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65 ネンジャタウン

堀田に呼び出された霞は池袋西口で彼を待っていた。

一月も末になるとさすがに寒く足元から冷えてくるのを感じる。

(メリノウールのインナーを履いて来るべきだったな)そう考えていると、堀田が現れた。

「ようよう、霞君おまたせ、寒いねぇと」言いながら肩を叩いてくる。

堀田は「サウスフェイス」の厚手ダウンジャケットを着ている。

「良いの着てるじゃない、うらやましいね」と霞。


「へへ、おニューよ、じゃ行くか」とすぐそばの飲み屋「大都市」に入って行く。

券売機であらかたの物を買い求め、店員に渡していく。

生中が運ばれてきたので二人は乾杯をする。

「今日はなにかあったのか」と霞が堀田に聞いたので彼はしゃべりだした。

「聞いてくれよ、今どハマリしているアニメがあってさ()()()()ってんだけども、これがすげー面白くてさ、グッズ買いだめているんだけど、クレーンゲームの()()がどうしても取れねぇんだよ」そう言って堀田は手を広げてみせた。


「そんでさ、霞君なら得意かもと思って相談してるんだけど、どぉ」堀田が聞いてくる。

「俺はほとんどやったことないな、グッズショップに出ていないのか」霞がビールを飲みながら言う。

「高いんだよ、いやそうじゃなくて公式に貢献したいんだよ俺は」両手をダンとテーブルに叩きつける。

「じゃあ、クレーンゲーム得意な友達とかいないの」堀田が聞いてくる。

「友達なんて支店のメンバー位しかいないしなぁ」と霞が漏らすと堀田が言う。

「俺たちのコト友達だと思ってくれてるの?うれしいねぇ」


その時霞は思いだした「いや、一人いるよ、クレーンゲーム制覇するみたいなこと言ってる人」

「マジで、じゃあその人に頼むこと出来る」堀田が手を合わせる。

「どうかなぁ、話はしてみるよ」

こうして堀田の要望を聞くことになった霞は、翌日の九時ごろ電話をかけることになった。


長いコールの後で相手が電話に出た。

「もしもしぅ誰ですか」と不機嫌そうな声で聞いてくる。

「柊霞だよ、ゆりちゃんの番号で良いのかな」相手は御手洗ゆりである。

「えっ、霞くん、電話くれたの、うれしい」声が急に明るくなった

「なになに、遊びに行く」と御手洗。

「うん、そうなんだけどそうじゃなくて」と前日の経緯を伝えると。

「なんだ、頼み事かぁ」としょげている様子だ。


「でもいいよ、私と遊んでくれる条件で()()()()のぬいあげるよ、実は全部コンプしててさぁ売ろうかと思っていたから」御手洗は明るい声を出す。

「ああ、そこなんだけど、ソイツがどうしても心付けを渡したいって言うんだ、断ると怒るレベルでさ」

霞が笑いながら言うと御手洗は答えた。

「あー私を介して公式に少しでもお金が行くようにってことか、オタクの鑑だね、ちょっとキモいけど」と笑いながら御手洗は答えてきた。


「じゃあさ、ネンジャタウン行こうよ」御手洗はそう提案してきた。

「ネンジャタウン、どこにあるの」と霞が返す。

「知らないの、池袋のサンシャ園にあるんだよ、ちょうど今()()()()()とのコラボでアトラクションやってるんだけど、行く相手もいなくてさ」御手洗は嬉しそうにそう言った。


翌日、霞はサンシャ園のそばにあるコンビニで待ち合わせをしていた。

しばらくすると御手洗ゆりがあらわれ「ごめんごめんおそくなった」と声をかけてきた。

「はいこれ」と御手洗がZARUの紙袋を渡して来たので中身を確認すると、そこにはビニール袋にいれられてウサギのキャラクターのマスキングテープで止められた、少女戦記のぬいぐるみが入っていた。

「ありがとう、たすかるよ」と霞が御手洗を見て言うと、彼女は照れくさそうな顔をした。

「じゃあこれ、堀田ってヤツの心付け」と封筒を御手洗に渡すと「頂戴いたします」と彼女は頭をさげた。


「じゃじゃじゃいこーう」と御手洗はどんどん進んでいく。

ネンジャタウンに入ると、猫のマスコットが出向かけてくれていて、御手洗はとても嬉しそうだった。

ガンシューティングゲームやクレーンゲームで遊んだ後に、最後にはいよいよ「スパイ家族」のアトラクションに挑戦することになった。

これはいわゆる謎解きゲームで、図形の並びから言葉を読み取ったり、謎の文章から行先を当てるなどと言った具合で、これは霞も楽しんでおり、謎解きが出来たらハイタッチするなど、御手洗の方から盛り上げてくれているようだった。


一通りのアトラクションをこなした後「そろそろ時間だ」と御手洗が言い出した。

「食事とかいいの」と霞が聞くと「実は今日この後仕事なんだー、この日はちょっと変なお客さんが来る日だから、最初に楽しいことをしておきたいと思ってさ」そう言って御手洗は霞の手を握ってきた。

「今日はありがとね、楽しかった、また遊ぼうね」御手洗はそう言いながら小走りに去って行った。

(楽しかったなら良かった、こっちは堀田の要望に応えられたしありがとうはこっちもなんだがな)

そう考えながら霞は部屋のある方角へ向かって歩き出した。




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