表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sevens・World  作者: 白ガネ
30/31

第29話 異臭ノ龍

建物が崩れる音と、大きな何かが近づいてくる足音が頭に響く。


意識を失っていたらしい。


身体に力が入らない……。


そう思いながら、アキラはゆっくりと目を開く。


アスタロトから受けたダメージは、予想以上に大きかった。


「痛て……」


身体に乗っていた瓦礫を退かすと、メイスを地面に突き刺し支えにしながら立ち上がる。


悪魔ノ狩人(バルバトス)になった影響で傷はゆっくり治ってきているが、完全回復にはまだ時間がかかる。


頼みの綱はヨヅナだが、あいつは“寝てる”だろうな……。


背に腹はかえられない、か。


アキラは懐から何かを取り出す。


「…………。」


それに小さく呟き、その場に落とした。


取り出された“何か”は地面に触れた瞬間、凄まじい速度でその場から消える。


“これ”を確認してからここまで来るには時間がかかる。


時間稼ぎをしてくれるような“都合のいい”奴なんてここには――


「いたいた!何があった!?」


「…!」


空から聞き覚えのある声が聞こえる。


見上げると、そこには創太がいた。


「何でお前がここに…根暗悪魔(ビフロン)は殺ったのか?」


「そりゃ…うん。よ、余裕…よ……。」


「…。丁度いい…手を貸せ。」


「あのドラゴン…だよな?」


ゆっくりとこちらへ歩いてくるドラゴンを指差す。


「そうだ…お前は俺が回復するまで、あいつの相手をしてもらう。」


「俺一人で…?」


「そうだ。」


「あのドラゴンの…??」


「…そうだ。」


「相手を……???」


「…。」


何度も聞き返す創太に、アキラの額に青筋が浮かぶ。


ドラゴンとアキラを交互に見た創太の顔がみるみる青くなる。


「いやいやいや…!無理だろ!?俺手ぶらよ!?最低でも”狩猟武器”は必要だろ!どこぞのハンターも持ってるんだから!!」


「…なんの話しをしてんだ?」


「狩りを手伝う二足歩行の猫も欲しい……」


「…とりあえず頼むぞ。」


そう言って、アキラはその場に倒れ込む。


「…マジか。」


創太は迫ってくるドラゴンを見る。


見た目は灰色のドラゴンだが、肉や骨が露出している部分がある。


いわゆるドラゴンゾンビだ。


武器はやっぱり欲しいな……。


そう思った瞬間、背中に違和感を覚える。


手を回すと、棒状のものが触れた。


そこで思い出す。


ーーーー


「創太も武器持っとったんやな。」


「え?あ、あぁ……うん。」


ヨヅナが創太の背中を指差す。


そこには、槍と杖を混ぜたような奇妙な武器が背負われていた。


恐らく金属製なのだろう。


金属はくすみ、柄には無数の傷。


鈍器に近い形状は、長年使い込まれた年季を感じさせる。


ーーーー


「完全に忘れてた……。」


三度も絶命級の攻撃を受けたのに、この武器だけは無傷。


取り出して握る。


手に馴染み、握りやすく、程よく重い。


……いけるかもしれない。


鈍器を握り締め、ドラゴンゾンビを見据える。


「できるだけのことはやるか…。」


そう呟き、駆け出した。


ドラゴンゾンビは、視界に入った悪魔へ向けて咆哮を上げる。


威嚇だ。


創太は思う。


――臭い。


まだ距離はある。


それでも鼻を突く腐敗臭に、思わず顔をしかめる。


その瞬間、”全知の魔眼”が情報を流し込んできた。


これまで使いたくても使えなかった“それ”が、なぜか発動している。


何でだ……?


頭に流れ込む情報を読んだ創太は、目を見開いた。


「”アスタロト”…?」


目の前で咆哮を上げるドラゴンゾンビは、”アスタロト”だと。


炎の柱で二度も自分を殺した存在だと。


先程までの姿とは似ても似つかない。


あの美しかった容姿も、肉体も、今は見る影もない。


腐敗臭を漂わせる、生きる屍。


「何があった…?」


あれが全力の姿なのか?


根暗悪魔(ビフロン)のように、何かを外した姿なのか?


いや、違う。


根暗悪魔はロウソクがランタンに変わっていたし。


そういえば、被ってた骨を砕いた時に”剣”を持ってたような?


なら、これは――


思考を断ち切るように、アスタロトが深く息を吸う。


また咆哮か?


『避けナ…』


ヴァサゴの声が頭に響く。


次の瞬間、紫と黄緑が混じった毒々しい(ブレス)が吐き出される。


「やっば…!」


翼を翻し、間一髪で回避。


その霧は建物を覆うように降り注ぎ、触れた場所から溶かしていく。


「嘘だろ…何だこれ……」


『腐敗だネ。アスタロトの体内で作られた有毒物質に触れるとああなル…だから触れないことを勧めるヨ。』


「なるほどね…あ!アキラ大丈夫か!?」


ブレスの影響で地上は毒々しい霧に包まれている。


だが、一箇所だけ渦を巻いている場所があった。


アキラが倒れた辺りだ。


『彼の”能力”かは知らないガ…風で上手く腐敗を飛ばしていル。当分は無事だと思うヨ。』


「良かった…じゃあ、殺りますか!」


『油断は禁物だヨ。』


「わかってる…油断も慢心も今の俺には無いよ。」


深呼吸をする。


その時、ふと思う。


「なぁ…この”頭骨”外したら強くなれるの?根暗悪魔(ビフロン)とアスタロトみたいに。」


『もちろン…けど今それをするのはオススメしないかナ。』


「…そっか。まぁ…ヤバくなったらで良いか。初っ端から全力でいったら後が辛いよな。」


『そゆこト。』


再びアスタロトが息を吸う。


今度は止める。


創太は空を蹴った。


鈍器に青いオーラが纏う。


これ、師匠に怒られるやつだな。


「”蒼生・青龍印 鈍器ver.”!」


フルスイング。


腹部へ直撃――


バキッ…!


嫌な音が鈍器から鳴る。


「…あ。」


折れた。


鈍器が、だ。


「うっそ…!?金属製だと思ったから思いっきりやったのに!”木製”かよ!!?」


鈍器の半分は虚しくも破片を撒き散らしながら役目を終える。


当のアスタロトは腹をかいていた。


まるで蚊に刺された程度の反応。


その時だった。


凄まじい勢いで何者かが現れ、アスタロトの腹を駆け上がる。


「居合 四刀 ”雷光火車”!」


雷と炎の閃光が、太い首を断つ。


「ヨヅナ!」


巨体の頭が土煙を上げて落ちる。


その上に着地し、ブレードを突き刺す。


「苦戦しとったなぁ創太!それももう終いや!」


「一撃て…まじか……」


呆気に取られていると……


断面から黒いモヤが溢れ出す。


「なんやこれ…?」


嫌な予感がする。


「ヨヅナ!それから離れろ!!」


「…?なに言っ……」


アスタロトの頭部が弾け飛ぶ。


その爆発によりヨヅナは宙を舞う。


「ヨヅナ!!」


創太は空中でヨヅナの足を掴む。


爆ぜた頭部は灰となり、首へ集まっていく。


「何だ…!?」


あの黒いモヤ。


”全能ノ霧”…なのか?


修復ではなく、爆発。


そして再生。


「こいつも”不死身”なのか…?」


俺の場合とは違う再生の仕方。


「”不死身”…?」


足を掴まれ宙ぶらりんのヨヅナが話す。


「…!ヨヅナ大丈夫か!?」


「びっくらこいただけや…てかさっきのことホンマか?」


「恐らくね…ヨヅナが斬り落とした頭がもう治りかけてる。あいつを切り刻んでも多分復活すると思う…。」


「…。下ろしてや。」


「…?」


空中でヨヅナを離す。


ヨヅナは地面に降り、ストレッチしながら言う。


「分からんもんをそのまんまにすんのは…気分悪いやろ?んなら分かるまで試すまでや…」


ヨヅナはニヤリと笑う。


「まさか……」


「そのまさかや…創太は観察しといてや。僕が色々試す……」


ブレードを突き立て、手を当てる。


「”地獄ノ大総裁(マルバス)”!」


赤黒い光柱が立ち上る。


『マルバスですカ。懐かしいですネ…』


「ヴァサゴと同じ”柱”の...?」


『そうですス。まぁ...私より弱いですけド......』


そこ張り合うとこ...?と呟くとヨヅナが光柱から現れる。


先程までの姿と違い、創太同様格好が変わっていた。


「ヨヅナも同じだったんだな。」


「せやでー...おもろいよな。」


「おもろい...のか?」


「まっ頼むで!」


そう言って駆け出す。


修復の終えたアスタロトは向かってくるヨヅナ目掛けブレスを吐く。


「ヨヅナ!」


「モーマンタイ!」


ヨヅナは素早くブレードに手をかける。


「居合 二刀 ”燎原ノ火”!」


前方広範囲に放たれた勢いのある火は、ブレスを包み隠す。


それによりブレスは燃え尽くされ、無力化される。


その隙ににアスタロトを斬る。


腕と翼を斬り落とされたアスタロトは悲鳴にも似た咆哮を上げる。


間髪入れずに今度は胴体を真っ二つに斬る。


が、先程同様に爆発し瞬く間に復活する。


「こりゃアカンかもなぁ…。」


口角を吊り上げながらヨヅナが呟く。



ヨヅナの攻防を空で見ていた創太は考える。


ヨヅナの炎であの(ブレス)が消えた。


どうゆう事だ?


ドラゴンって炎を吐くんじゃなかったのか?


でも、ドラゴンの炎って基本的に赤だよな?


けどアスタロトのは毒々しい色だし…


そこで建物が溶けるように無くなっていた光景を思い出す。


「腐敗…?」


真っ白の空間で空気椅子で座り、足を組んで創太の考えを聞いていたヴァサゴが話し出す。


『その通りダ…腐敗は微生物の集まりだからネ。生物である以上熱に弱いんだヨ。』


なるほど…!


「わかったぞ!」


点と点が繋がったように。


「ヴァサゴ!アスタロトは腐敗の(ブレス)を出してるんだよな?だったらそれは体内で生成されるって事になる…0から微生物はできないとするなら。ある程度の量は体内で飼ってるって事になるよな!?」


『…?まぁそうなるネ。それガ……』


「つまり、あいつも悪魔依然に生物って事になる!わかった!わかったぞ!!」


ニヤリと笑う。


「生き物である以上”心臓”はあるよな?お前ら悪魔は心臓の代わりに()()がその役目をしてるのは根暗悪魔(ビフロン)戦でわかった。なら、あいつもそれがあるわけだから...」


『君の狙いがわかっタ。その手は彼女に対して有効ダ。...と言うか悪魔相手にはそれが1番手っ取り早い手段だヨ?』


「...はい。だと思いました...」


何だかんだあったが…答えは出た。



「ヨヅナ!倒し方がわかった!!」


絶えずアスタロトに攻撃を仕掛け続けていたヨヅナに向かって叫ぶ。


「結晶を引っこ抜くんやろ?」


攻撃の片手間に話すヨヅナ。


「…。その通りでござんす……」


頑張って考えた手段を、あっさり導き出され何とも言えない気持ちになる。


まぁ…良いんですけどね……


はは……


「んなら創太!僕が囮になる...やから1発どデカいの頼むで!」


そう言い”燎原の火”をアスタロトに放つ。


「おらおら!どないしたんや?僕が怖いんか?尻尾巻いて逃げれたらお互い楽やったなぁ!?」


挑発混じりの言葉をアスタロトに掛けながらヨヅナは戦っていた。


俺もそれに応えなければ!


「”龍脈”!」


創太は全身に青いオーラを巡らせる。


今までの俺の技は言ってみれば省略したもの。


きちんと工程を踏み、技を放てば師匠には劣るが火力は出せる...筈。


”龍脈を高めろ”...!


それまで体の表面だけを覆っていたオーラが大きく波打つ。


先程の2倍...3倍とオーラは大きくなる。


これが今の”俺”の限界...だけど!


青かったオーラが次第に青黒くなっていく。


ヴァサゴの力も上乗せする!


さらに大きくそのオーラを膨らませる。


この後、確実に動けなくなるけど...敵は一体だけ。


なら問題ないよな...?


『君がそう判断するのなラ、問題ないんじゃなイ?』


「そりゃどーも...。」


それまで膨らませていたオーラを右腕に収束していく。


やがてそれは右腕から拳に...より青黒く輝きは増していく。



「...!」


創太の様子を見たヨヅナはニヤッと笑う。


「んなら...僕も渾身の一撃食らわせな無作法ってやつや!」


サブナック(あいつ)の時は忘れてしもうてたわ。


”これ”やらな、火力は上がらんわな。


ははっ…と軽く笑ったヨヅナは付けていた頭骨を引き剥がす。


「火力上げてくで!!」


アスタロトの攻撃を避けながら、その頭骨を握り砕く。


粉々となった頭骨はヨヅナの体内に入っていき、目は結膜が黒くなり紅い瞳がより輝く。


角と尻尾はより長く太くなり、歯が鋭利となる。


「遅れた!」


翡翠の突風がアスタロトを押す。


空中にはメイスにこれでもかと、翡翠の凍り付かせる程冷たく勢いのある突風を纏わせていたアキラがいた。


それを見たヨヅナは再び口角を釣り上げると鞘にブレードを納刀し”()()()”。


鞘に収まりきらなかった炎が漏れ出し、ブレードがブルブルと大きく揺れる。


漏れ出てた炎は紅から蒼へと色を変える。


「合わせろヨヅナ!!」


「言われへんでも!!!」


アキラが叫ぶ。


それに呼応するようにヨヅナは駆け出す。


「翠冷 ”颶風颪寒月(ぐふうおろしかんげつ)”!!!」


アキラから放たれた、ものを凍り付かせるほど冷たく竜巻のように勢いの強い風がアスタロトを包み襲う。


その風により無数の切り傷を負い、その傷を修復しようと黒いモヤが傷を覆うが冷気がそれを許さない。


黒いモヤと傷ごとアスタロトを凍てつかせる。


「ゴアァァァァッ...!!?』


悲鳴を上げるアスタロトにヨヅナが追い討ちをかける為、アキラが放った竜巻の中へ駆け込む。


ヨヅナもアスタロト同様無数の切り傷と凍結を食らうが怯まず抜刀する。


その刀を…


蒼く猛々しく搖れる炎を……!


「居合 八刀 ”蒼炎獅子焼尽(そうえんししふんじん)”!!!」


凍り付きそうなアスタロトと凍える突風ごと、その蒼炎で断ち切る。


が、結晶のある心臓部付近は断ち切ることができずヒビだけが入っていた。


「あかん!硬い...!!」


身体が崩れ掛けていたアスタロトの口が膨らみ今にも腐敗ブレスを放とうとしていた瞬間ーー


「十分...!」


創太が飛び出していた。


青黒く眩く光る拳を力強く握り締め、心臓部だけをその蒼い瞳に捉え放つ。


それはビフロン戦とは比較にならないほどの渾身の一撃。


「龍神拳 青ノ型 ”奥義 八岐・天叢雲”!!!」


八岐といっても前回は八本だった大蛇が、今回は一本に収束されていた。


その大蛇はアスタロトの全身を飲み込めるほど大きく、飲み込んだ大蛇は天に昇る。


アスタロトも殺られまいと大蛇の腹の中で腐敗ブレスを吐くが効果はなかった。


「勝ったな...」


アキラが確信する。


創太自身も閃光となり、天を昇る大蛇の腹を貫ーー


「”堕天”」


創太の行く手を阻むように、無数の黄金の武器たちが降り注ぐ。


「なっ...!!?」


その黄金の武器たちによって創太の”八岐・天叢雲”は打ち破られ、その武器たちに体を貫かれたことにより地上に撃墜する。


アスタロトも同様に地上に勢いよく激突し、降り注ぐ黄金の武器たちがその身を貫く。


ヨヅナの一撃でも斬れなかった心臓部が、いとも簡単にその武器たちが貫いていく。


「ガアァァァァァァァァッ......!!!』


アスタロトは悲鳴を上げながらその身体を灰と変えていく。


今までのように復活するのではなく完全に絶命する。


「なん...!!?」


降り注ぐ黄金の武器たちを見てヨヅナが叫ぶ。


「...あいつ!」


アキラが駆け出し、その後をヨヅナが追う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ