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5 生活

霞はチャイムの音で目が覚めた、学校で休み時間を告げる類のあのチャイムだ。


ベッドわきの時計は五時を表示している、おそらく何か区切りを告げるためのものだろう。


もそもそと起き出して窓の外を見ると、日暮れの色を映していた。




チャイムが何を示すものかわからないためどうしていいのか困惑していると、机の上にのっているパンフレットが目に入った。


山田はわからないことがあればパンフレットを見ろと言うようなことを言っていた、パンフレットには「入所者様に向けて」と記されていた飾り気も何もない表紙だ。




パラパラと頁を繰ると「一日の時間割」と記された頁が目に入った。


頁に目を通す


起床:六時半。


朝食:七時から八時まで。


実習:一課業目九時から十時まで。


「実習...なんだなにか運動的なものがあるのか面倒だな」




作業のことを考えていたら、急に空腹を覚えた霞は、項目の食事の時間を調べた。


夕食:六時から七時半まで。


「あと一時間か、何していようかね」独りごちてベッドに横になると、ある変化に気付いた。


今までじっとりと濡れていいた身体が随分と乾燥しているのだ。




「このスーツすげぇな、山田さんの言っていた通りだ」


このことで霞の心情はかなり軽くなっていた、気分が良い。


ゴロゴロしていてもらちがあかない、何かこの施設を見学でもしようかと考えていたところに、図書室のことが思い出された。




図書室には彼が愛読していた「山と岩」なる登山雑誌があった。


それに目を通すために霞は図書室に向かった、図書室には誰もいなかった、霞は雑誌コーナーに向かい「山と岩」を手に取った表紙には南アルプスの赤岳の写真が写されており「南アルプス特集」「初めてのテント泊」などの文字が躍っていた。


霞は一番好きであった新製品レビューのコーナーをめくった「ウルトラライト研究!軽量化で快適な山行を」の文字が目に入る




霞が気が付くと外は暗くなっており、図書室の時計は六時を二十分ほど過ぎた所だった、彼は慌てて本を書架に戻し食堂へ向かった。


食堂には言われた通りたくさんの人が詰め掛けていた。


霞はしばらく様子を観察し、列の最後尾に並ぶ。


案外と早く列は進み、カウンターに着くと帽子をかぶった中年女性がトレーを渡して来た。


ご飯のものと思われる器には何も入っていない、自分でいいだけ盛り付けろと言うことだろう。


霞は別のテーブルにあるご飯を器いっぱいに盛り付けた。




さて問題は席の位置だ、山田以外面識のあるものはいない彼にとっては居心地が悪い状況だ。


しばらく見回すと団体が席を立ったのでその場所を確保することにした。


改めてメニューを確認する。


豚肉と野菜の炒め物。


大根切干の小鉢。


茄子の味噌汁


ブロッコリー。


そして大きく盛られたご飯。




味噌汁をすすりご飯を腹に入れとどんどん食を進めていく。


「となり良いかな」


突然声をかけられて彼は驚いた。


「となり、座っていい」


承諾の言葉を返す霞。




自分の年齢と大差ないほどの男性が座った、高校生のようなブレザー姿で首枷をはめている。


彼は妙ににこにこと笑みを浮かべている。


「俺、斎藤寛治サイトウカンジよろしく」


「あっ、柊霞ヒイラギカスミどうも」


「新顔でしょ、今日来たの?属性水だろ」


「え、なんでわかるんですか」


「服装、服装、水属性しか着てないからね」


「ああ...そうですねそうだ」


「ねぇ、何歳なの?」


「二十四歳です」


「年上だ、じゃあ敬語やめようぜ、俺二十二だしさ」


「あっうん」


「ああそうだった、俺は火属性、燃える男の赤い火の使者だぜ」




霞には早くも親しい者が出来たが、根明な空気の寛治と自分はうまくやって行けるのだろうかと霞は心配になっていた。





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