創造魔法(クリエイト)/深淵魔法(サビス)
その日の夜、少し広くなった部屋のベッドの上、俺は【青】の魔導書の読破に勤しんでいた。
魔導書はハードカバーの単行本より少し大きめで、「魔法とは」「魔法の発動方法」「魔法の階級」「魔法名」などが書かれており、【青】属性の情報について、求めていたものはこれ以上ないほどに手に入った。
「詠唱……」
魔法を発動するには、詠唱する必要がある。
いわゆる言霊のような役割を果たしており、定められた文言を口にすることで魔力と相互反応を起こし、魔法が発動する。
簡単なものでは『打ち流せ』と唱えるだけでいいらしい。
簡単なものと言ったが、それは要するに【初級魔法】のことを指している。
魔法には階級があり、【初級魔法】【中級魔法】【上級魔法】【超級魔法】の4つに分かれている。
初級に5つ、中級が3つ、上級は2つ、そして超級に1つ。
数えたところ、全部で11個の魔法が書いてあった。
級が上がるにつれて呪文が長くなっている。正確に唱えることが発動条件の一つにあるため、より難易度が高くなっているのだろう。それと、必要になる魔力量も大きくなる。
詠唱が完璧でも、その魔法を発動するための魔力が無ければ、その呪文は全く効力を発さない。
ここまででも随分と興味深い内容だったのだが、何よりも気になったものがある。
「【創造魔法】、【深淵魔法】」
最後の方に書かれていた二つの魔法。響きもさることながら、特筆すべき異常性は、その説明にあった。
【創造魔法】
――特定の個人が持つ、唯一無二の魔法。
意図的、無意識的、発現においてどちらのケースも存在。
威力、性質などは魔法内容、術者に依存。
どの魔法形態にも属さず、一切の呪文詠唱を必要としない。※なお、トリガーは必要とする。
長々と書かれていた説明文を要約すると、こんな感じだろう。
実は、先ほど階級について読んでいた際、「術者が二人以上確認されているものを記載」という旨の注意書きがなされていたのが気になっていたが、つまるところ、この【創造魔法】も、誰かが同じ魔法を発動したらどれかの階級に分類されるのだろう。
「『インフィニット・ヒール』『テレポート』『ダウン』」
いくつかの技名とその内容が書かれている。
無限回復、空間移動、状態異常。
『テレポート』は、触った相手を移動させることも可能。
『ダウン』は、相手の魔力量、体調、士気などを著しく落とす範囲魔法。加えて、武器の性質なども落とすことができ、無機物にも有効。
ほかにもいろいろあり、どれも一癖も二癖もある魔法だった。
通常の魔法と比べて複雑で、自由度が高い。ゆえに強力。
そして、どの魔法もすでに術者が亡くなっている。
おそらくだが、生きている間に本に詳細な情報を載せることは、多くの人が許さなかったのだろう。もしくは、そういった暗黙の了解みたいなものがあるのかもしれない。
もう一つ、【深淵魔法】の欄を見てみる。
「禁忌……?」
そこには、「【禁忌】自らを代償とする。使用を禁ず。」とだけ書かれていた。
魔法例も、発動方法も詳しいことは一切表記されていない。
気になるのだが、どうにも今の自分とは関係のないように感じる。
「それよりも」
今は【初級魔法】に集中したい。
さて、この【初級魔法】『アクアスフィア』は、球体の水を手のひらから打ち出す魔法である。詠唱も、『打ち流せ』のみで、最も基本的な水魔法と言っていい。
「打ち流せ」
何度かやっては見たが、やはり口に出すだけでは何の変わりもない。
魔力と絡め合わせることが必要なのだろう。魔力に言葉を乗せるような感覚。
だが、これが非常に難しく。イメージができても、難しい話、自分の魔力の上を、漢字とひらがなが流しそうめんの麺みたいにただ流れている情景しか想像できない。
考えうるに、この「言葉のイメージが」完全に魔力と一体化させることが重要なのだろう。個人流かもしれないが、それが納得できる。
「…………っはぁ」
集中しても、どうにも感覚がつかめない。
「これは練習が必要だな」
初めての魔法。
簡単に使わせてはもらえなさそうだ。
横書きにより、算用数字と漢数字を使い分けてます。
最後まで読んでくださった方には感謝しかありません。




