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49 光の異能

佐々木は小さなカードのような物を指でひらひらと弄びながら言った。

「このカードが何だかわかるか」

「クレカじゃないんですか、クレカ絡みの掃除ですか」堀田が答える。

「これはETCカードだ、高速道路を通過する時にこれがあれば自動的にバーが開き料金は口座から引き落とされると言うわけだな」


佐々木はさらに続ける。

「ではそこから引き落とされた料金を細かく管理する者がどれだけいると思う」

「た、たぶんほとんどの人がさっと見ただけで終わると思います」緑川がまっとうな答えを返した。

「そうだな、きちんと管理している者ももちろんいるだろうが、その値段が一桁単位だったらどうだ、例えば五円少なかったとして、料金改定か何かだと思うだろう」

「まさか、ETCカードから一人頭数円を抜き取っている、ハッキングかなにかで」霞が驚いたような声を出す。


「そのまさかだ」

佐々木の後ろにある液晶ディスプレイにETCゲートやカードなど様々な物が映し出される。

「今言った通り日本全国にあるETCから五円、一台も漏らさずかすめ取っている輩がいることが判明した」

「それって一日で莫大な金額になるんじゃないですか」御剣が声をあげる。

「そうだ、それが一年前から続いていたことが判明した」


全員がどよめく。

「いったいいくらくらいになるんだ」堀田は唖然としている。

「どうしてそれが判明したんですか」霞が話を続ける。

「光の異能者だ」佐々木がディスプレイを切り替える。

脳波検査機と、ヘルメットのようなものの画像が映し出される。


「光の異能者は極端に少なくてな、異管で把握しているだけで日本に三人しか存在しない、彼らは当初手から光を放ち目くらましをする程度の能力しかもたないと思われていたのだがな、そのうちの一人が体調を崩し脳波を検査したところ異常な反応を示した。

佐々木はディスプレイの脳波画像を示す。

「それでこう言ったそうだ機械の中が見える、水が流れているような水路のようなものが、とな」


腕を組んだ佐々木は話を続ける。

「簡単に言うと電子機器やネット回線に脳を接続できる能力を持っている」

「すげえ、攻撃機動隊みたいだ、アニメだぜこれは」堀田が言う。

「話を戻すぞ、その光の異能者がNシステムを洗っていた時のことだ、妙な電子の流れを感じて手繰って見るとETCのシステムにたどり着いた、彼が言うには明らかに別の人物が書き換えをした痕跡があったとのことだ、それで細かく調べるとETCが今回のような形でハッキングされていたことが判明した」

佐々木はヘルメットのような物を被った人物を指し示す。


「それはもうとめたのですか、ハッキングを解除すると言うのか」と御剣。

「いや、まだ泳がせてある、送金先である海外の銀行はガードが固くてな、個人情報を一切公開しない、また日本国外だと言うことで深く手を出せんのだ、しかし実態は大口顧客を逃したくないのが本音だろうな」


「今でも五円が秒単位でどこかの誰かに流れてっているのか」霞はソファにもたれかかった」

「その点は上の方も苦々しく思っている、光の異能者のスキルで、居所は簡単につかめたが今ハッキングを阻止すると、芥に逃げらる可能性があるためハッキングされたままにしている、今回の掃除はそいつらの処理と言うことになる」

「マジで秒単位が求められる掃除じゃん」堀田がつぶやく。


「場所は茨城県つくば市にある、すでに東京公衆衛生局のバンが来ているから直ちに行動を開始してくれ」全員が早足でバンに乗り込むと、すぐに発車し、高松ジャンクションから高速に入った。

「一時間くらいね、渋滞しないといいけど」

堀田がそう呟いて隣を見ると霞が寝息を立てていた。

「すぐ寝るなコイツ」

「き、肝が据わってますよね」

「しかし異能者がいる可能性と護衛が多いかもしれないから四人行動か」堀田が足を組み替えて言う。

「たまには一緒なのも良いですね」と御剣。


小一時間すると「つくば中央IC」でバンは高速を降りしばらく下道を走ると、「東京公衆衛生局」のバンは停車した。

「あそこの平屋の建物です」と運転手が指さす。

全員がバンから降りて歩いて行く、さすがに霞もシャキッとしている。

「富安板金」とかかれた建物に到着し、呼び鈴を鳴らす。

しばらくすると男が出てきて「なんか用」と四人をジロジロ見回した。


「ここで大麻を栽培していると通報があった、入らせてもらうよ」と言いながら堀田が中に入り、残りの三人も続いた。

「草なんか育ててねぇよ、間違えてんじゃねぇか」と男が騒ぎ出した所に、堀田が首筋をたたき電撃を流し、男は昏倒した。

残った男たちは詰め寄ってこようとする。

霞は水糸を延ばし三人を昏倒させる。

一部が裏口から逃げようとしたところに御剣が壁を出してゆく手をふさぐ。

走って来た者には緑川が木杭を飛ばし腿に突き立て、その痛みで相手は悲鳴を上げた


全員を拘束し回収の連絡をすると、すぐに「東京公衆衛生局」のバンが到着し、芥を搬送していった。

「結局異能者はおらず、か」霞が呟く。


帰りのバンの中では堀田と緑川がゲームのことで盛り上がっている。

霞と御剣は紅茶の美味しい店の話題に花が咲いている。

「紅茶も良いけどよぉ、今度ゲーム対戦しようぜ」堀田が話をふってくる。

「FPSなら自信ありますよCCDとか」と御剣

「俺、テレビ持ってないしゲーム機もないよ」と霞が返す。

そんな話をしていると「支店」に到着した。

全員で階段を登り揃って佐々木の部に入った。


「皆良くやってくれた、怪我もないしな、ところで喜べ諸君、今回は全員に()()が支給される、それも色を付けてだ」

喜ぶ四人を前に満足そうな顔をした佐々木が一人ひとり封筒を渡していく。

「これでボドムズのフィギュア買えるぜ」と堀田が喜ぶ横で霞が手をあげた。

「あの、今回回収されてしまった金はどうなるんです」


「そこだ、一人ひとり調べて返金するのには膨大なカネと時間がかかる、さらに五円だけ返金と言うパターンも当然ありうる、それに、だ返金するにはコトの全容を発表する必要が出てくる」

佐々木はまじめな顔つきで付け足す。

「国家の信用問題だ、パニックになるぞ、金は海外の銀行から必ず引き出したうえで国庫に納められる、歯切れの悪い話だ」

その場が静まり返った。

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