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40 監禁

「今回の掃除対象はこの連中だ」

佐々木の後ろにある液晶ディスプレイに六人の男の顔写真が映し出された様々な角度の写真で、画像が不鮮明な物もある。


「いわゆる半グレ組織でな、人身売買と児童ポルノの嫌疑で警察から処理依頼がきた」

「人身売買ですか、初めてのケースですね」と御剣が言う。

霞は御剣の方を見た。

「場所は大宮区、上尾にある倉庫だ、大宮区はウチの支店の管轄内でな、池袋と言う立地が埼玉県にアクセスが良いからそうなっている」


「どこから情報が入ったんですか」と霞。

「時折悲鳴が聞こえてくることと、出入りしている人物が()()()()反社らしい連中だったので近隣住民から通報があったそうだ、警察は一度は踏み込んだのだが、その時には何も出てこなくてな、上に報告すると捜査中止の命令が出された、圧力だろうな、だがウチの存在を知る人物から内密に連絡が入ったのだ、良心の呵責と言うヤツだろうな」


「とにかく連中を掃除してもらいたい、くれぐれも奴らの商品には傷をつけるな、詳細は異端に送信してある、今日中に掃除を完了してくれ。

佐々木はそう言うと高価そうな椅子にもたれかかった。


二人はその足で池袋駅へ向かった、ICカードをかざし改札内に入る。

「異図によると湘南新宿ライン高崎行きですね、埼玉県は初めて行くなぁ」

「埼玉県は掃除で何度か行きました」

そう会話しながら二人はホームに立ち電車を待った。

しばらくすると緑と黄色のラインが入った電車がホームに侵入してくる。

二人はそれに乗って北へ向かった。


「人身売買なんて、ニュースでも見たことなかったしネットでも上がってきていませんでしたが、実際にあるんですね」

「私も詳しく知りませんが、無数にあるそうです、でもなぜか摘発されずされたとしても報道されないのが現実なんだそうです」

霞は言葉を失い、この国が今現在ねじ曲がってしまっている状態なのを痛感した。


電車は四五分ほどで上尾駅に着いた。

上尾は住宅街のひしめき合う平和な町そのものだった。

だがそこにも黒い手が伸びていることを考えると、その臭気に顔をしかめたくなる。

「ここから十五分くらいですね」御剣が指をさす。

「それなりに近くて助かります」


歩いて行くと異端にある倉庫と同じ写真が見えてきた。

「あそこですね」と霞

「はい」と御剣が返事をする。

倉庫には監視カメラが付いている。

霞がインターホンを押すと「はい」と返事があった。

「草加せんべいを何枚か見繕いたいんだが」と霞はインターホンに向かってしゃべりかける。

符丁である。


しばらくするとわに革のシャツを着た男が顔を出し「入れ」と言ってきたので中に入る。

倉庫の片隅にはベッドと照明機材に何らかの道具が固めて置いてあった。見回すとマージャン卓に三人の男が座っており、こちらをだるそうに見ているタトゥーを入れている者がほとんどだった。

壁の隅にある暗がりに、薄汚れた毛布をかぶった東南アジア系の少女たちが目に入った。

全員が中学生かそれ以下に見える。


「女連れとは珍しいね」

「そうだろうな、だが女の子を見繕うなら女の子目線の方が確かじゃないか」霞が話しかける。

「ん、そうとも言えるな」とワニ皮の男が同意する。

「んじゃあ商品を見てってちょうだい三人以上買うとマケるぜ」そう言ってワニ皮の男は少女たちの前に二人を連れて行き何事か怒鳴りつけた。


少女たちは立ち上がり毛布の前をはだけ裸身を晒して見せる。

所々に痣があり、みみず腫れの跡も見える。

忌避感を表に出すのをこらえて霞は声を出した。

「おいおい、傷物じゃないか、これじゃ安売りしてもらうぞ」

「フン、しつけるにはこうするんだよ、御姫様じゃねぇんだ」


その時御剣は「芥を確認」と小さい声で霞に話しかけてきた、霞も「芥を確認」と返す。

その刹那、霞はワニ皮の男の首を片手で締め上げと電撃を流し昏倒させる。

マージャン卓にいた男たちが立ち上がりその内二人が拳銃を向けてきた。

「ワルザーPPK」である。


御剣がコンクリート壁を直立させ、男たちとの間に防壁を作る。

霞は防壁の上縁に水糸をひっかけ、その伸縮性で防壁を飛び越える、男たちが目の前の防壁にたじろいでいるうちに首に水糸をひっかけ電撃を流す。

三人の男たちは昏倒した。


霞が防壁から姿を出すと、それまでいなかった男が御剣をとらえて、こめかみに銃を突き付けている。

「なんだお前たちは、どういうことだ、動くんじゃねえこの女が死ぬぞ」

と言い終わるか終わらないかのうちに、男の持つ「スシャッキン」がぐにゃりと変形して男の手を固め込むと同時に男の身体は崩れ落ちた。

霞の電撃である。


「回収を依頼します」と霞がいうと「はい」と御剣が答えた。

程なくして「東京公衆衛生局」のバンが現れ芥をバンに乗せて行った

次の二台は少女たち全員を乗せ、どこかへと走り出した。

静まり返る工場内。

霞は部屋の片隅に歩いて行くと、照明その他雑多な設備を蹴りつけ出した。

照明が割れる音、金属がひしゃげる音が工場内に響き渡る。

しばらくして、霞は御剣の元に戻って来た。

「すみません、取り乱しました」と霞が言うと。

「いえ、私も同じ気持ちです」と、小刻みに震えながら御剣は言った。







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