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31 堀田

イメージトレーニングをしていた霞は、異端の振動音で我に返った。

テーブルの上に置いてある異端を手に取ってめくると「異共」に①のマークがついていた。

「異共」は「異能力者情報共有頁(イノウリョクシャジョウホウキョウユウページ)の略であり、機能としては一般に普及している「LIME」と同じような物である。


タップすると「堀田」の所に①が出ている。

堀田から連絡が来たと言うことだ。

霞はタップして堀田に返事を返す。

(何の用)

返事はすぐに帰ってきた。

(今日飲もうぜ)

(なんで)

(親睦を含めてだよ、あと聞きたいこともある)

少し迷った後霞は承諾する旨を堀田に返信した。


十九時の池袋西口はごった返していて、喫煙所から煙草の匂いが漏れ出してきている。

「霞君待たせた、悪い」

そう言って堀田は近付いてきた、ブラックのジャケットに同じくブラックで細いパンツ、これもまたブラックの革靴をはだしではいていた。

そして首に包帯が巻かれている。


「堀田、首を怪我したのか」霞が問う。

「ちげーよ」と言いながら霞の耳元でささやく。

「異能者は首枷を付けているだろう、それを隠しているんだよ」

「なんでだよ」

「お前、反社の連中のなかには首枷のことを知っている連中もいるんだよ、むき出しにしていたらそいつらに丸わかりだろう」


「でも山に来た時はむき出しだっただろ」

「ありゃ脅しだよ、異能者が来たぞってな」

「じゃあ、俺が支店に来た時は皆外してたぞ」

「新人が来たときは外して見せるのがルールなんだよ、それにその方が誰が異能者かわかりやすいだろう」


「なるほどそうか」

「ったく枷無しの霞さんは言うことが違うわ」

そう言えば御剣さんもスカーフを巻いていたな、と初掃除の時のことを思い出していた。

「じゃ、店そこだからと」堀田は歩き出す。

「大都市」と書かれた看板の店に入っていく。


店は相当にざわざわしている、堀田は店の中で「ここは券売機式なんだよ、なにがいいんだ」

と声をかけてくるので「まかせるよ」と言うと「素直で良いねぇ」と手早く食券機を操作していく。

奥まった席に陣取り店員に食券を渡す堀田。

すぐに生中が運ばれてきて、だし巻き卵とモツ煮もテーブルに置かれる。

堀田がグラスを掲げるので霞もそれに倣った。

「新入りの前途を祝してカンパーイ」と彼が言ったので霞も合わせて「乾杯」と答えた。


「もういきなり聞くぞ、どうやって俺を倒したんだ」

「おい、こんな人が多い場所で」

「大丈夫だよ、うるさくって聞こえやしねぇし、聞こえても隠語ばかりで何もわかんねぇよ」

「そうか、ならいいか」

「早く教えろよ、はやく」

「師匠は縮地シュクチと言ってた」

「なんだそれ、それじゃわかんねぇよ」

「うーん、簡単に言うと恐ろしく速く移動する技だ」

「どういう仕組みなんだよ、あ、無宿人剣人ムシュクニンケンジンで出てたやつか」


「なんだそれは」

「アニメだよアニメ、有名だぞ」

「堀田はアニメ観るんだな意外だぞ」

「なっ、オタクって言いてぇのか」

「ちがうよ、本当にイメージじゃないんだよ」

「面白いんだぞアニメは、最初はパチのイバンゲリオンで打って、なんか良さそうだなってサブスクで調べたら劇場版があってよ、観てみたらスゲー面白れぇの、そっからアニメにはまってさ、無宿人剣人もその流れさ」

堀田は一気にまくしたてる。


「いや、アニメは良いよ、あの縮地を使ったってどういう仕組みなんだ」

「体内の水を異能で無意識下で操作して、同時に体内の電流も活性化させる、まずこれで自分の身体を数倍の速さで動かせる、次に足の裏に電気を貯めて自分を電磁砲の要領で射出する」

「なんだそれ、だけど電磁砲は知っているぞまがりなりにも電気異能だからな、それにアニメでやってたけどパチンコ玉をすげー勢いではじき出すんだよ」

「多分それであってる」

「あ、でもお前は靴履いていただろ、電気は地面に流せないはずだ」

「靴の表面を水で覆っているから出来る」

「は?反則だろうお前、俺だって電気使う時は水をつかったりもする、だけどそれを当たり前にできるのか」

「当り前じゃないよ、出来るようになるまで一年半かかった」


堀田は少し黙った。

いや、引いていると言った方が正しいかもしれない。

「もしかしてあの廃墟で二年間そんな風にスキルを鍛えていたのか」

「そうだよ」

「なぁ、お前って半異だよな、いやいやいや、もしかして水と電気を両方同時に使えるのか」

「そうだよ」

「あっ、首枷を壊せるのも、そのせいか」

「おしえない」


「いやありえねぇ、半異で両方同時に使えるなんて聞いたことねぇよ」

「いま聞いただろ」

「そういうことじゃねぇ、俺が言いてぇのはお前は異常だってことだよ」

「異能者はみんな異常なんじゃないのか」

「言葉尻とらえるんじゃねぇよ、とにかく、いや、異常ってのは言い方悪かったわ、スマン」

「いいよいいよ、多分そうなんだろうから」


堀田はグラスを飲み干すと静かにテーブルに置いた。



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