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Sevens・World  作者: 白ガネ
31/31

第30話 天ノ悪魔


「さて、君は誰かな...?」


そう言いながら空から一体の悪魔が降りてくる。


「ぐっ...!」


身体を見ると右腕と左足、左前腕を欠損。


左脇腹に穴を空け、傷口からは大量に血が流れていた。


その傷たちを治そうと”全能ノ霧”が覆っているが、治るには時間が掛かるだろう。


「なぁ...聞こえてないのか?」


空から降りてきた悪魔が近寄ってくる。


その悪魔は顔に人の頭骨を付け、頭を覆うように大きい漆黒の角に白髪。


黒のYシャツの上に白のロングコートを身につけ背中には大きなカラスのような羽が4つ生えていた。


どこか神々しくもあり邪悪さも身にまとった悪魔が目の前に立ち、頭骨から紅い眼光がこちらを鋭く射貫いていた。


痛みに耐え固唾を飲みながら、その悪魔を見る。


「人に、名前を尋ねる時は...自分から名乗るのが......礼儀ってもんじゃない.........?」


「へぇ...。まっ、それもそうだね。」


そう言いながらその悪魔は、創太の首根っこを掴み持ち上げる。


「俺様の名前は”ベリアル”。さぁ...そっちの番だ。」


「み...御縁 創太......」


「へー...珍しい名前だね。そうだ、つかぬ事を聞いてもいいかな?」


「な、なんでしょう...。」


「お前から”偽物ノ悪魔(ヴァサゴ)”の気配がするんだけど...どうゆう関係?中に居るのは分かるんだけどさ。」


紅い眼光が細くなり、威圧感が増す。


その眼光に怯みながら創太は考える。


正直に言うべきか言わないべきかを......


『知らなイ...と言うのは彼には悪手になル。ここは正直に話した方が君の為になル。』


なるほどな...


賭けてみるか……


「あぁ...俺の中にいるよ。それが何か......!?」


腹に激痛を感じ見てみると、黄金の剣が突き刺さっていた。


「ゲホッ……!!?」


口から大量に吐血する。


「やっぱりね、そんな気はしてた。そうそう、やって貰いたい事があるんだ...」


地面に創太を投げ捨てながらベリアルは話す。


城守ノ悪魔(サブナック)修辞ノ悪魔(フォルネウス)墓標ノ悪魔(ビフロン)臭龍ノ悪魔(アスタロト)…。こいつらの結晶を取り込んで欲しいんだ。簡単なことだろ?」


「ゲホッゲホッ...!!」


肺に血が溜まって息ができない...。


目が霞む......


苦しそうな創太の様子を見たベリアルは頭を搔く。


「なぁ...ちゃんと聞けよ。俺様が話してる最中だぞ?それとも...苦しいのか?この程度で死ぬんじゃ意味ないのよ...わかる?」


「ゲホッ...」


「はぁ〜...ヴァサゴの宿()()だろ?がんばって貰わないと……」


そう言いながらベリアルが懐からサブナックの(蒼白い)結晶とフォルネウス(銀色)の結晶を取り出す。


そしてその2つの結晶を創太の口の中へと入れる。


「ゲボッゲボッ...!!?」


臭龍ノ悪魔(アスタロト)のやつは...あったあった。」


立ち上がりアスタロトの結晶を拾うと、無理やり口に入れられる。


「吐き出すなよ?服が汚れるから。」


口の中にある3つの結晶を強引に飲ませられる。


これは拷問か何かなのか...!?


ただでさえ息できなくて苦しいのに...!


「ガハッガハッ...!!!」


墓標ノ悪魔(ビフロン)のは確か持ってたよな?」


懐に腕を突っ込まれると、目当てのものを見つけたのかニヤつく。


「あった...。うーん...苦しそうだから”()()()()”入れてやるよ。有難く思えよ?」


そう言って腹に刺していた黄金の剣を引き抜くと、傷口からビフロンの結晶を入れられる。


この時には既に体の感覚がなかった為、痛くも痒くもなかった。


不幸中の幸いってやつなのかな。


ただただ寒く眠たかった。


これがゆっくり死ぬ感覚か...


今までは一瞬で死んでたから実感しなかったけど...


死ぬのってこんなに怖いんだな......



「...ありゃ?死んじまったか?」


ピクリとも動かない創太を見たベリアルは頭を再び掻く。


「まっ...いいか。この”人間(劣等種)”の中でアイツらが肉体の()()()を握るために殺り合うだろうし...その様を眺めてるだけで()()いいや。」


近くの瓦礫に腰を下ろしながらベリアルは呟く。


創太の肉体に”全能ノ霧(黒いモヤ)”が漂い、全身を包み隠す。


「...あれ?こんなんだったか?まっ...いっか。」


ニヤニヤしながらベリアルは見続けていた。


そんな時だった。


「翠冷 ”山籟ノ猟師”!」


ガキィン...!と金属同士のぶつかる甲高い音が響き、翡翠の風が渡る。


「今ちょっと忙しいから後にしてくれ...悪魔ノ狩人(バルバトス)。」


どこから出てきたのか黄金の剣がアキラの一撃を防いでいた。


ベリアルが防いだのではなく、宙に浮いた黄金の剣が防いでいたのだ。


「...!?」


「居合 一刀 ”導火一閃”!!」


驚いていたアキラの背後から勢いよく現れたヨヅナがベリアルに斬り掛かる。


「だからさ...」


再び甲高い音が響き、炎が宙を舞う。


「嘘んっ...!?」


アキラの時同様、黄金の槍がヨヅナの一撃を防いでいた。


「忙しいって言ってるだろ?地獄ノ大総裁(マルバス)...」


ベリアルは2人を見ずに話していた。


アキラは軽く舌打ちをすると飛び引く。


いつの間にか横にいたヨヅナに視線を向ける。


「アカンな...あいつ強いで。」


「わかってる...。」


2人に背を向けるベリアル。


だが、先程の奇襲が通用しなかったのだ。


ベリアルと2人には越えられない()()()を目の当たりにする。


二人の頬に冷や汗が伝う。


創太(あいつ)はあの悪魔に何かされたのか?


あの黒いモヤはなんだ?


いま何が起こっているんだ...!?


「おっ...!」


考えていたアキラを他所に、場面は一転する。


全能ノ霧(黒いモヤ)に包まれていた創太の姿が顕となり、それまで座っていたベリアルが立ち上がる。


「誰が()()()?」


「...勝った?」


「アキラ...あれは創太なんか......?」


創太は静かにゆっくり立ち上がる。


姿は偽物ノ悪魔(ヴァサゴ)のままだが、その顔面は()()()


目も鼻も眉も...何も無く。


ただ”真っ黒”だった。


その真っ黒の顔面から黒いヘドロのような、粘性の液体がぼたッ...ぼたッ......と落ちていた。


「くくくくッ...!やっぱ、()()が勝つか!」


ベリアルは笑っていた。


偽物ノ悪魔(ヴァサゴ)!」


真っ黒だった顔面に、真っ白の歯列が並ぶ。


「お久しぶりです”天ノ悪魔(ベリアル)”。どうやら...随分と”()()()”を下さったみたいで......有難いですね。』


「いいって事よ、それより...お前らしくないな。肉体の所有権を握れないとはね。」


「色々と訳があるんですよ...()()()。』


「訳ねぇ...まぁいい。俺様の邪魔さえしなければ好きにすればいい。が、その兆しがあれば殺すぞ?」


歯列が釣り上がる。


天ノ悪魔(ベリアル)ほどの悪魔が随分と警戒なさるんですねぇ...まさか、私が怖いんですか?』


「くッ…ははははッ...…!」


それを聞いたベリアルが笑い出す。


「ぷッ...はははははハッ...!!』


続けてヴァサゴも笑い始める。


互いに笑い合う。


その2人?を緊張しながら見ていることしかできないアキラとヨヅナ。


その笑いは長くは続かなかった。


ベリアルが黄金の剣を出すとヴァサゴを刺しに行く。


読んでいたのかヴァサゴはその攻撃を”黒い何か”で防ぐ。


「怖いですね...急に刺しに来るなんて......』


「お前だって殺る気満々だったろ。お互い様だ...」


「それもそうですね。』


ヴァサゴの足元から黒い液体のようなものが広まる。


「”義証ノ嘘(シタエル)”』


そう唱えると液体が広まった地面から黒く鋭い棘が勢いよく飛び出す。


ベリアルは見てから翼を羽ばたかせ空に回避する。


「”堕天(ルシフェル)”」


黄金の武器たちが空を覆うと勢いよく地面に降り注ぐ。


武器たちが地面に接触し土埃が舞う中、ベリアルは目を細める。


「”追放(アダム)”」


一本の黄金の槍が形成されると、それは次第に大きくなりヴァサゴのいた場所に飛んで行く。


土埃を打ち晴らし地面に大きな亀裂を裂きながら突き刺さる。


そこにヴァサゴの姿はなかった。


「”義証ノ銀鮫(ルシ・フォルネウス)”』


いつの間にか空にいたヴァサゴが黒い液体を飛ばすと、その形は黒い鮫の群れとなりベリアルに襲い掛かる。


「ふむ...。」


そう呟きながら黄金の盾を出し黒い鮫の群れを防ぐ。


間髪入れずヴァサゴは剣を形成すると斬りかかる。


「”義証ノ蛆湧斬剣(ルシ・サブナック)”』


「だよな?」


蒼白い斬撃も虚しく黄金の剣により防がれベリアルに届くことはなかった。


「厄介ですね...』


「こんなもんじゃねぇだろ?お前の力は。この程度じゃ俺様は退屈でしょうがない。」


そうですか。と呟きながらヴァサゴは距離をとる。


厄介ですね。


まだ”()()()()”を取り戻していない分、他の能力で補ってはいるんですが...


それでもここまで力の差があるとは......


はぁ...とため息をつくヴァサゴ。


そんな時だった。


「翠冷 ”夜嵐”!」


激しく冷たい突風がベリアルを背後から襲う。


「...?まだいたのか。何か用か?」


アキラの技をくらって尚、傷一つ付いていないベリアルはやれやれ...と言わんばかりにアキラを見る。


そして驚く。


翼の生えていないアキラが落ちることなく空中にいることに……


足元を見ると黄金の魔法陣のようなものが展開されていた。


「なるほどな...()()()()の術か!」


「老いぼれ...?村長の事か?」


「僕も忘れてもらっちゃ困るで!」


側面からヨヅナが斬りかかる。


が、それに目もくれず黄金の斧で防ぐとヨヅナは少し複雑そうな表情を浮かべる。


「なんやあいつ、ほんま規格外やな...」


「あの悪魔の目的が何となくわかったぞ。」


「創太もしくは、ジジイが目的...ってとこやな?」


「...。」


ヨヅナに簡単に言われアキラはムスッとする。


「で?あの老いぼれはどこだ?」


「知ってどうする?...殺すのか?」


「さぁ...それは返答次第。」


「なんやそれ...」


「なんだ...私が目的では無かったのですね。少し残念です......。』


胸に手を当てながらヴァサゴが話すとベリアルがクスッと笑う。


「安心しろ、老いぼれの次はお前だ。」


安心できませんよ...と零す。


「知っててもお前には言わねぇよ...悪魔の言葉なんぞ信用出来ないからな。」


アキラはベリアルをその金色の瞳に捉えながら臆することなく話す。


それを聞いたベリアルは口角を釣り上げる。


「いいね...()()()()()答え方だ。」


黄金の武器が空を覆う。


「ヨヅナ!」


「わかっとる!!」


ヨヅナは黄金の魔法陣を蹴り空高く跳躍する。


そして鞘に納めていたブレードに手を掛ける。


「居合 六刀 ”粉塵紅蓮火”!!!」


紅く輝く粉塵が広範囲に撒き散らされ、それに触れた黄金の武器たちが連鎖的に爆発する。


黄金の空が紅くなっていく。


「おい!そこの()()!合わせろ!!」


「いいですよ。』


爆発を見たベリアルが少し驚く中、ヴァサゴとアキラが動く。


「龍神拳 黒ノ型...』


「翠冷...!」


黒いオーラを纏った拳と、冷たく強烈な突風を纏ったメイスが繰り出される。


「”黒雲伏龍”』


「”稲佐風一陣”!!」


それらに見舞われたベリアルは笑っていた。


右手でメイスを左手でヴァサゴの拳を掴んでいた。


「爪が甘い...が、今のは一番ヒヤッとした。」


「なっ...!?」


右腕を振りアキラを勢い良く引っ張る。


「こいつ!腕力も...!?」


引っ張られたアキラはそのままヴァサゴとぶつかる。


「痛い...』


「腕力もあるとは思わないだろ!?」


空いた手に黄金の剣を出し、アキラとヴァサゴを貫こうとした瞬間……


「居合 五刀......」


目の前に漁火が現れ、ベリアルの意識が向く。


「”不知火”!」


「…!」


炎の一閃がベリアルを斬るとその身体を燃やす。


「切り傷くらいは、ついて欲しいんやけどな…」


燃えているベリアルを見ながらヨヅナは話す。


「暖かいな……」


そう一言話すとベリアルは翼を羽ばたかせ、自身を覆っていた炎を消す。


「凹むわ…ほんま……」


「落ち込むことはない…薄皮一枚だ。」


右腕を見せながらそう言うと、瞬く間に傷が癒える。


「人間…名はなんて言うんだ?」


「…?ヨヅナや……」


「ヨヅナか...誇っていいぞ。劣等種である人間の分際でこの俺様に傷を付けたんだ。そこの2()()よりかは強いと思うぞ。」


笑いながらベリアルは話す。


「野郎...」


「まぁ…事実ですからね。』


奥歯を噛み締めるアキラと頬をかきながら零すヴァサゴ。


少し嬉しそうなヨヅナ。


「じゃあ…終わりにしようか。”飽きた”……」


そう言うと1本の槍がヨヅナの腹部を貫き魔法陣を砕く。


「ごはッ…!?」


「ヨヅ…!?」


「次はお前ーー」


「…!?」


瞬く間にベリアルはアキラの目の前に現れると、手にしていた黄金の剣で右腕と左足を斬り落とし、腹部を斬り裂く。


「ガハッ…」


大量の血液を流しながらアキラもヨヅナと共に落下していく。


それらは1秒という極めて短い時間で行われ、気が付くとベリアルはヴァサゴの正面にいた。


「ヴァサゴ、お前はどうして欲しい?」


首を傾げニヤけながらベリアルは質問してくる。


「ははっ…これは困りましたね。』


ここから切り抜けるにはどうすべきか…と考えるヴァサゴだったが、出た答えは()()()しか無かった……


”逃げる”


創太との契約により死なないとはいえ、ベリアルが用いる武器に傷付けられると治りが遅くなる。


訳は簡単。


それは天使の力を帯びているから。


天使と悪魔は逆の存在。


天使の力は悪魔に効くし、悪魔の力は天使に効く。


だが、それは相手が天使の場合のみ。


相手は天ノ悪魔(ベリアル)


自分も堕天した身ではあるが、ベリアルは違う。


悪魔と天使の()()()()()()の存在。


今の私では有効打はゼロに等しい。


なら、どうするか…答えは明白。


”逃げる”


それも全力で……


「ひとつだけ、忠告しとくと……」


その場から逃走しようと目論んでいたヴァサゴを見透かしたようにベリアルが話す。


「一矢報いず逃げ出す奴がいちばん()()だ。」


ベリアルの瞳が紅く光る。


刹那、ヴァサゴは逃走を測る。


が…無意味だった。


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