騒がしいギルド
翌朝、ギルドに訪れた俺は、どことなく慌ただしいような空気を感じた。ざわめきだっている。
金髪の受付嬢、リアスさんの元へ行き、何が起こっているのか聞いてみる。
「昨日、南の森でとてつもない魔力波動が観測されたんです。現場に向かった調査隊と、森の奥に入っていた冒険者によると、公道付近の木々が広範囲にわたってなぎ倒されていたとか」
「へぇー」
知らない風を装って返事したが、絶対に俺のことだろう。
「上級魔法以上の威力であることは確定みたいですね。あ、上級魔法ってわかりますか?」
「さすがの僕でも分かりますよ」
「え、分からないと思ってました」
「僕のことをなんだと思ってるんですか?」
確かに世間知らずだが、これでもきちんと勉強はしているのだ。
リアスさんにも討伐の基本情報など、知識面でちょくちょくお世話になっている。
いろいろ聞くたびに、彼女は俺の無知さにそれはそれは驚いたことであろう。顔にそう書いてあった。故に、俺は彼女に、何も知らない人間だと思われている節がある。
「すみません。でも、勉強しているようで何よりです」
生き残るために勉強すべきだと彼女が言ってくれたことも、俺が知識を優先させていることに少なからず影響している。
「あー、それと、依頼の引継ぎをお願いしたいです」
「分かりました。では、依頼内容を確認しますね」
「はい。お願いします」
達成できなかった依頼は、持っている依頼書を再提示することで、翌日に再挑戦することができる。これを行うのは二度目だ。
また、ギルドの受付嬢は当番制なのか、日によって担当が変わるのだ。
昨日はリアスさんではなく別の人が担当だったため、彼女は今一度、俺がどのような依頼を受けていたのかをじっくりと確認した。
「あれ、この依頼……」
「?」
「ナギさん、昨日南の森に行ってたんですか?」
「はい。今日も行くつもりです」
「大丈夫でしたか?」
「昨日は早めに帰ったので、魔法に関しては何もありませんでしたよ」
「そうですか、良かったです」
彼女はほっと一息ついて顔を綻ばせた。
「今日は何人か調査隊が赴いているのでいざとなっても大丈夫だとは思うのですが、くれぐれも気をつけてくださいね」
「はい」
彼女は俺の身を案じてくれている。ひょっとして、俺のことが好きなのだろうか? はい、戯言。
それはそうとして、心配してくれる人がいるというだけで心の持ちようがだいぶ違ってくる。そういった面でも、受付嬢は重要な役割を担っているのだろう。
ギルドを出て、南の森へ向かう。
「……行かない方がいい気もするけど」
本当なら、昨日の今日で、事を起こした張本人が南の森に向かうのはあまりいいとは思えないのだが、そうは言っていられない。
お金を稼がなきゃいけないし、何より、魔法を使ったときのあの感覚を忘れたくない。
東、西、北は、今の俺が冒険するにはレベルが高いと聞くし、町の近くで魔法を使えば、いざとなったときにどんな被害が出るか分かったもんじゃない。
となると、やはり強い魔獣が少なく、とてつもなく広大である南の森に行くしかないだろう。
「なるべく昨日の場所から離れたところに行くか」
もしも昨日の超強力魔法を使ったのが自分だとバレれば、面倒なことになるに違いない。ひょっとしたら実力を見込まれていい方向に物事が好転するかもしれないが、怪しい人物として拘束されるのが現実的な話だろう。
細心の注意を払って、魔法の練習、ひいては依頼の達成を行わなければならない。
しばらくは、いろんなことに気を使って行動しなければならない。
おひさしぶりです。
最近忙しかったのですが、これから更新再開します。
横書きにより、算用数字と漢数字を使い分けてます。
最後まで読んでくださった方には感謝しかありません。




