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59 御手洗

池袋からめったに出ない霞は新宿に来ていた。

目当ては本の購入である、霞の趣味は本を読むことで、雑多な本を読んでいたが、現在熱中している「中年おじさんが異世界でイケメンソードマスターになる」通称()()()()

の特典付きの新刊を求めに来ていたのである。


イケマスはライトノベルと言う比較的若年層向けの書籍ではあるが、中年の悲哀や営業一筋だった主人公が剣だけではなく、国家間のいざこざなどを解決していく点が霞は気に入っていた。

目的の書店、紀伊の国屋書店本店は新宿駅からほど近い場所にあった。

本店とあって規模がでかく、客の出入りも激しい。


ライトノベルコーナーを探していた霞はすぐに「イケマス」を見つけた。

平積みでポップ付の特設コーナーが設置されていたのである。

ポップには百万部突破と書かれている。

(へぇ、そんなに人気な本だったのか、皆好む部分は一緒なのかな)

そう思い本を手に取るとレジに向かった。

「こちら特典のクリアファイルになります」店員はそう言ってクリアファイルを手渡して来た。

会計を済ませて、バックパックに本とクリアファイルを入れる。


店を出ると用事はすんでしまったが、久々に新宿に来たのだからと、適当に古着屋でも探そうかと新宿駅付近で壁にもたれ異図を操作していたところ、誰かに声をかけられた。

「柊さん、柊霞さんですよね」とそばに女の子が立っていた。

オーバーサイズでベージュのアウター、ブラックのロングスカートに革靴、黒のショルダーバッグに大き目の眼鏡をかけている。

比較的シンプルな構成のファッションだ。


「私です、みちるですよ、コンカフェの」

「ああ、みちるさんか、今日はオフなんだね」

「ところで私の本名は御手洗ミタライゆりです、ゆりって呼んでください」

「あ、百合ちゃんはオフで客と会っても大丈夫なの」

「大丈夫です、メイクも髪型も全部変えていますから眼鏡もかけているし多分、店長でもわかりませんよ」


「ところで新宿に何しに来たんですか」

「ああ、敬語じゃなくていいよ」と霞

「じゃあ霞君は新宿に何しに来たの」ゆりはそう聞いてきた。 

「本を買いに来たんだ、特典が欲しくてね」霞は壱岐の国屋の方を指で指す。

「なんて本なの」とゆり

「知ってるかな通称イケマスってライトノベル」


「持ってるよそれ、イケマス超いいよね、私はお客さんに勧められて話を合わそうと一巻を買ったんだけど、駆け引きとか心を読む場面と剣も強いけど控え目ってのでハマっちゃって」

「そうそう、それに読みやすい」霞が答える。

「それな」とゆりが親し気な言葉で返して来た。


「ところでゆりちゃんは何しに来たの」霞が問いかける

「ゲーセン、ゲーセン最高だよクレーンゲームの全キャラ制覇を目指しているんだ」

「そんなに取って置く場所はあるの」

「好きなキャラは置くけど、目的は取ることだからね、メリケリで売れば小遣い程度にはなるんだ」


しばらく話し込んだのちゆりが呟いた。

「あっもう行かなきゃ、霞君も一緒に行く」

「いや、この後仕事が入っていてね、急がなきゃならないんだ。

霞が答えると「そっか、残念だな、あって言うかLIME登録してよ」と百合が大きな声で言った。

霞は「LIMEは機密漏洩のためにダウンロードを禁止されているんだ」と返した。

「ふーん、じゃあ電話かけて来てよ」とゆりが不服そうに言う。

「わかったよ、また何かあったらかけるから」そう言ったやりとりで二人は別れた。


(ふぅ、こんなとこで会うとはなぁ、しかしメイド姿とは全くイメージが違ったな、あれなら確かに誰かわからないかもな)

霞は新宿駅に向かって歩き出した。


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