74 テロリスト③
ニコニコ人材センターから火の手が上がっている。
それを呆然と見ていた霞だが、すぐに覚醒し異端を取り出して佐々木の電話番号を選択する。
コールが長い。
(頼む出てくれ、たのむ)霞が祈るような気持ちで異端を耳にあてていると、佐々木の声が返ってきた。
「どうした、直接の電話とは珍しいな」
「良かった、無事で」
「何のことだ」
「支部が爆破されました、目の前にいます」
「なんだと、どういうことだ」
「わかりません、赤い薔薇の仕業ではないかと」
霞は早口でまくし立てる。
「他のメンバーは」と佐々木が問うて来る。
「わかりません」
「わかった、私から連絡を取ってみる、君はすぐ本部に来てくれ」
佐々木はそう言って通話を切った。
霞は異端を開き「緊急回収」をタップした、これで五分以内には「東京公衆衛生局」自動車が来るはずである。
時間が異常に長く感じる、「緊急回収」を要請してから三分ほど経過したが、警官が続々と集まりだしており、人垣の整理を始めた。
その折に「東京公衆衛生局」のバンがやってきた。
ドアを開けて中に転がり込む。
「本部に行ってくれ、早く」霞が叫ぶ、運転手は状況と霞の大声に動揺していたが、すぐさまバンを発車させた。
直後に着信があり霞はすぐさま通話に出た。
「はい、柊」
「佐々木だ、霞君、支店メンバーは全員無事だ、おそらく君と同じように本部に向かっているだろう、まずは落ち着け、全員無事なのだからな」
「おばさんは」
「なんだ」
「受付のおばさんはどうなりました」
「彼女は常駐している、私が見てきた限りこの時間帯も居ることがほとんどだった、おそらくは」
「クッ、わかりました」そう言って霞は通話を切った。
霞が「日本異能管理機構」の本部に到着すると、慌てた様子で加藤が出迎えに来た。
「おい、柊、大変なことになったな、お前は何ともないんだな」加藤が叫ぶ。
「はい、俺は何ともないです」
加藤とやり取りしていると「東京公衆衛生局」のバンが一台停車して緑川と御剣が駆け出して来た。
緑川はそのまま霞に抱き着くと泣き出し始めた。
「よかったぁ、柊さんぶじでよかったぁああ」と大きな声をあげている。
霞は狼狽しながらも緑川の頭を撫でている。
「もう大丈夫かな」霞が緑川にそう言うと、緑川は急いで飛びのいた。
「すす、すいません動揺しちゃってて」と頭をさげている。
御剣はその様子を黙って見つめていた。
「おくれた、すまぇね」そう叫んで堀田も駆けつけてきた。
「さぁ急いで第一会議室に、佐々木さんが待っているぞ」加藤がそう言って全員を誘う。
「加藤です、池袋支店のメンバー全員を連れてきました」
中から入るようにと声がかかる。
加藤以外全員が中に入る。
「まずは全員無事でよかった、不幸中の幸いとしか言えない」
「赤い薔薇の連中ですか、アイツら」堀田が叫ぶ
「まぁ座りたまえ」佐々木の発言に全員がパイプ椅子に腰かける。
「わからない、としか言えない、我々は方々で恨みを買っているからな、だが、支店の場所が割れることはまずないはずだ、だが赤い薔薇の羽田テロからのタイミングが良すぎる」
「何か別の原因の爆発と言うことは」御剣が質問する。
「それは無い、確実に人為的なものだ、これを見ろ」佐々木がノートパソコンをメンバーの方に向けると、全員画面の前に集まってきた。
「支店には当然だが監視カメラが仕掛けてあってな、リアルタイムでここ、本部に動画が送信され、一定期間保存されている」
「スロー画像だ、この男が受付の女性と何か話している、ここだ、ここでわざとスマホを落として、鞄から何かを出しカウンターの下に入れた、これが爆薬だろう」
「今度はハイスピードだ、ここだ」
画像は一瞬の光が映った後で暗転した。
「およそ三十分後のことだな」
全員静まり返る
「今後の俺たちの活動はどうなるんです」と霞。
「無期限自宅待機、安全なハコが押さえられればその時点で活動再開だ」佐々木が答える。
「警察はどう絡んでくるんです」御剣の質問である。
冲田さんが手を回してな、ガス爆発のプランで行くそうだ」佐々木はノーとPCにテレビのライブ映像を映し出す。
そこには「池袋ガス爆発事故、警察はテロとの関与を否定」と出ていた。




