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44 対決

支店メンバー四人は「ニコニコ人材センター」の前で揃って立ち尽くしていた。

「おっせぇなぁ菅藤の奴」堀田がそう言って座り込む。

今日は先日約束した横浜支店の菅藤と、霞の対決の日である。

しばらくして「東京公衆衛生局」のバンが霞たちの前に停車した。


「おせーよ菅藤」

そう言うと堀田はバンの後部座席に乗り込んだ。

「おい、どうして柊以外が乗ってくるんだ」と菅藤が不満の声を漏らす。

「同じ支部のメンバーなんだぜ、見る権利はあるだろう」

菅藤は舌打ちするが、堀田は気にせず後部座席に乗り込んでいく。


「皆さんおはようございます」

東雲が声をかけてく来たので、全員挨拶を返す。

「私は東雲さんの横に良いかな」と御剣。

「いいよいいよ、女の子同士、そうだ施設時代の霞くんの話をしよう」

「あっ、それ聞きたいです」


(本人がいるのにその話をするのか)

霞はそう思いながら堀田の横に座り、その隣には緑川が座ろうとする、何やらもじもじしている。

「失礼します」

そう緑川が呟くと、霞はてをひらひらさせて歓迎する旨を伝えた。

バンが走り出ししばらくすると有料道路に入った。

「すごい景色だな」そう霞が言うと。

「そうだろう、この辺東京湾近くは夜景スポットでもあるんだぜ」と堀田が返してくる。


御剣たちはなにやら霞の話で盛り上がっている。

やがて有料道路を降りると、倉庫群が見えトラックも何台か路肩に駐車している、バンが柵から中に入ると、フォークリフトや積み上げられたパレットが目に入る。

そのうち一つの倉庫前でバンが停まった。

御剣が外に降りて、続いて東雲、順番に下車した。


「それでは終わるまでここで待機しています」

とバンの運転手が話しかけてきて東雲がそれに答えた。

菅藤は倉庫の脇にある扉を開け中に入り照明のスイッチを押した。

暗かった倉庫内が一気に明るくなる。

「ここが訓練所か」堀田はそう呟くと、当たりを見回す。


ヤグラのようなもの、大き目のマット、金属製の的など様々な物が置かれている。

「施設の訓練所みたいだねぇ」と東雲が言う。

(なるほど既視感があると思ったら、施設のアレに似てるんだな)

と霞はあの頃のことを思い出していた。


手前の方に多くとられた空間に菅藤は進んでいくので、皆それに倣って着いて行く。

上着を脱ぎ、隅の方にそれを置いた菅藤は霞の方へ向かって言った。

「勝負は一回、どちらかが降参するかどう見ても戦闘不能になること、いや、大体の場合は中止の声がかかる、お前らはアイツがダメだと思ったら中止させていいぜ、開始の合図は東雲、お前に頼む」菅藤が叫ぶ。

緑川が「菅藤さん完全にか、勝つ気でいますね」と声を出す。

「自信過剰なヤローだな」と堀田。


「俺はいつでもいいぜ、柊さん」と菅藤が霞に声をかける

「俺もいいよ」霞が答える。

東雲が手を上げ「じゃあ、いきます、レディゴー」

すぐさま菅藤が火球を放ってくるが霞はどれも寸前でかわしていく。

少し驚いた顔をした菅藤は「避けるばっかりじゃ勝てないぜ」と叫ぶ。

霞は水糸を放つが、菅藤が火壁カヘキを繰り出して水糸を蒸発させる。


霞は避けつつ水球スイキュウを菅藤に放つも、それも蒸発してしまう。

能力をスイッチして電撃を放つがそれも火壁に遮られる。

「変だぞ、アイツの火壁は通常より大きく見える、いや確実に大きい」

堀田がそう言うと東雲が答える。

「彼は恩恵オンケイ持ちなんです」

「オンケイ、恩恵か」堀田が驚くような声を上げる。


「恩恵って何ですか」と御剣。

「恩恵は他の異能者よりも能力が大きい人をさすんです、最も珍しい体質ですが」

「このままで勝てるのかよ、霞君はさ」

東雲は黙ってしまう。


(このままじゃジリ貧だな、だが原理としては可能な方法があるが試してみるか、最もこれでダメなら降参だが)

霞は火球を避けながら手に水球を貯めていく。

「無駄だってわかんないのか、降参してくださいよ」と菅藤が煽ってくる。

その叫び声と同時に霞は水球を射出した。

菅藤は火壁を展開している。

今までと同じく水球は蒸発して消えてしまう。


だが菅藤は糸が切れたようによろめき倒れ伏した。

その場の全員があっけにとられている。

東雲が我に返り「中止!ちゅうし!」と叫ぶ。

霞は息を吐いて、膝に手をやる。

菅藤に駆け寄った東雲は「生きてる、気絶しているだけだよ」と大声を出す。


全員が菅藤の前に駆け寄っていく。

「あーこりゃ電撃だな」と堀田。

御剣も「そうですね、柊さんの電撃です」と同意する。

「え、でも電撃は火壁でかき消されていましたよね」東雲。

「アイツのことだからなんかやったんでしょ」と言いながら堀田は霞を呼んだ。

「霞君何やったの」と食いつき気味に東雲が霞に尋ねる。


「あー、まず水球は火壁を突破する前に蒸発するでしょう、電撃も同じでした、だから電撃を水球でくるんで放ったんです、想定通り水球は火壁の半ばまで行って蒸発し、中にあった電撃が火で減少しながらも昏倒させるに必要な分だけ彼に到達した」


「半異の、しかも両方使えるヤツだけの技だな」堀田がニコリとして言う。

「いやいやいや、忘れていたけど半異能で両方の属性が使えるんですか」

「そうです」とほほ笑みを浮かべながら御剣が言った。

続いて緑川が「ウチの支店ではも、もうなれっこです」と声を出す。

霞は「彼は多分十分くらいで目を覚ますと思うから」と笑顔で言った。






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