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エンジェルX  作者: 依澄 伊織
青春は命がけでこそ、意味がある
8/14

死霊魔術師ウィリアム

 数分、飛行する事に大分慣れてきたころ合いに、目的の建物が視界に入る。


「あれだ!」

「そうね」


 視界に入ったものは、もはやショッピングモールなどではなく、ただのクレーターだった。


「まずいわね。死の匂いが充満している。すでに少なくない人が死んでいるわ」


 セラフの不穏な言葉に身を固くする。

 もしかして、もう手遅れなのではないか?そんな考えが頭をよぎるが、弱気では駄目だと思い振り払う。


「行こうか。やれることをやるだけだ」

「わかった」


 セラフと共に、灼熱決闘場と化したクレーターの縁に降り立つ。瓦礫を遮蔽物にしながら、姿を隠す。瓦礫から僅かに顔を出しながら、周囲の状況を調べる。すると、クレーターの中心に、ひとりの男が立っていること気付く。男は仕立ての良いスーツと白銀の髪色の美丈夫だった。


「あれが結社の死霊魔術師ウィリアムよ」

「あいつがっ」


 この事件を起こした犯人であり、俺たちを狙う敵だった。

 俺はその特徴的な容姿に注目していたが、すぐにその男の脇に倒れる2人に気づく。


「仁、アサさん!」


 今にも飛び出していきたい衝動に駆られながら耐える。


「シュン!わかっていると思うけど、まだ、その時ではないわ」


 隣から俺を諫める言葉が投げかけられる。

 悔しいが、セラフの言っていることは正しかった。いま、ここで、飛び出しても策のない俺たちには勝算は皆無だろう。何もできず、ただ状況を見守るだけの存在に成り下がっていることが歯がゆかった。

 そうして、状況を窺っていると、魔術師が動き出す。

 魔術師の周囲に倒れる数人の中から、一人の女性を選び、女性の胸に短剣を突き刺す。女性は、数度、ビクンビクンと痙攣を起こし、それ以降は動かなくなった。その後、死んだ女性の額に触れながら、何事かを呟くと、女性は死んだはずなのに、ひとりでに立ち上がると、駅の方角へと歩いて行った。

 まさに、死霊・ゾンビの誕生の瞬間だった。


「あっの野郎」


 怒りが湧いてくる。

 殺し合いなんてものは、魔術師同士でやっていろ!なんの罪もない人を巻き込むな!

 強い激情が心を支配しながらも、脳みそは冷静だった。最低かもしれないが、まだ仁とアサさんが被害にあっていないことが俺を踏みとどまらせていた。

 しかし、それの時間の問題であり、早急に解決しなければいけない。


「どうする?」


 俺は事態の打開を求めて、セラフに尋ねる。


「……私は機を窺って、漁夫の利を狙うべきだと思うわ。さっきも説明した通り、魔術師の脅威から表の社会を守る教会の精鋭部隊が存在するわ。

 恐らく、もう少ししたら、そいつらが駆けつけて、混戦状態になると考えられるわ。私たちは、その隙を狙って、あなたのお友達を回収・離脱する事で、助けられると思っているの。どう?」


 セラフから語られた策は、分かりやすく、一番リスクが少なかった。良い作戦だと思う。しかし、問題は教会の奴らが、本当に来るのかという点だった。

 そして、やはり、そう上手くはいかなかった。

 一人、また一人と死霊へと変化していく中で、20人が過ぎたころに、魔術師はアサさんに手を出し始めた。


「………っ!」


 脳みそが急速に恐怖で冷める。

 否応なしに、アサさんが殺され意思のないゾンビへと至る想像をし、恐怖で凍る。

 そんなことは、絶対にさせてはいけない!

 だが、ならばどうする?俺がいま無謀にも飛び出し、助けに行くのか?

 いや、駄目だ。そんなの意味がない。勝算のない戦いだ。全体に今度こそ死ぬ。

 隣を覗き見る。


「チっ」


 セラフは下唇を悔しそうに噛んでいた。

 頼みの綱であるセラフに、策はないように思えた。


「…………」


 魔術師の手がアサさんの首にかかる。

 短剣は心臓へと向けられた。あとは振り下ろすだけだった。


「---」


 そして、気付けば走り出していた。


「シュン!…あの、馬鹿~!」


 背後からはセラフの罵倒が聞こえるが、とりあえずは捨て置く。

 魔術師と俺の距離は、50mだった。


「ハッハッハッ」


 この戦いの勝ち目は低い。

 相手は熟練魔術師で、間違いなく強敵だ。

 でも、ならば、意味がないから戦わないのか?

 いや、違うだろ。意味がなくても戦うべきだ。例え、勝算が低くとも、走り出すことだけで意味がある。あそこで黙って、自分の命可愛さに指をくわえて見ているだけだったならば、絶対に後悔し、絶望する。だって、俺はセラフの笑顔を見て、救ってよかったと思ったのだから。


「うん?」


 魔術師が気付く。距離は25m。

 一瞬で、精霊心臓を起動し、エーテルを右拳へと集中させる。魔術師は、唐突の事で完全にフリーズしていた。

 当たる!

 そう、直感で感じた。そして、その後の動きを頭の中でシュミレーションしながら、振り下ろそうとしたところで、衝撃に押され後方に吹き飛ぶ。


「ぐはっ!?」

「よぉ、また、会ったな。シュン」


 カエルの様な声を上げながら、先ほどまでいた場所に、視線を遣るとセイランがいた。

 先ほどまで追いかけっこをしていた異端焼却機関所属のセイランが不敵な笑みを浮かべて立っていた。


「なっ」

「セイラン」


 いつの間には、隣にたっていたセラフが神妙な顔で名前を呟く。


「おお、お前もいるのか?

 ふん、最高の状況じゃねぇか。私の獲物が2つもぶら下がっている」


 その言葉で、セラフが素早く翼を顕現させ、構える。


「おいおい、勘違いするなよ。確かに、これ以上ないタイミングではあるが、その前に害虫駆除をしなきゃならねぇ」


 そうして、初めてセイランは魔術師に目を向ける。


「ふむ、君は馬鹿なのか?ここは協力して、彼らを捕らえる場面だろう。君の上司と私の盟主殿は、その様な協定を結んでいるはずだ」


 男は明らかに人を見下したように言う。


「馬鹿はお前だ。事を大きくし過ぎだ。

 どんな手段を取ろうが構わないが、大きさには限度がある。このままだと神秘の存在が世に露呈するだろ。だから、今すぐやめろ」

「やめない。私は人を殺して好き勝手イジるのが大好きなのだ」

「はっ、この異常者が。ならば、今すぐ死ね」


 魔術師とセイランが火花を散らす。現在の関係性と状況は、俺たちにとって、当初の作戦通りだった。情況は俺たちに好転していた。


「「「「……………」」」」


 沈黙と1つの冬風の後に、セイランと魔術師が激突する。

 空気を叩くような衝撃と怒号。クレーターは拡大し、生身の人間でありながら、宙すらも戦場へと変えた。さらに、気付けばオーロラが空に浮かび、星が地表に振って来る。

 理解不能の超絶怪奇。

 夜の五浄市で、魔術の戦いがあった。初めてのリアルな魔術戦に目を釘付けにされていると、後頭部を叩かれた。


「何を呆けているの!早く、あなたの友達と被害者を担いで、この場所を離脱するわよ。

 もうすぐ、消防隊と警察が突入してくる。急ぎなさい!」


 俺はすべきことを思い出し、すぐに周囲に目を遣る。

 いた!

 仁とアサさんを発見すると、2人の元へ行き抱き上げる。セラフの方は。何かしらの魔術を使っているのが、一気に20人を宙に浮遊させていた。


「準備は良いわね?行きましょう」


 合図とともに、俺たちはショッピングモールを後にした。

 最後にチラリと見たセイランと魔術師は、互角の戦いを繰り広げていた。


 #####


 戦線から離脱した俺とセラフ、被害者は、近くの公園に移動した。

 被害者の傷を確認し、大けがを負っている者には、俺が治癒を施し、セラフが『暗示』を施すことで、被害者を安全に家に送り届けた。僅かな記憶の混乱が発生するだろうが、すぐに問題なく日常に戻る事だろう。それよりも、死霊魔術によってゾンビ化され、少なくない人間が街に解き放たれていることが問題だった。

 しかし、一旦は、そのことは置いておいて、俺たちの立て直しや行動方針の確立が必要だろう。

 25時、セラフのタワーマンション。もはや、この数時間でどれだけ、出入りしたのだろうか、なんて思いながら部屋に入った。


「やっぱり、このままじゃ、駄目ね」


 セラフの部屋に戻ってきて、お互い度重なる戦いで汚れた身体をシャワーで洗い落とし、一時の休息を挟み、セラフは提言した。

 セラフがシャワーに入っているという魅惑の状況は、思春期高校生らしく、俺を非常にドギマギさせ落ち着かなかった。しかし、それは今でも続いている。

 シャワーで火照った肌や編み込まれていた三つ編みが解かれ、水が滴るホワイトブロンド、スラっと伸びる細くしなやかな生足が眩しかった。


「ねぇ、話聞いてるって………うん?もしかして、私に見惚れてる?」


 セラフは俺の視線を敏感に感じ取る。

 俺は図星を突かれ、思わず視線を逸らす。視界の端でセラフはニヤニヤと笑っていた。


「そうか、そうか。

 シュンは、私にメロメロかぁ」


 そして、おもむろに席を立つと、俺の前まで来る。


「どう?触ってみたい?

 いいよ、私に触れて。シュンは私の恋人なんだから」


 そうして、腕で胸を挟み誘惑する。


「ごくり」


 思わず、唾を飲み込む。

 キャミソールの上から、セラフの豊満な胸部が盛り上がり明確に誇張する。白い肌と湯上がりで紅に火照りが更に情欲を誘う。

 魅惑の提案に、思春期の俺が断れるはずもなく、グッと視線を胸に固定させて、固唾を飲んで手を伸ばす。

 少しずつ少しずつ、手が届きそうになりーー


「うっそーーー。アハッハハハハハ。めちゃくちゃ私の胸に釘付けじゃん!おもしろ〜い!」


 地獄に叩き落とされた。

 羞恥心で、俺の顔が真っ赤に染まる。数秒前の自分を叩き殺してやりたいほどに恥ずかしい。

 なんで、俺はおちょくられてんだと思いながら、言い返す。


「ウルセェ。全然、気にしてないし。てか、俺は別にお前の胸を触ろうとしたんじゃないから」

「じゃあ、何してたのよ?」

「ただ、腕に違和感があったから、その確認だわ、ぼけ」

「その言い分は、さすがに厳しすぎでしょ。あははは」


 なおも、俺を馬鹿にして、笑い続けるセラフに今度は怒りながら、言い争いをしていた。

 閑話休題。


「「ねぇ、話聞いてるって………うん?もしかして、私に見惚れてる?」


 セラフは俺の視線を敏感に感じ取る。

 俺は図星を突かれ、思わず視線を逸らす。視界の端でセラフはニヤニヤと笑っていた。


「そうか、そうか。

 シュンは、私にメロメロかぁ」


 そして、おもむろに席を立つと、俺の前まで来る。


「どう?触ってみたい?

 いいよ、私に触れて。シュンは私の恋人なんだから」


 そうして、腕で胸を挟み誘惑する。


「ごくり」


 思わず、唾を飲み込む。

 キャミソールの上から、セラフの豊満な胸部が盛り上がり明確に誇張する。白い肌と湯上がりで紅に火照りが更に情欲を誘う。

 魅惑の提案に、思春期の俺が断れるはずもなく、グッと視線を胸に固定させて、固唾を飲んで手を伸ばす。

 少しずつ少しずつ、手が届きそうになりーー


「うっそーーー。アハッハハハハハ。めちゃくちゃ私の胸に釘付けじゃん!おもしろ〜い!」


 地獄に叩き落とされた。

 羞恥心で、俺の顔が真っ赤に染まる。数秒前の自分を叩き殺してやりたいほどに恥ずかしい。

 なんで、俺はおちょくられてんだと思いながら、言い返す。


「ウルセェ。全然、気にしてないし。てか、俺は別にお前の胸を触ろうとしたんじゃないから」

「じゃあ、何してたのよ?」

「ただ、腕に違和感があったから、その確認だわ、ぼけ」

「その言い分は、さすがに厳しすぎでしょ。あははは」


 なおも、俺を馬鹿にして、笑い続けるセラフに今度は怒りながら、言い争いをしていた。

 閑話休題。


「まぁ、とりあえず、そんなことはどうでもよくて」


 お前が始めたんだろうが。なんて、心の中で呟きながら頷く。

 ここで、話の腰を折ってもいいことはない。


「やっぱり、私たちには具体的な作戦が必要だと思うの。そこに関しては賛成してくれる?」

「ああ、それは俺も思っていた」


 実際に、「戦闘修道女セイラン」「死霊魔術師ウィリアウム」たちと相対して、いかに俺たちが足りていないかと実感した。量で負けているうえに、実力ですら負けているのでは、さすがに勝ち目はない。そうなってくれば、俺たちにできることは小賢しい策を弄する事しかない。ただ、それでも、勝利するには、厳しい戦いになる事が予想される。


「オッケー。そしたら、まずは私たちの勝利条件を明確にしましょう。といっても、ここは、一旦結社と教会の撃退でいいわよね」

「具体的に言えば、五浄市から追い出すってことでいいんだよな?」

「ええ、そうね」

「ただ、それじゃあ、また体制を整えて、狙ってくるんじゃないか?

 わざわざ、組織の精鋭を使って、攻撃してくる奴らなんだろ。一度、やられたくらいで、諦めないんじゃないか?」


 出動されている戦力が通常任務とは違い過ぎるはずだ。それほど、敵勢力にとってセラフの存在は重要なのだと思う。となれば、たった一度、やられた程度では諦めないのではなかろうか?


「そうね。でも、その点はシュンは気にしなくていいわ。少しでも、時間があれば十分だから」

「わかった」


 どうやら、セラフなりに考えがあるらしい。いつまで、俺はセラフと一緒にいるのか分からないし、その責任も負えないのだから、あまり口出すべきではないのかもしれない。


「う~~~~~~ん」

「……………………」


 お互い頭を悩ませ、ひとつの名案を閃く。


「土地神の助力を乞うのはどうだろうか?」


 我ながら、最高の提案だと思う。この五浄市において、全能を誇る土地神であるヒメであれば、労せずしてあの強大な敵たちを撃退出来るのではないだろうか。


「無理ね」


 しかし、すぐに却下された。


「ああ、誤解しないで。その作戦が悪いと言っているわけじゃなくて、ルールで無理だと思うの」

「ルール?」

「うん。神格には、絶対に破れないルールがあるの。それは『人間社会には絶対に干渉してはいけない』。単純だけど、強力な法則よ」


 知らなかった。初めて聞いた。

 ヒメからは一切、そのような事情を聴かされていない。

 だからか、本当にそんなルールがあるのかと、疑問に感じた。だって、実際にヒメは神でありながら、病院を経営し、立派に経営している。それも立派に人間社会への干渉なのではなかろうか。


「でも、ヒメは実際に神でありながら、病院を経営して、医者として多くの人を見ているけど、それは感傷に当たらないのか?」

「そんヒメさんっていうのが、土地神なのでしょうけど、その神にも十分、ルールが適用されているはずよ。だけど、極東の島国の小さな土地の神様だから、そこまで強制力がないのよ。つまり、神格が低いという事よ。されど、神は神だから適用されるということ。どう?分かった?」

「ああ、わかった。しかし、そうなってくると、なかなか難しいな」


 俺たちの手元にある札は、本当に少ないのだと思い知らされる。

 今後の一つ一つの選択、一挙手一投足の動きだけでも命運に関わってくるという事実は、動きを鈍らせる。だが、だからといって、何もしないようでは沈んでいくようなものだ。なんとかしなくては。


「じゃあ、さっきみたいに、結社と教会の奴らを戦わせるってのはどうだ?漁夫の利を狙うんだ」


 自分的には、かなり良い策なのではないだろうか?

 先ほどに実例もあるのだし、2勢力で潰し合いをしてくれれば、だいぶ楽になる。


「う〜〜ん、悪くないけど、厳しいんじゃないかしら」


 またしても芳しい反応ではなかった。

 今度は、落ち着きながら尋ねる。


「なんでだ?」

「多分だけど、あの2勢力は秘密協定を結んでいると思うの。

 さっきにセイランとウィリアムの会話を思い出して欲しいんだけど、そんなような言葉を口にしてなかった?」


 あのクソ魔術師の言葉を思い返して、思い当たる。

 確かに、あの魔術師はしきりに協力を呼びかけていたが。

 そうか、そういう理由があったのか。

 となってくるとーー


「いよいよ、詰みだな」

「う〜ん」


 俺とセラフは沈黙して、本格的に頭を悩ませる。

 正直、良い案というものは生まれそうになかった。

 一度、俺が出したアンウィ振り返り、どこが良くなかったかを考える。すると、一つわかることがある。それは、一発逆転や奇を衒いすぎているかもしれない。もう少し、着実に積み重ねていくことが必要なのではないか。一歩ずつ、地盤を固めていくことだ。

 そのためにはーー


「もっと、仲間が欲しい」


 小さく呟いて、頷く。

 そうだ。敵勢力に比べて、今の俺たちに足りないものは、戦力だ。仲間だ。


「俺たちと一緒に戦ってくれる仲間集めはどうだろうか?」


 3度目の正直。

 まだまだ、この案にも問題はある。

 同じ魔術社会の住人が、この街にいるのか。そして、そいつが強大な敵と一緒に戦ってくれるのか。

 そのような問題だが、果たしてセラフの反応は肯定的だった。


「確かに、その考えはいいわね」


 素直に俺の案が認められたことが嬉しかった。


「うん、うん。だいぶ、悪くないというか、現状、一番良い案かもしれないわね」


 俺が悦に浸っている間に、セラフは何やら策を展開し、うんうんと頷いていた。


「ナイスよ、シュン!最高だわ」


 思ったよりも評価されていて、少し怖い。

 だから、俺は直接、自分の案の課題を述べる。


「そこまでいってくれて、嬉しいけど、そもそもこの街に神秘の世界に、どっぷり浸かっているやつなんて、いるのか?それに、いたとして、そいつは俺たちに協力してくれるのかよ?相手は教会と超強い結社なのだろ?」

「そうね。2つ目に関しては、交渉がいるでしょうけど、1つ目に関しては、問題ないわ。だって、この街には結社にも教会にも属さない魔術師がいるはずだもの」


 なんと。この街に魔術師がいたとは。しかし、セラフの言葉が推測の形であることが気になった。


「ちなみに、どのような理由で?」

「いえ、単純なことよ。さっき、シュンはこの街に土地神がいるといったわよね?」

「ああ」

「いい。土地神が生まれるということは、その土地に潤沢で質の高い魔力が流れているということなの。

 そして、魔術師はそういった土地を好み、根城にしようとするわ。だから、この街を代々縄張りにする魔術師がいないなんてことはあり得ないの」


 へぇ〜〜、そういう理由があったのか。知らなかった。


「う〜ん、これぐらいは神秘を知るものなら、知ってて当たり前なんだけどなぁ」


 なんか、セラフに苦言を呈された。

 確かに、根本的な知識感が否めないが、知らないことは仕方がない。そもそも、ヒメが全く魔術世界や神秘のことについて教えてくれなかったのだ。


「ま、いいわ。それじゃあ、善は急げね。早速、行きましょう」


 そういう時、セラフは立ち上がり、指っぱちんをする。

 すると、先ほどまでの部屋着が、嘘のように外着へと切り替わる。

 白シャツにニットと仕立ての良いスラックスを身につけ、髪型は一本三つ編みから、ホワイトブロンドのロングに変わっていた。

 対して、俺はボロボロな制服。

 露骨な格差が生まれていた。


「さ、行きましょう」


 セラフは特に気にしたこともなく、扉の外を促す。

 今回はさすがにl歩いていく。何度も空を飛んでいくのは、ごめん被りたかったので助かった。

 エレベーターまで行く途中ーー


「そういえば、魔術師が住んでいる場所はわかるのか?」


 大切なことを聞き忘れていた。分からないようでは大変だ。なんせ、この街に住む一人ひとりに当たらなくては、いけなくなってしまう。


「ええ、心配しないで。自信はあるから」

「一応、詳しく聞いておこうか」

「魔術師が根城を作る場所は、どこでもいいというわけではない。

 質が高く潤沢に魔力が流れる龍脈である事。そして、龍脈の中でも一番多く魔力が汲み上げ地点であることが求められるわ。

 その地点は、この五浄の街には、ざっと6つある。それを一つ一つ、当たっていけば、まぁ、問題なく出会えるのではないかしら」

「ふむ」


 確かな情報ではないが、実際こんなものだろう。

 具体的な案がない俺からしたら、特に口出しできるはずもなく、粛々とセラフの背を追った。


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