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58 コンカフェ

久しぶりに飲み屋で酒を吞み、部屋に帰る途中だった霞の耳に怒号が飛び込んで来た。

何事かと先へ進んで見ると、メイド姿のコンカフェ嬢が中年男性に絡まれていたところだった。

酔いもあってか、霞はその男性に近づき、肩を叩き声をかけた。

「嫌がっているじゃないですか」

男性が振り返り何かを言おうとした瞬間その場に崩れ落ちた。

電気の異能である。


「おじさんどうしたのーだいじょうぶー、のういつけつかもしれない、だれかきゅうきゅうしゃとけいさつよんでー」と霞は声をあげる。

「大丈夫、怖かったよね」霞がコンカフェ嬢に声をかけている間に、警察官が小走りにやってくるのがみえた。

警察が絡むと厄介なので霞はその場を後にした。


それから数日後、掃除を終えた霞が支店から出てしばらく歩いていると「あーーーー」と大声が聞こえたので、反射的にそちらを見ると、口をおさえながら激しく手を降るメイド姿の女の子が目に入った。

(なんだ、キャッチとか声掛けは池袋じゃご法度なはずだぞ)

そう思って通り過ぎようとしたが、女の子は持っていた看板を上げ下げして明らかに自分に向けてアピールしているのが分かったので、仕方なくその子の元に歩んでいった。

「何か用ですか、キャッチはだめなんじゃ」と霞は声をかける。


「覚えてないんですか、先日助けていただいた者です」とその子は早口で言った。

「そんな、ツルの恩返しじゃなあるまいし」と霞は言葉を返す。

「オッサンに絡まれていたのを助けてくれたじゃないですか」

女の子に言われ霞は思い出した。

「あぁ、あの時の、大丈夫だった、でも俺は何もしてないよ、オッサンが勝手に倒れただけだし」

「いいえ私見てました、肩に手を()()()てやったのを、氣功とかそう言うのですよね」メイド姿の女の子は早口でまくし立ててきた。


(まずいな、変な勘違いしてるよ、でもごまかしても信じなさそうだしなここは話を合わせてやり過ごそう)

「そ、そうだよ良くわかったね」

霞がそう言うと女の子がグイッと寄ってきて「あの時のお礼がしたいんです、ウチの店に来てください、私がもちますから」と話しかけてくる。

「そう言うのってマズいんじゃないの」霞が返す。


「大丈夫です、いまスタッフ少ないですしレジのやり取りなんか誰も見ていません」

(ここまできて断るのはもう無理だな)霞はそう判断してついて行く旨を伝えた。

「ウチの店すぐそこですから、大丈夫ですよ怖い人もいませんし」

そう言いながらメイド姿の女の子は霞の前を歩いて行く。

店はテナントビルの二階にあった。

「ご主人様の御帰宅でーす」女の子がそう叫ぶと店内にいるメイド全員が「おかえりなさいませ御主人様」と声をあげる。


「あっ言い忘れていた、私は()()()といいます、よろしくお願いしますご主人様」

とみちるが頭をさげた。

店内はあまり広くなく、小さなテーブルに安物の椅子がワンセットで詰まっていた。

奥の席に案内され、メニューを見ると「みちるのオススメはメイド特製パンケーキセットです」と言われたので、特に考えもなしにそれを注文した。


みちるがカウンターの中に消えると、店内を見回す余裕が出て来た。

学生らしき二人組と小太りの男性がいて、小太りな方はこちらをチラチラ見ている様子だった。

(コンカフェなんて初めて入ったけど、何のことはない男の癒しの場みたいなもんなんだな)

そう考えているとみちるが戻ってきて「お待たせいたしました御主人様、こちらみちる特製パンケーキです、最後に仕上げをしますね、美味しくなーれキュン」とみちるは両手でハートマークを作りながら言った。


すぐに他の客から名前を呼ばれたみちるはそちらの方に歩いて行った。

(うん、悪くないな、値段見たけどまぁそんなもんかなって価格帯だったし)

霞はそう思いながらパンケーキを口に運んで行った。

食べてしまうとやることが無くなったので「ごちそうさま」と言って席を立つと、みちるが慌ててレジに立った」


「もっといて良いんですよ、チェキとかありますし」とみちるは小声で話しかけてきた。

「はは、それは次回ってことで」と霞が話し掛けるとみちるは素早くレジから金を出し「二千円お預かりしまーす」と声に出しまたレジにしまったので「後で会計合わなくなるんじゃないの」と霞が小声で言うと「後で自分のお金戻しておくんで大丈夫です」と返して来る。


「これみちるの名刺です、また御帰宅してくださいね」とバストアップの画像に()()()と書かれた名刺を渡して来た。

店を出て階段を降り歩道に出ると部屋に向かって歩き出した。

部屋に入ると上着を脱ぎハンガーにかけようとするとポケットに何か入っているのに気付いた。

取り出してみるとさっきもらったみちるの名刺だ。

何気なく裏返すと小さな文字でLIMEのアドレスと電話番号が書かれていた。


「やれやれ、良いのかねこう言うのは、個人の連絡交換は良くないんじゃなかったっけか」

そう呟いた霞は名刺をテーブルに置きシャワールームに入った。

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