37 パワードスーツ②
四人は山手線に揺られていた、早朝とあって人はまばらである。
やがて新幹線の乗換駅である品川に到着した。
「へぇ品川駅もデカいんだな初めて来たよ」と堀田が言う。
御剣は「私は何度か来ました」返した。
そう会話しながら新幹線乗り替えフロアに到着する。
御剣が「異端」を起動して端末にかざすと全員分の乗車券を発券する。
改札をくぐりホームに降り立ち、指定の乗車位置に立って待つと「のぞみ」がやってきた。
ドアをくぐり指定席に陣取る。
「なぁなぁ総社のソウルフードは焼き飯なんだって、掃除が終わったら食べて行こうぜ」
「きびだんごはマストです、鬼退治みたいなものですし」と緑川が会話に加わる。
堀田は努めて明るくふるまう、場の空気をほぐそうと言うのだろう。
(こういう時に堀田の明るさはありがたいな)
そう考えているうちに霞は寝入ってしまった。
「なぁ霞君」と堀田が会話を降ってきたが、御剣が人差し指を口に当てる。
「寝てるのか、こんな掃除を前に肝が太いって言うかなんて言うか」
と堀田は席に座った。
「そろそろ着きますよ」御剣に揺り起こされて霞は目覚めた。
「あっはい、あれ、俺ねてました」
「はい、気持ちよさそうに」
堀田も声をかけてくる。
「よぉよぉ赤ちゃんはお目覚めかい」
「ああ、なんかすまない、昨日遅かったから」霞は答える。
しばらく会話をしていると岡山に到着した。
改札を出て開けた駅構内を通り抜けコンコースに出て、レンタカー屋の場所を確認する。
「あっ桃太郎の銅像がありますよ」と御剣は言った。
「岡山って本当に桃太郎推しなんですね」と、緑川。
レンタカー屋では柊の名前で予約されていたため偽造の運転免許証を出す。
「柊霞様ご本人で間違いないですね」と言ってきたので、間違いない旨を伝え免責保障や緊急時のやり取りなど会話が進んでいく。
説明が終わったので外に出て、レンタカー屋の社員が自働車まで案内する。
「NIPANローフ」だ。
霞は運転席に乗り、シートベルトを締めた。
全員乗車したので、異端を起動し「異図」をタップする。
「三十五分くらいですね」
「なんだ近いじゃん、ドライブって距離じゃないな」と堀田。
霞は「ローフ」を発進させ東に向かった。
山の中に入りしばらく進むと対象の建物が見えてきたので、退避場所に自動車を停めた。
建物の前には侵入防止の柵が立っている。
四人とも立ったまましばらく建物を見つめている。
すると霞が両手でひし形を作り目を覆った。
「監視カメラ、三代は確認できました、それとトラックらしき車両が奥にちらっと見えます。
「ここから見えるのか」と堀田が声を出す。
「水をレンズ状にして二枚重ねて、曲面を調節することで双眼鏡の構造にしている、ただ集中が必要だけど」
霞以外の三人はあっけにとられていた。
「水異能でそんな使い方聞いたことありませんよ」と御剣が霞に言う。
「そうなんですか、確かに難しかったですが」
「とにかく行こう、監視カメラがあるなら正面から堂々と行っても同じだな」堀田が促す。
「うん、角度的にもうカメラに引っかかっていると思うし」霞は同意した。
腿丈ほどの柵を乗り越えて建屋の前に立つ。
「ここからだ、みんな油断するなよ」と堀田が言い、インターホンを押す。
すぐにドアが空き作業服姿の男が出て来た。
「何か御用でしょうか」とおどおどした様子で話しかけてきた。
「市から依頼された業者でね、御宅が不法建築じゃないかとの疑いがあるからさ、調べてこいってことで来たのさ」
口から出まかせである。
「中に入っていいかな」と堀田は強引に中に入り残りの三人もそれに続いた。
中には何やら工作機械の類や段ボール箱に大きな金属の箱がところせました並んでいる。
「あの、困ります」と作業服姿の男が言っていると「いいよいいよ入ってもらいなさい」とスーツ姿の男が現れた。
「ここは何作っているの」と堀田」
「雑多な物ですよ、パソコンのフレームにテレビの基盤を乗せる板、まぁそんなところですが」と歩きながら言うのでそれに付いて行く。
「そうそう、変わったところではコスプレの衣装制作しているんですよ、これなんかアイアンガイのスーツによく似ているでしょう」
そう言って男はガチャガチャとスーツを身に付けだした。
マスクをかぶると傍らにあった帯状の何かを肩からかける。
そして傍らにあった何かを手に取った「イザマッシュ・サイゲ」だ。
四人は身構える。
「このスーツねぇ、本物のパワードスーツなんですよ」
男はそう言うとサイゲの銃口を向けてきた。




