人は立ったまま腕組みをしている。

「私は異管の斉藤太郎だ、君の名前は」斉藤が訊ねる。

「菅藤栄一」菅藤は素直に答えた

「単刀直入に聞くが、今回の犯行の目的は何かな」

「金目当て、ある日ファミレスにいたら妙な男が接触してきた、五百万円やるから政府が飼っていると思われる異能者のたまり場を爆破して欲しい、とかそんなようなことを言ってきた、断ったけどね」


「ふむ、ではなぜ犯行を」

「首枷を取ってやるし、成功報酬として一千万円くれると言われたからだ」

「それを信じた」

「俺たちが付けている物とは違うタイプだが構造は似たようなものだと言って、最初は無理に外すと警告音が鳴りそれをドラム缶の中に入れたら爆発した」

「爆発を目にしたのだね」

「そうだ、次に同じタイプの別の首枷を持ち出して、何か棒状の物を当てると、金属音がして首枷が外れた、だから引き受けることにした」


斉藤はしばらく考え込むとこう言った。

「気の毒だが君は騙されたのだよ」

「どういう事だ」

「首枷のようなものは爆発する仕掛けが施されただけの物、棒状の機械で外されたものは単なるモックアップだろう」

「菅藤が呆然としている」


「その男の所属する組織名や接触してきた経緯は聞いたかね」

「いや、何も聞かされていない」菅藤は震えながら答える。

しばらく静寂が支配する。

「俺はどうなるんだ」

「刑務所のような施設に入れられるだろう、模範囚と判断されれば施設での教官になることもできる」

菅藤は黙り込んでいる。


「私には君が単に金目当てで犯行に及んだとは思えないのだが、何かべつの理由があるのかな」

菅藤は震えながら大声を出した。

「柊だ、アイツが俺の女に手を出した、東雲は俺のバディだった、だが柊のことを何度も話していたし、二人で遊びに行ったとか女どうしで、話しているのを聞いたんだ、それに、俺はあいつとの決闘で無残に負けて醜態をさらした、アイツが憎かった」

菅藤は嗚咽を漏らしている。


霞は黙ってそれを聞いていたが、内心穏やかではなかった。

自分は東雲と友人として親しくしていただけなのに、恨みを買うようなことになっていたことを、面倒くさいことだと感じていた。


「これ以上は情報を取れなさそうだね」冲田が言う。

「もっとこれ以上情報を引き出そうとはしないのですか」と霞。

「もちろんするさ、だがおそらくはこれ以上の情報は出てこないだろうね」

冲田がそう言うと本当にそうであるような気がしてきた。


「ふむ、首枷のことを知っているとは、我々のことを多少なり知っているとみて間違いないだろうな」

「支店の場所も把握していたのでしょうか」

「いや、そうではないだろう、把握していれば菅藤君を使う理由がないからな。

冲田はずっと正面を向いたままであり、その視線の先にはデスクに突っ伏す菅藤の姿があった。

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