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大一番


 魔力を活性化させ、その状態を維持しようと試みてから一週間が経った。


「287、288、289!」


 結論から言うと、その試みは大成功に終わった。

 今朝から、俺は活性化の維持を、マルチタスクでこなせるようになり、訓練効率がグンと上がった。


 他者と比べて肉体が出来上がっていない分、まだ筋トレに時間がかかってしまっているが、剣技や対人演習は以前よりも大分ましになった。


「298、299、300!」


 剣を300回振り終えても、汗こそ流せど息切れはしない。


「おつかれさま。今日も悪くなかったわ」


 初めてノエルからの指摘を受けることなく一連の流れを終了することができた。


「ほんと、見違えるぐらい良くなった」

「いろいろとコツを摑めたんです」

「うん。これなら次のステップに進んでいいかも」


 次のステップとは、おそらく「型」のことだろう。「型」とは、ただ剣を振るだけでなく、より実践に活かせるよう、体と剣を連動させて行う一連の流れのことだ。


 俺は「型」の動きを教わった。彼女によれば、本格的に始めるのは明日からでいいだろうとのことだった。


 そういえば、彼女の俺に対する態度はいくらか柔らかくなったように感じる。毎日の頑張りと、ひたむきな態度が功を奏したのだろうか。非常に嬉しい兆候だ。


 その後は剣を用いた戦い方などをノエルから教わり、そして、あの時間がやってきた。


「これから対人演習を行う。全員集合!」


 広い訓練場に、訓練官の野太い声が響き渡る。基本的に訓練はあの人の指導で行われているが、ノエルに面倒を見てもらっている俺は、まだ彼から直接指導を受けたことがない。


「組み合わせを発表する」


 対人演習では全部で32人いる団員を一対一に、すなわち十六組の対戦が行われる。


「オルレード対ツキット、フラーラ対エルド、フィル対グローレス……」


 試合は、名前が呼ばれたものから順に行われる。

 

 フィルの相手はグローレス、俺が見た限りでは団員の中で一番パワーがある男だ。彼の一振りをまともに受けて両足をついたままでいられた奴は、演習においては一人もいない。対するフィルは小柄だが、スピードがある。攻撃を避け続け、隙を探って一撃を入れるという戦い方になるだろう。


「クロウフォード対ウィズ、レイヴン対フリル……」


 その後も名前が呼ばれ続け、そして、


「ナギ対ナイル」


 俺の名前は一番最後に呼ばれた。

 相手は、演習無敗。完璧な基礎を有し、常に最小限の行動をもって最速で敵を打ち負かす訓練兵最強の男。銀髪、銀瞳。そして、誰よりも俺を認めていない男。


 ナイルの姿を探す。

 彼は俺の前方、背中を向けて立っている。その表情は分からない。


 俺は、魔力の活性化という一つの壁を越えた。そして今日、手も足も出なかった、歯茎すら立たなかった対人演習でどれだけやれるかを確かめるつもりだった。


 その相手が、よりにもよって最強の男とは。


「それでは演習場へ向かえ」


 訓練官の声を皮切りに、団員がぞろぞろと訓練場の端に設置された演習場へ赴く。


「大丈夫?」


 移動途中、フィルが声をかけてきた。

 この「大丈夫?」は、実力の離れはもちろんだが、俺とナイルの関係を考慮してくれた上での問いかけだろう。


「……やばいな」

「……ナイルは、君に対して敵対心にも近い感情を抱いてる」

「分かってる」


 公の場での一対一だ。

 圧倒的な実力を見せて俺の心を折るには絶好のチャンスだろう。


「やるだけやってみるよ」


 今はただ、そうとしか言えない。


「お前も、頑張ってな」

「うん、ありがと。ナギも、ナイルのことなんてぶっ飛ばしちゃえ」

「本気で言ってる?」


 あまりにも無理な話だ。

 それこそ大大大覚醒しなきゃ勝つことすら難しいだろう。


 だが、ただで負けるつもりはない。

 


 


 

 




最後まで読んでくださった方には感謝しかありません。


横書きにより、算用数字と漢数字を使い分けてます。

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