お迎え
「それでお前は、昨日から誰かにつけられてるんじゃねぇかって思ってるワケだ」
「ああ、どう思う?」
「自意識過剰だろ」
朝のHRで話そうとしたのだが、神谷が4限の途中で登校してきたため、こうして昼休みに相談してみたのだが、まあこの返答はある程度予想できていた。
「やっぱそうなのかな」
「そうだと思うぞ。それに、そんなに問題はないだろ。仮に不審者が追ってきたとしても、逃げればいいだけだからな」
「お前は足が速いからそれでいいかもな」
去年まで陸上部に所属していただけのことはあって、神谷は足が速い。並大抵の不審者ならば捕まることはないだろう。一方の俺はと言えば、いろんなスポーツこそやってはいたものの、一向に足が速くなることはなく、微妙も微妙なところなのだ。っていうか、並大抵の不審者ってなんだ。
「でも昨日と今日だけだろ? 気のせいってこともあるんじゃねぇか?」
「んーー、確かになぁ」
「まぁ、またなんかあったらどうするか考えればいいんじゃね? それより」
この話はここで終わりといったふうに、神谷は結論を大雑把に提示した。
すると、神谷は顎で廊下の方を、くいっ、と指した。
そちらを見れば、ひとりの女生徒が、おずおずとした感じで教室の中を覗き込んでいた。正確には、俺たちのことを見ていた。
黒い髪を肩まで伸ばしており、その立ち振る舞いからはどこか小動物っぽさが感じられる。
隣の2年6組の生徒、夜野黒海だ。
「迎えが来てるぞ」
視線を教室前方にやる。時計の針は、12時45分を指している。
「もうこんな時間か」
残り僅かになっていた弁当の中身をかきこむ。
「ごちそうさまでした」
「うい、いってらー」
空になった弁当をリュックサックの中に押し込み、廊下で待っているであろう夜野のもとへ早歩きで向かう。
「すまん、気づいてなかった。待たせたか?」
「ううん、私の方こそ、声をかけられればよかったんだけど……」
「いや、仕方ないよ。他のクラスで、人がいっぱいいる状況で特定の誰かを呼ぶのって、気が引けるもんな。俺も緊張するし」
夜野とは1年生のころに同じクラス、委員会に所属していた。話の趣味が合うこともあり、俺の数少ない仲のいい女友達だ。
2年生になってクラスは別々になってしまったが、それぞれがまた図書委員会に所属し、なおかつ当番の日も被っているということで、今でも最低週に2回は顔を合わせている。
「行くか」
「うん」
課題の話だとか、最近見たアニメの話だとかをしているうちに、俺たちは図書室に着いた。
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