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アンラッキー


 土地勘がないためになるべく森の奥深くに入らず戦っていたのが功を奏し、俺は迷うことなくすぐにイリークへとつながる道に出ることができた。


 無事、切断されたコニュウゴの片方(下部)を回収し、現在は、道に沿ってもう片方を探しているところだ。おそらく、こちらも道の付近に落ちていることだろう。歩いてきた時間からして、そろそろ見つかってもおかしくはないが、


「……ん?」


 視界の先、何かの塊が道を塞いでいた。だが、どうにもコニュウゴの死骸には見えない。どちらかというと、瓦礫みたいな感じだ。それに、辺りに赤いものが散乱している。


 少し重い袋を肩に掛けながら、小走りで近づいていく。


 だんだんとその造詣がはっきりしてきた。赤いものは果物だ、リンゴによく似ている。そして、瓦礫のようなものは、木製の馬車の残骸だった。なぜ馬車だと思ったかというと、理由は簡単で、近くに馬(少なくとも見た目は)が倒れていたからだ。


 そして、その周りには、人が二人、血を流して倒れていた。


 急いで駆け寄る。

 一人はうつ伏せで顔が良く見えないが、50代ぐらいだろうか、もう一人は、金色の髪が特徴的で、20代前半に見える。両方とも男性だ。


「大丈夫ですか!?」


 それぞれに駆け寄り、声をかける。

 返事はないが、脈はある。二人とも気絶しているようだった。


「この人は……」


 確認しているとき、片方、若い男に見覚えがあった。痛みからなのか、苦しそうに顔を歪めているが、どこか爽やかな雰囲気を感じさせる青年だった。


 俺が初めてイリークについたとき、ギルドの場所を教えてくれた人だ。

 商品を仕入れて、帰る最中だったのだろうか。


「それにしても一体何が……」


 二人とも、金目のものを奪われているようには見えない。

 魔獣に襲われたにしても、周りに跡が無さすぎる……それに、かなりの出血だ。


 今一度、周りを詳しく見回したところで、あることに気づいた。


「何だこれ?」


 赤い血の色に混ざって、青色の液体が、大きな間隔をあけて、道の斜め左前方へと続いていた。

その液体は、よく見れば、右後ろの草むらにもあった。


 ……嫌な予感がする。


 まさかと思い、液体の後を追うようにして走りだす。青い液体の正体は、小さな丘を越えた先にあった。そこには、歪な形の、断面から青い液体を、血を垂れ流す黒い塊。すなわち、コニュウゴの上部があった。


「マジかよ……」


 アンラッキーにもほどがあるだろ。


 おそらく、飛んでいったコニュウゴが、走っていた馬車の上に落ちたのだろう。その衝撃で、馬車は壊れ、乗っていた人と馬が被害を被った。


 俺は急いでコニュウゴを回収し、再び馬車の元へと戻った。


 馬も人も生きてはいるが、俺には彼らの状態がどれほどなのかが分からない。一刻も早く、医者など、誰か対処ができる人のところへ送るべきだ。 


 だが、どうすればいい。どう運べばいい。仮に、コニュウゴが入った袋を置いていったとしても、大人二人を抱えて町まで行くとなると相当な時間がかかる。加えて、馬を放っておくのも気が引ける。


 誰かが通るのをべきだろうか。いや、それでは手遅れになってしまうかもしれない。


「どうすればいい……」


 何かもっといい方法は無いかと、頭を巡らせていると、


 ――ブルルゥ


 鳴き声とともに、馬が立ち上がった。


「動けるのか……?」


 ――ブルゥッ


 馬が答えるようにして、力強く鳴いた。

 体の至る所が傷ついていて、そこから赤い血が流れ出ている。とても動けるようには見えないが……


「……!?」


 そう思ったのも束の間、馬の体に開いた大きな傷口が、次々にゆっくりと閉じていった。流れ出た血と、小さな傷は残っているものの、ダメージが大きいであろうものは、もうほとんど見当たらなかった。


「……頼むぞ」


 なんか、大丈夫そうだ。


 彼らを一人ずつ馬の背中に乗せ、最後に俺も乗る。果物も、持てる分だけ持った。二人が落ちないようにしっかりと手で支えだところで、馬が振り返ってきた。


 出発していいか? と聞かれているような気がした。


「大丈夫だ」


 そう言うと、馬は再び前を向き、イリークに向かって歩き出した。



 



 


 

みじかめ


横書きにより、算用数字と漢数字を使い分けてます。


読んでくださった方には感謝しかありません。

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