第12話 2週間をへて
創太は雲ひとつない、青空を見ながらふと思う。
「ここ…どこだっけ?」
創太はセブン邸の中庭の芝生に寝転がっていた。
そして思い出す。
ここは地獄だったことを…。
「おい、起きろ。」
「はい!」
その一言に創太は即座に反応し、背筋を伸ばして真っ直ぐ立つ。
グランは舌打ちをしながら創太に”拳”を向ける。
それを見て創太も拳を向け構える。
「来い。」
「行きます!」
創太はグランに向かって駆け出すと拳を繰り出す。
それをグランは軽くいなすと反撃の一撃を与える。
が、それを創太は回避すると後方に飛び引く。
軽く息を吐きながら右腕に力を込める。
すると右腕が”青色に薄く光る”。
それを見てグランは口角を少し上げると同じように右腕を青色に光らせる。
創太のものと違いグランの右腕は眩しく光っていた。
創太は少し悔しそうな表情をすると頭を振り、グランを見据え地を力いっぱい蹴る。
グランとの間合いを詰め、青色に薄く光る右腕を繰り出し叫ぶ。
「龍神拳 青ノ型 ”青龍印”!!」
”青い閃光”がグランを捉え、爆音と土煙が当たりを包む。
手応えはあった。
今度こそ…!
っと心の中で確信する。
土煙が晴れていくが、そこにグランの姿が無かった。
背後から嫌な気配を感じ振り返るとグランがいた。
グランは冷たい眼差しでこちらを射抜いていた。
獲物を狩る捕食者のように冷たい眼差しで。
「あっ…無理……」
「”青龍印”!」
凄まじい轟音が中庭に鳴り響く。
「へぶっ…!」
グランからの一撃を腹部にくらい、後方に吹き飛び倒れそうになるが何とか耐える。
それを見たグランは口角を釣り上げニヤける。
「この2週間でだいぶマシになったんじゃねぇか?」
「あ…ありがとう、ございます…”師匠”。」
そうグランは創太に”師匠”呼びを強制したのだ。
最初こそはそれで呼ばなかったら気絶するまで殴られたが今では”板”についている。
創太は芝生に右膝をつき、痛みに苦しみながらグランの顔色を見る。
この2週間で得たものとしては”龍神拳 青ノ型”の習得と”特に”身体・精神が頑丈になった事くらいだ。
本当に地獄だった…。
やっと終わると思うと胸がホッとする。
創太は胸を撫でると立ち上がる。
「慢心すんなよ。今のてめぇは一般人に毛が1本生えたようなもんだ。」
「も…モブ…?」
「それにこの”力”は私利私欲で使っちゃいけねぇ…。自分の為に使えば必ず報いを受ける。」
「…師匠は……なんでもないです。」
創太は言おうと思っていたことを口に出そうとしたが辞める。
脳裏に”死”という文字が過ぎったからだった。
グランは頭をかきながら続けて話す。
「てめぇの”目的”は何だったよ?」
「そんなの決まってます…”理沙”を!”時久 理沙”を探す!」
その問いに真っ直ぐグランの瞳を直視しながら答える。
グランは創太のその顔を見て少しニヤけると伝える。
「忘れんなよ。くたばるまで…いや。くたばっても自分の”オリジン”をな。」
「はい!ありがとうございました!」
創太はグランに深々とお辞儀をする。
ふと思う。
確かにこの人に強くしてもらった恩はある。
けど…。
なんか…腑に落ちないんだよなぁ……。
大きなため息がこぼれてしまう。
グランは創太を見たあと懐から懐中時計を取り出すと、蓋を開け時間を確認する。
舌打ちをしながら蓋を閉めると創太に向かって人差し指で手招きしてくる。
それに創太は瞬時に反応する。
「時間だ、行くぞ。」
「行くって…どこに...?」
「セブン様の話忘れたんか?お前の行先。」
「あー…”アースタピージュ”でしたっけ?1の世界の。」
「あぁ…今から転送する。」
「…え?今ですか!?」
創太の問いに、グランは「あ?」と不機嫌そうに答えると懐中時計のボタンを二回押す。
すると、創太とグランの足元が水色に光り始める。
「ちょっ…なんか足元が!?」
「うるせぇ、黙ってろ。」
「はい……」
創太の困惑を打ち消すグランの一言。
創太はただ黙って水色の光に包まれていくのを待つのだった。
水色の光が消えた気がしたので目を開けると、そこには”森”が広がっていた。