23 掃除屋
掃除屋と言われ何のことかわからないと言った顔をした霞にデスクから声がかかる。
「反社達をとらえたり処理するのが我々の仕事だ、ゴミや腐った物なら掃除するのが当たり前だろう、だから掃除屋と呼ばれている」
何気なく部屋を見回すと、霞を捕らえに来た堀田信二の姿が目に入った。
「堀田じゃないか」
霞がそう言うと堀田は不機嫌な顔をした。
「堀田君は君に昏倒させられたのを良く思っていないのだよ」
「ちょ、佐々木さんやめてくださいよ」
堀田は焦った様子で佐々木のデスクに歩み寄る。
「こう言うのは早いうちに言っておいた方が良いだろう、あとからだとぎくしゃくするぞ」
堀田は金髪頭を手でくしゃくしゃとやった。
「霞君まずは自己紹介といこう」
そう言われて霞は口を開く。
「柊霞です、半異能で水と電気になります」
部屋にいた他の者もそれに続く。
「緑川結です、異能は火です」
「御剣裕子です、異能は土です」
「堀田信二、異能は知ってるだろ」
全員首枷を付けている。
一通りの自己紹介が終わると
佐々木がしゃべりだす。
「以上四名が掃除屋池袋支部のメンバーだ、大まかな話をしていくぞ、掃除屋はバディを組んで動く、基本的に異能の弱い部分を補い合う者同士がペアとなる」
「さっそく紹介するが君のバディは御剣君だ」
御剣は一歩前に出て「よろしくお願いします」と言った。
御剣は小柄な女性で、髪は黒のショートで比較的大き目の眼鏡をかけている。
服装はスーツにタイトスカートとパンプスと言ういで立ちで、そこらのOLと言われても差し支えない。
こんな子に「掃除屋」が務まるのだろうか。
「さっきも言ったが掃除屋は反社をとらえたり、処理するのが仕事だ、給料も出るぞ」
(昨日もらった二十万円が給料なのだろうか、まぁ今のご時世大学での初任給くらいの額だな)
そう思いながら佐々木の話を聞いていると、住居の話しになった。
「ここから十分ほど行ったところに雑居ビルがある、新栄興信所が君の住まいだ、なに中は居住スペースになっている、家具も抜けたメンバーの物が残してあるし掃除済み、寝具もすべて取り換えてある、日用生活品もあるぞ、場所は異図に送信してあるからそれを頼りに行け」
そう言って鍵を堀田に渡すと堀田が霞に鍵を手渡しに来た。
堀田は霞を見ると妙な感じに顔をひねった。
「抜けたメンバーは退職したんですか、施設で聞いたことには一生解放されないとのことでしたが」
「そうだ、ならばそいつが抜けた理由はこっきり一つだ」
霞は場の空気を察してそのまま黙ってしまった。
「良し、今日はここまで、皆ご苦労だった、解散だ」
メンバーが退出してそれぞれのロッカーらしきものから何やら取り出したりしている」それを横目に霞は階段を降り始めた」
「よお、ずいぶん様変わりしたな、あのボロジャージは笑えたぜ」
堀田が声をかけてくる。
「俺もそう思ったからこの格好に着替えた、どんな服装がいいかわからなかったしな」
階段を降りながらやり取りし、下りきって脇にそれた所で会話を続けた。
「ここは服を自由に買ってもらえるぜ、ただし用途として認められたものだけだがなスーツのままが良ければそれでもいいけどな」
「正直堅苦しくてやりにくいずっとジャージだったしな」
「んじゃまたジャージにするか、掃除屋が輩みたいになってちゃ世話ねぇな」
「まぁ今日から仲間だよろしく頼むぜ」
そう言いながら堀田は池袋駅の方角に向かって歩き出した。
異図を頼りにして、新しい住処に向かうと路上をたむろする人間や、看板を持って無言で手を降るメイド姿の女性が目についた。
(悪いなぁ治安、こんなところが住処とかおっかねぇよ)
「目的地に到着しました」異端から音声が聞こえる。
見回すとすぐ横のビルに「新栄興信所3F」と書かれている。
少し急な階段を登りながら(これ、本当に興信所だと思って人が来たらどうするのかね)
そんな風に思いながら3階まで登ると「新鋭興信所」とプレートがあり、その下に「都合により当分の間業務を受け付けていません」と薄いプラスチック板に記されていた。
(なるほどね、まぁこれなら素直に帰るか、いつまでも業務受付を再開しないけど)
そのように思いながら、霞は鍵を開けた。




