外
おはようございます。
硬いベッドで一日寝ただけなのに、もう体がバッキバキです。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”」
憂鬱だ。
だが、楽しみでもある。なぜなら、今日から俺は騎士団の一員になるからだ。不安も大きいが、精いっぱい頑張ろうと思う。
――チャリン
体を伸ばそうとして気づいた、手錠が結ばれている。昨日まではこんなものなかったのに、寝ている間につけられたのか。
「やっと起きた」
牢屋の外から声がする。目をこすり、徐々に視界が明瞭になっていく。そこには、白髪赤目の少女がいた。白を基調とした、冒険者によくみられる服装と比べて少し軽装なものを着ている。
見覚えのある顔だ、南の森で俺の魔法を見たあの少女で間違いない。
「待ちくたびれた」
「……すみません」
寝起きが故、反射的に謝ってしまったが、よく考えれば声をかけてくれても良かったのではないかと思う。
「まぁいいわ」
少女は牢屋の扉に近付き、鍵を開ける。そして顎まで伸びるウェーブのかかった白い髪の毛を揺らしながら、顔でついてこいという仕草をした。
手錠からは鎖が伸びており、俺はそれに引っ張られるようにして歩き始めた。
――タン、タン、タン、タン
「……名前聞いてもいいですか?」
「ノエルよ。これからよろしく」
「ノエルさん、よろしくお願いします。僕はナギです」
「よろしく」
――タン、タン、タン、タン
「……ノエルさんが僕の監視人なんですか?」
「そうよ。不本意だけどね」
「……」
「……」
――タン、タン、タン、タン、タン、タン
き、きまずい……。
薄暗い通路に、俺と彼女の足音だけが響く。簡素で、物寂しい音だ。
しばらくするとその音に、男や、女の声が混ざるようになった。俺たちの会話量が増えたとかじゃない。全く別の声だ。
一本道のつきあたりには柵があった。ノエルがカギを使ってそれを開ける。柵を出てすぐ右には、鎧に身を纏った門番? が一人立っていた。
「お疲れ様です」
男が、ノエルに向かって敬礼をする。俺とは目を合わせようとしない。
少し広くなった道を進むと、徐々に牢屋が現れ始めた。両側に連なるようにして設置されているそれは、俺が入っていたものに比べてかなり狭いように見える。
中には女、男、大人、子どもらしき人物までもがいた。静かにしている者もいれば、柵を両手で持って騒ぎ立てている奴もいる。熱がっていないところを見るに、やはり俺が入っていた場所は特別だったのだろう。
「ここは地下収容施設」
周りを見ていると、彼女がそう言った。
「収容施設ですか?」
「そう。地下は十階にも広がる犯罪者、危険人物を収監する場所。あなたがいた場所はその最下層。特に要注意な人物を入れておくところね」
「……へぇ。随分と怖がられてるんですね、僕」
「私としてはあなたを騎士団に入れるなんて反対も反対なんだけど……団長は何を考えているのかしら」
露骨な溜息を吐いた彼女を前に、俺はとてつもなく微妙な顔をすることしかできなかった。
しばらく歩いていると、階段が現れた。俺は彼女の後を追うようにして、その階段を上っていく。横幅は狭く、大回りな螺旋状になっているようだった。
階段を上り切ると、広間に出た。警備員らしき人物が数名と、何やら書類と向き合っている人が数人いる。
「今からあなたを宮殿まで連れていくわ。暴れないでね」
建物の正面ではなく、裏口らしきところから外へ出る。大きな壁で覆われており、厳重に管理されていることが見て取れる。その壁には大きな扉があり、両端には警備が二人立っている。
「お疲れ様です」
警備員がノエルに挨拶し、扉が開かれる。
出た先は両脇が道になっていた。そして、正面にも扉がある。その向こうからは、男女の入り混じる気迫あふれる声と、何かがぶつかり合うような音が響いてくる。
ノエルが先導して、声の方へと向かっていく。
「ハァァァァッッッ!!!!!」
「ヤァァァァァッッッ!!!!!」
先は広い砂場で、男女が木刀を持って、それを振り下ろしている最中だった。掛け声とともに、157,
158と数字を数える野太い男の声が響き渡っている。
まさに稽古といった光景がそこには広がっていた。
「こっちよ」
俺は、その雰囲気に圧倒されながらも、彼女の後をついていった。
横書きにより、算用数字と漢数字を使い分けてます。
最後まで読んでくださった方には感謝しかありません。




