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エンジェルX  作者: 依澄 伊織
青春は命がけでこそ、意味がある
11/14

強力な協力者/作戦会議

 その言葉を引き出せたと同時に、安心したのか、大きな眠気が襲ってきて、「ふぁわ~~~」と欠伸をしてしまう。


「そういえば、寝てなかったね。連戦で疲れてもいるし、さすがに、眠く名てきたわ」

「時間は4時。そこのソファを貸すから、少し寝たら。

 これから、早速作戦会議をしようと思ったけど、そんな頭の回らなさそうな状態でやっても、意味なさそうですし」

「ありがとう」


 俺は静海さんに感謝を述べて、そのまま指さされたソファに移動し、目を閉じる。

 一瞬にして意識が闇へと沈む。


 #####


 どこか遠く、「バフン」という日常では聞けないような可愛らしい爆発音で目を覚ます。


「なっ、何だ?」


 驚きと共に、身体を起こし周囲を見渡す。

 誰もいなかった。


「どれくらい寝ていたのだろう」


 そう思い、壁にかかっている時計を見る

 短針は、3時を指していた。俺が寝たのが、朝の4時頃であったことを考えれば、今は15時。

 げっ、11時間も眠っていたのか。1時間くらいの仮眠のつもりが、がっつり睡眠をとってしまっていたことに、反省しながらも納得する。おかげで、やけに頭がクリアーで、身体が軽い。


「……………」


 立ち上がり、静海さんとセラフを探すために、部屋を出る。

 居場所は、どうせ、音がしたところだろう。

 あたりをつけて、向かう。そして、すぐに見つかった。

 その場所は、キッチンであり、何故だか部屋全体が煙で覆われていた。


「なんだなんだ」


 何かの非常事態かと思い、早歩きで行く。


「おい、大丈夫か」


 声をかける。


「ケホッ、コホッ、大丈夫!気にしないで!」


 すぐに、煙の中から声が聞こえると、強い風が吹き、煙が晴れる。

 キッチンの中央でセラフが翼を顕現させていたことから、その翼をはためかせて、煙を追い払ったのだろう。

 対して、静海さんは手に虹色の石を持っていた。


「ふぅ、何してたんだよ」


 特にケガなどが無さそうなことに胸を撫でおろしてから尋ねる。


「これを作ってたのよ」

 そういって、静海さんは、手に持つ虹色の石を見せる。


「ソシャゲのガチャ引ける石みたいだな」

「ちょっと、そんな世俗的な物言いしないでくれないかしら」


 中々、上手な例えだと思ったが、静海さんはソシャゲがお気に召さなかったらしい。ちょっと、怒られた。


「何に使うんだ?」

「これはね、魔石っていうの」


 いよいよ、ソシャゲじゃねぇか。それ使えば、星5キャラ手に入るのか?

 心の中で、そう思ったが、もちろん口には出さない。


「主な能力としては、刻み込んだ魔術を一定期間記録保持する事が出来る」


 へぇ~それは凄そうだ。

 静海さんの説明に感心する。

 でも、そんなものを今作って、どうするのか。そんな疑問にセラフは答えるのだった。


「これを次の戦いに使うのよ」


 #####


 俺たち3人は、再度ダイニングに戻り、会議を始める。


「作戦会議を始めていきましょうか」


 静海さんの号令と共に、会議は始まる。

 セラフが会議のテーマを語る。


「議題は襲撃日時と誰を狙うかでいいわね」

「ええ。私もちょうどそれについて話し合おうと思っていたわ」


 セラフと静海さんは、意外と相性が良さそうだ。


「と、その前に、おもてなしの一つもないようでは、静海家の名が廃るというもの。

 なにか、御茶菓子を持ってくるわね」

「いや、いいよ。そんな悪いー」

「わーい、早く持ってきて頂戴」


 両手を上げて喜ぶ。遠慮ないな。


「くっ、ちょっと待ててね」


 セラフの素直な遠慮のなさに苛立ちながら、席を立ち部屋を出る。

 数分後に、3つの紅茶が入ったカップとケーキが運ばれてくる。

 そして、セラフと俺、静海さんで分けられる。


「どうぞ」


 静海さんに促されて、カップに口をつける。

 とんでもなく美味しかった。

 芳醇且つ香り高いアールグレイ。

 味は濃厚でありながら、雑味はなく、後味も残らない。上品な味であった。飲めば飲む程、緊張が解け、安心する。


「美味しいわね」


 隣では、セラフがすでにカップの紅茶を飲み干していた。

「もっと、味わって飲めよ」と、他人事ながら思った。

 ま、そんなことはどうでもよくて。

 もう一つの皿に目線を移す。そこには仄かにチーズの香りがするチーズケーキがあった。

 俺はケーキを食べるときに、よくある小さなフォークを手に持ち、ケーキに切り込む。一口サイズに切って、口に運ぶと、チーズの酸味と砂糖の甘みが混ざり合ったチーズケーキ独特の味が口の中に広がる。また、クリームの舌触りは、濃厚且つ心地が良かった。

 紅茶だけでなく、ケーキも美味しいなんて……。


「こっちも、美味しい」


 急いで、紅茶を口に含む。


「………最高だ」


 口の中が幸せ。

 こんな状態で、作戦会議なんかできるのだろうか。

 普通に、ムリだろ。


「これ、どこのなのかしら?

 こんなに美味しいなんて、相当高いんじゃないの?」

「そうね。

 正直、結構いいものを取り寄せてるわ。

 紅茶の方は、イギリスの『Fortnum & Mason』っていうブランドの奴を取り寄せていて、チーズケーキの方は、『She’s Cake』っていう、マレ地区で売っているチーズケーキ専門店の商品よ」


 全然、わからないけど、すげぇ。さすが、魔術師の家だ。


「それよりも、早く作戦会議を始めましょう」


 紅茶を口に含みながら、作戦会議を切り出す。


「まずは、襲撃日時ね。これは、私の意見なんだけど、本日の深夜はどうかしら?」

「その理由は?」

「今であれば、まだ全機関員と全結社加盟の魔術師が街に集まっていないからよ。そして、まだ、その2つの勢力は完全な連携が取れていないと言えるわ」

「それは確かなの?」

「ええ、私の使い魔がしっかりと、捉えているわ」


 それは、この街に根を降ろし、様々な監視網を敷いてきた静海家当主だけが持つ情報であり、非常に心強かった。敵の動向や情報を仕入れられるというのは、かなりのアドバンテージと言えるだろう。

 静海さんを俺たちの陣営に引き込めてよかった。


「実際に、先ほどの死霊魔術師ウィリアムの件なんかは、最たる例ではないかしら」


 確かにそうだ。

 奴らの目的は共通して、セラフ殺害でありながら、いがみ合い衝突している。十分、静海さんの言には信ぴょう性があると言えるだろう。

 しかし、1つだけ気になったことがある。


「そもそも、なぜ、連携が取れていないんだ?あいつらは、一応セラフが言うには、秘密協定が為されているんだろう?」


 俺の疑問に静海さんが答える。


「そうね。だとしてもよ。

 例え、利害関係が一致して協定を結んでも、何千年と続く潜在的な対立関係は、1つの約束ごときで解消されることはないわ。それに、いま私たちを追う敵は、超精鋭ゆえに、誰かと群れる事を一切良しとしないわ。圧倒的利己主義且つ個人主義。だから、私たちは、まずその亀裂をつくべきだと思うの」


 なるほど、つまり、奴らは集団でありながら実態は個人で動いているのか。


「だから、私が考えるベースは各個撃破よ」


 それは奇しくも、以前俺とセラフで考えていた作戦と一致するものであった。


「それには、私たちも賛成よ。

 私たち対多人数を相手にすれば、絶対負けと思っていた。

 その動きが、唯一勝利に繋がると思うわ」


 セラフも静海さんの考えに賛成する。

 そして、話は次の段階に進む。


「それじゃあ、まず、誰を狙うのかしら?」


 静海さんは淀みのない言葉で、答える。


「セイランよ」


 セイラン。

 先ほどの金髪の修道女を思い出す。圧倒的な力で、どんな状況もひっくり返してきたセイランに、勝てるビジョンが浮かばない。

 しかし、セラフはその提案に、特に異論はないのか。目をつぶって小さく頷いた。


「一応、理由を聞いてもいいかしら?」

「理由は単純に、ウィリアムを戦い方は、死霊魔術師らしくゾンビを生かして数で押しつぶす戦いであると考えられる。すうると、私たちの利点である数と連携を活かせないからよ。だから、セイランを選んだわ。勿論、ウィリアムとセイラン以外の敵を狙うって考えもあるけど、そうなると見つけ出す作業がいるから、かなり時間を取られると思う。

 今の私たちは敵に、時間を与え態勢を整えさせるべきじゃない。

 だから、すでに素性が割れている二人の中から選んでいるわ」


 セイランである理由は教えてもらう。確かに、静海さんが言っていることに、突っ込むようなところはないが、ただどうしても、セイランと相対した身から言えば、そもそも勝利出来ると思えなかった。

 セラフが口を開く。


「どうやって、攻撃する気?」

「そうね………」


 静海さんは、少し頭を悩ませると答える。


「奇襲攻撃で、いいと思うの」

「そうね。それでいいと思うわ。というか、どんな攻撃方法でも、たぶん気づかれそうだから、意味ないのでしょうけど」

「まぁね……よし、この策で行こう思うのだけど、特に異論はないかしら」


 それに、俺は手を挙げて応える。


「はい、菊間君」

「ここまで、考えてもらって悪いんだが、この作戦で本当に勝てるのか?。正直、実際にセイランとぶつかってみて、勝てるイメージが一切、湧かないのだが」


 それに対して、静海さんは、ぶすっとした顔で腕を組む。


「しょうがないでしょ。こんな戦争みたいなこと初めてなんだもん。

 それに、相手は機関の精鋭よ。そんな相手に、いくら策を練ったとしても、大した訓練をしていない私たちに、ろくな連携は出来ないでしょうし、どうにもならないと思う」


 それは、そうだ。実際に、上手く連携を取れる気もしないし、そもそも作戦を覚えていられる自信もない。


「だから、変に作戦を組み過ぎてグダグダになるくらいなら、私たち一人一人が持つ特性を使って押し切る方が、大いに可能性があると思う」


 なるほど。言われてみれば、そうだ。

 よし。もう、ここまで来れば納得して覚悟を決めなければいけない。

 俺と静海さんのやり取りを見守っていたセラフは、俺たちの会話が終わると、1つの疑問をぶつける。


「ちなみに、教剣の居場所は知ってるの?」


 気軽に尋ねるセラフに、若干不機嫌になりながら答える。


「それを今から、探すのよ。

 だから、見つかるまで私の邪魔をしないためにも、どこかで時間を潰してきて」


 そういって、俺たちは静海家を追い出された。


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