挨拶もただならぬ
「今日から騎士団に加わることとなりました、ナギ・イロガです! よろしくお願いします!」
性別年齢さまざまなおよそ30人を前にして、訓練場に設けられた壇上で、俺は声を張り上げて自己紹介をした。
彼らは拍手と笑顔で俺を迎え入れてくれている。が、中には訝しげな目で俺を見ている者もいる。
ノエルから騎士団に関する基本的な情報を教えてもらい、練習を見学させてもらってから一日、俺は現在、人生で一番人に注目されている。
事前情報として彼らには、近々一人、新たに団員が加わることは知らされていたらしい。昨日はノエル以外の人物と関わることは極力禁じられていたため、団員の前にちゃんと姿を見せるのはこれが初めてである。
「ということで、事前に知らせていた通り、今日からナギは私たち同様、騎士団の一員となる」
「すみません」
ノエルが話し始めたと同時に訪れた静寂は、一人の青年の声によって破られた。
訓練兵が並んでいるその後方、俺と同じぐらいの背丈をした、銀髪の男。
「納得できません」
「ナイル」
「どうしてそんな、どこの誰かも分からないような、実力者ならまだしも、そういうわけでもないのでしょう?」
ナイルと呼ばれた青年は、静かに、されど確かな怒気を孕んだ声で、ノエルに向かって異を唱える。
「ナイルの言いたいことはよく分かるわ。でも、これは団長が決めたことなの。彼に対する反感は、団長の決定に反対することと変わりないのよ。それでも納得できない?」
「……団長のことです。何か考えがおありなのでしょうが、理解はできても、納得はできません」
「そう。それでも団員には違いないわ。そのことは忘れないで」
最後の言葉は、彼だけでなく、自分自身にも言い聞かせているように思えた。
そしてそれは俺にも言える。俺は団員として、それ相応の行動をしなければならない。ここにいる人がどのような野心を持って、矜持をもっ入団してきたのかは分からない。だが、間違いなくこの中で一番騎士団に思い入れがないのは俺だ。
だから、なんとなく、気まずい、申し訳ないと思ってしまう。
「ノエルさん」
「なに?」
壇上から降りてきた彼女に告げる。
「俺、頑張ります」
「……そう」
ここにいる多くの人に、俺は迷惑をかけているし、これからもかけ続けてしまうのだろう。ならば、少しでも力になれるように、俺は誠意を見せなければならない。
それに……列の後方、こちらを睨むように見ているナイルと目が合う。少し時間が流れ、向こうが先に目を逸らす。
「……」
長く何もない、刺激のない生活を送っていて忘れていた。そういえば、俺は短気で、火の付きやすい性格をしているんだった。
絶対に見返してやるからな。
認めてもらうため、認めさせるための騎士団生活が、たった今、本格的に始まった。
読んでくださった方には感謝しかありません。
横書きにより、算用数字と漢数字を使い分けてます。




