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64 救出作戦③

霞と御剣は大型の飛行機に揺られていた、プロペラの音が耳に付き最初は気になってきたがしばらくしたら慣れていった。

霞は合間合間にレーションを食べており、時折トイレに行っている。

「落ち着いていますね、初めてのオペレーションでは皆緊張して食べることもできない者が少なくないのに」通訳が霞に声をかける。

「あの時に見せた、まぁ、忍術ですがモノによってはすごく腹が減るんですよ、今のうちにエネルギーをため込んでおかないといざと言う時うごけません」


「ニンジュツですか、それはなんと呼ばれているんです」と通訳が興味を持ったようできいてくる。

「聞かない方がいいですよ、知ると地方部隊とかデスクワークに行くことになりますから」

通訳は黙り込んでしまった。

実際にはそんなことになると、霞は聞かされていなかったが、話しが面倒なのでブラフを使ったのである。

その内霞は眠り込んでしまった。

目覚めると通訳がそのことに気付き、声をかけてきた「あと三十分ほどです、あの、何度も聞いて申し訳ないのですが本当にパラシュートは必要ないんですか」


「必要ないですよ、たのんでいた通りゴーグル二人分は必要ですがね」

通訳は不安そうな顔をしている。

しばらくしてサイレンがなり英語で何かの放送が流れた。

「降下十分前です、準備を、ランプがグリーンになったら降下の合図です」と通訳。

「五分前でいいですよ、エネルギーが無駄になる」

やがて機体の後方にあるハッチがゆっくりと開きサイレンが鳴り響いている。


「行きますね」と霞が席を立つと、御剣もそれに続く

二人は機体の隅の方に陣取っている。

「御剣さん俺が今ですと言ったら俺に全力でしがみついてください」霞がそう言うと御剣はコクンと頷いた。

それからすぐにランプがグリーンになった「今です」霞が叫ぶと同時に御剣が霞に抱き、二人はそのままハッチを走り空へと消えていった。

「クレイジー」と通訳が呟く。


(降下は引力で行けるからそのまま想定の高度で水板スイバンを出せばいい、見せられた地図にはゲリラの村のすぐ後ろに小高い山がある、そこに着地してあとは徒歩で村に入ればいい)

霞はオペレーションを頭の中で繰り返していた。

やがてゲリラの村が見えてきたが、想定地点とズレていたので水板を出して方向修正をして、空を滑るように村の後ろにある小高い山に着地した。


「御剣さん、着地しましたよ」霞がそう言うと、御剣はずるずると後ろによろめき尻もちをついた。

「はー、すごかった怖いけど面白かったね」と笑顔を見せる御剣に霞は言った「すごいですね、多分普通はそんな感情出てこないですよ」と笑った。

「さて、ここからです」霞はそう言うと歩き出し、御剣もそれに続いた。

低い尾根に出ると二人は匍匐の体制を取った。

両手でひし形を作り、顔に当てて覗いていた霞が口を開く「今の所気付かれた様子はありません、ここから一番近い入口に歩哨が一人いますね、異端と合わせて考えるとあの中央の大きな建物に捕虜が幽閉されていると思われます」


「霞さんのそれ、すごいですよね、水を操作してレンズ状にして重ねることで双眼鏡みたいに使えるなんて」それに対して霞は「ああ、そうですね」と気のない返事をする。

「しばらく様子を見ていましたが外をうろついているのはだいたい八人、偽装もしていますし丁寧に処理していけば大したことは無いでしょう、最も建物の中に何人いるかわからないので、騒ぎになったらその辺コトですがね。

霞は立ち上がり「行きましょう」と言うとゆっくり斜面を降りて行った。


霞と御剣は堂々とゲリラの村に近づいて行ったので、歩哨は銃を構えるそぶりも見せなかったが、何事か喋り出した途端その場に昏倒した、水糸と電気異能を合わせたスキルだ。

そこから早足で移動しては、角に来ると様子見をするという繰り返しだ、進路上にどうしても避けられないゲリラがいたのでそのまま進み、気付かれた時点で昏倒させた。

目標の建物に近づくと入口に男が座り込んでいるので、それも昏倒させる。

入口の布をめくり堂々と中に入ると三人のゲリラがいたのでこれも昏倒させ、奥の部屋に入ると米兵が二人縛り上げられた状態で、顔にはいくつもの傷がある。

目標の二人だ。


ゲリラたちはなにか話しており、一部は米兵に銃を突き付けて笑っていたので、霞たちには気付いていない。

一人のゲリラがこちらに顔を向けようとした瞬間、米兵以外の者が昏倒した。

霞は持っていたナイフで二人の縄を切る。

「レスキューティーム、レスキューティーム」と霞が声をかけると米兵二人はハッとした顔になる。

「ゲッタウェポン、エン、チェストリグ」と御剣が伝えると米兵たちはゲリラから引きはがしたチェストリグを身に付け、AN七四を手にした。

その間に霞が無線を手にして通信をする「こちら朝日、対象を救助した、回収地点に向かう、日の出どうぞ」「確認した朝日、救出ポイントにヘリを向かわせる」と返事があったので、無線を鞄に入れる。


「ゴーゴークイックリィ、フォロミー」と霞が声を出すと米兵はCQBの要領で着いてくる。

しかし正面の角から男が現れると米兵の一人が二発弾丸を撃ち込んで殺した

(馬鹿野郎、これで騒ぎになるぞ、しかしやむを得ない状況)

霞は回収ポイント方向に走る、斜め後ろから数人現れた所に、御剣が壁を作って足止めした。

前方から現れた二人のゲリラには米兵がフルオートで弾丸を叩き込み、走りながらマガジン交換をする。


段々と敵が集まってきている、逐次御剣が壁で足止めをして、出て来たものは霞が昏倒させ、死角から出て来たものは米兵たちがフルオートで掃射する。

短時間でありながら見事なチームワークである。

やがて村から出て小高い丘に入ってきたが敵はまだ追ってくるため、要所要所で御剣が壁を出し、壁を超えたものは米兵が掃射する。

程なく回収地点に到着し霞が赤のスモークを焚く。


「壁は出せてもあと一枚です」御剣が叫んだ。

米兵は腹ばいになって細かくけん制射撃をしている、やがて米兵の一人がマガジンを掲げて何か叫んでいる、最後のマガジンとでも言うのだろう

(まずいな、非常にまずい)

霞がそう考えていたところに妙な音が聞こえてきたと思ったら「ズィイイイ」と言う重苦しい音が鳴り響いた、上空を見上げると戦闘ヘリが二機、機銃を掃射していた。


ゲリラがバタバタと倒れ、その間に回収ヘリが着陸し数名の兵士が降りて周辺警戒に当たる。

「ゴーゴー」と霞は叫び米兵に指示する、それに気付いた二人がヘリに乗ったのを確認して、霞は御剣の手を握って走り出し、ヘリに飛び込んだ。

警戒にあたっていた兵士が何事か叫び、順次ヘリに乗り込んでくる。

そしてすぐヘリは上空に浮き上がり、ヘリからけん制射撃を行う、戦闘ヘリ二機もけん制しつつ撤退した。


霞が座り込んでいると目の前の米兵が何事か叫んで手を出して来たのでその手を握り返す、御剣も同じことをしている。

霞がアフガンストールを取り払うと、彼は驚いた顔をして叫んだ「ジャパニーズ」

それを聞いた霞は大声で「イエスイエス」と答えた。





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