21 異端
スマホのアラームで霞は目を覚ました。
白くきれいな天井である。
見慣れない色合いだと感じていると、昨日起こったことを思い出した。
(あのきったねぇ天井とは大違いだな)そう思いながらトイレに入り用をたした。
「朝飯は六時半か」とつぶやきデスクにある椅子を引き寄せて座った。
スマホを起動させ目的のモノを探していく、それはすぐに見つかった「アトランティス超次元の世界」オカルトサイトである。
異能者が巷で活動していた場合、こうしたオカルト的なサイトに情報が漏れる可能性が高い。
いつだったか視聴した黒服二人組が宇宙人を捕獲する映画、その映画では三流ゴシップ紙が彼らの情報源になっていた。
霞はそのことを思い出してオカルトサイトにアクセスしたのだ。
しばらくサイトをめくっていると「新宿にフライングヒューマノイド」「渋谷スパイダーメン」の記事が目に留まった。
画像を見てみるとどれもこれも荒っぽくて確かに人だと思える程度の代物だった。
しかし彼には思い当たるフシがあった。
フライングヒューマノイドは重力操作の異能、スパイダーマンは水糸を利用した水異能なのではないかと。
「ってもヤラセ画像なんて最近当たり前だからなぁ」
そう言いながらスマホを見ると時計はちょうど六時四十五分になったところだった。
霞は備え付けのガウンを脱ぎ昨日購入したスーツ一式に身を包んだ。
エレベーターでホールまで降りると右側の扉が大きく開かれており「朝食会場」とプレートが立っていた。会場はすでに混雑していた、スーツ姿やワイシャツ姿の男性が多いが作業着のいかつい集団も目にとまった。
女性はいないのかと見回すと、さほど多くは無いが年配の集団やジャケットを着た女性がいることが分かった。
(ビジネスホテルってのはいろんな人間がいるな)そう思いつつ、トレイを手に取りバイキング形式のテーブルに付いたが、それほど多くの種類は無かった。
無料の朝食なので文句は付けられない。
一種類ずつおかずを取ると、ご飯を山盛りにして食事用テーブルに向かう。
端の方が空いていたのでそこに陣取りまず味噌汁をすするが、危うく噴き出しそうになった。
(なんだこれ、味噌汁ってこんなのか、いや山ごもりで飲んでいた味噌汁がうますぎたんだ)
昨日のバーガーといい二年間の間で味覚が相当変化したようである。
その後、霞は五杯のご飯をお代わりして席を立ち、エレベーターに乗った。
部屋に戻ってジャケットをハンガーにかけ、立ったままスマホでオカルトサイトをめくる。
しばらくめくると「都内で暗躍するアンダージョブに迫る」と出て来たので異管のことかと思い目を通すと何のことは無い、売春組織にインタビューした内容だった。
書き手の腕が良いのか案外面白い記事なので読み進めていくとある一文に目がとまった。
「記者:ではこれ以上商売を広げるつもりはないんですか」
「A氏:広げない、あんた達は知らないだろうが裏には裏の警察みたいなのがいてよ、そいつらが顔だしてくんだよ」
「記者:その警察みたいなのを詳しくお教え願えないでしょうか」
「A氏:教えねぇ、そんなことしたら俺があぶねぇ、もうこれ以上は話せねぇよ、今の話しだけでもギリギリだってのによお」
これは異管のことではないのか、いや多分そうだろういずれにしても明後日にはわかることだ。
霞はサイトをめくるのをやめた。
その代わり自身が以前やっていたSNSサイトを見ることにした、メールアドレスとパスワードを入力するがログインできない。
何度か試したが、思い当たるどのパスも通らなかったが、はたと気が付いた異管だ、彼らは自分に関するあらゆる痕跡を消したに違いない。
試しに通販サイトにアクセスして、同様にメールアドレスとパスワードを入力する。
ログインできない、何度どのパターンを試してもログインできなかった。
新規作成のためにサブのメールアドレスで登録を試みるも、エラーが発生してしまう。
その内スマホが鳴り通話アプリの画面が表示された。
(加藤さんかな、でも随分早い連絡だよな)
そう思い画面を良く見ると「冲田」と表示されている。
(冲田さん、なんでいきなり通話してくるんだ)
そう考えながらコールに応対する。
「はい、柊です」
「おはよう霞君、冲田です」
「何か御用ですか」
「君は色々調べてるね、オカルトサイトのアトランティスSNSに通販サイト、もうわかったと思うから教えるけどその端末はこちらで管理しているからね、個人情報が必要なサイトは残らずアクセスできないから、異能者専用端末、通称「異端」大事に扱ってね、それでは」
冲田は一方的にしゃべると通信を切断した。




