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1 屈辱の日々

「今日からお前は俺の物だからな。仲良くしていこう」


 金髪の少年に真っ直ぐ見つめられ、命じられる。

 その言葉が私の屈辱の日々の幕開けとなった。



△▼△▼△



 私は精霊という特別な種族である。

 精霊とは、光の粒子やら火の玉に似た見た目のものなど様々。私はそんな精霊の中でも上位に位置する、人型精霊だった。


 とある小さな森で、動物たちと共に穏やかな暮らしをしていた私。

 そんな生活が崩れたのは、ある日突然だった。


 ――『精霊狩り』。

 希少な存在である人型精霊は、金になるからと人間に狙われやすい。

 それを知ったのは森から出た後のことだったので、私はあまりにも無警戒だった。


 赤く艶のある花のような髪、深緑の瞳なんかも人間の価値観で言えば美しく、そこも価値があったのだろう。


 すぐに捕らわれた私は売られることとなる。

 そして人間世界を漂った後、辿り着いたのはその少年の元であった。


『今日からお前は俺の物だからな。仲良くしていこう』


 飼い主――人間の元で働く。契約という鎖に縛り付けながら精霊は飼い主の奴隷となる。

 そんな規則があるらしい。そして私も、その少年と契約を結び、奴隷となった。


 ……もっとも、彼自身は『都合のいいペット』としか思っていなかったのだろうけれど。


 本来、精霊は森で生きるものだ。

 人間の家に囚われ、鳥籠の中で生かされる。そんな生活は望まざるものだった。


 しかし私は契約があるから、逃げられない。

 逃げられない中で、ただ人間の少年――ライトに飼い慣らされる。

 それは私にとって窮屈で辛く苦しい時間だった。


「遊ぼう」

「今日はあそこに行こうぜ」

「アンジュ、可愛いな」


 可愛いも、遊ぼうも、いらない。

 ただ私はあの森に帰りたいのだ。でも、何度そう叫んでも無意味であった。


 私とライトの主な契約内容。

 それは、私を何もかもから守る代わりに私がライトの家族になること。

 偽りの家族、偽りの絆。


 決して裏切ることは許されない。契約を破った瞬間、精霊は消滅してしまうのだから。


 何の自由も許されなかった。

 人型でありながら人間ではない私。


「大丈夫か?」だなんてライトは心配してくれるが、だからと言って放してくれるわけでもないというのに。

 私は内心悪態を吐きつつも、しかし慌てて笑顔を作った。


 そんなまま、ライトの傍で私は五年以上の月日を過ごす。

 次第にこの状態が普通だと思うようになる。そしてそれが幸せなのだと自分を信じ込ませ、なんとか心を壊さないようにした。


 ――そんなある日、突然にその苦行の時が終わりを告げる。

 私の前に『彼』が現れたのだ。



「やあ。遅くなってごめんよ、もう大丈夫だからね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 少年ライト、なかなかのヤンデレですね(^_^;   しかし、 >私とライトの主な契約内容。 >それは、私を何もかもから守る代わりに私がライトの家族になること。 彼にも何か影がありそう……
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