上々上々
「づがれ"だぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"」
喉の奥から声を絞り出し、ベッドに倒れこむ。
決してふかふかとは言えないが、それでも今日一日の疲れを癒す効果は絶大だろう。だってもう既に動きたくない。
あのあと、トリブラナを10匹ほど倒した俺は、へとへとになりながらギルドへ戻り、受付で依頼の達成を報告した。リアスさんは「初めてでこんなに倒したんですか!」と、驚きながらもテンション高めに、俺のことを労ってくれた。
それと、ありがたいことに、10匹倒した分の報酬はかなりおいしく、俺は替えの冒険服を買い、ギルドでご飯を食べ、町の外れの宿を3日分取った。湯屋もあり、そこで温泉にも入った。
お金は少なくなってしまったが、明日に繋げる一日としては、上々だろう。おかげで、体も心もだいぶ回復した。
「はぁ……」
うつ伏せの状態から体を回し、仰向けになる。
「もっとお金を稼がないとなぁ」
質素な宿の天井を眺め、そう思う。
二日目にして、人らしい生活ができたことは誇ってもいいことだろう。
だが、それを今日だけでは済ませてはならない。
明日も、明後日も、その後も、俺はよりよい生活が送りたい。
さらに言えば、防具や魔法に関する本など、欲しいものもたくさんある。
「ナイフだけでも買っておくか」
お金は減るが、明日も稼ぐことを考えれば大丈夫だろう。
しかし、今日のようにトリブラナ10匹を倒し続ければ、生きることはできるだろうが、そもそもそのような依頼が常にあるとは思えないし、もっと効率の良い稼ぎ方もあるはずだ。
俺は、この世界について知らないことが多すぎると、つくづく思う。
情報が必要だ。誰かに聞くか、本を読むか。
本来なら、食堂で誰か冒険者と話ができればとも思ったのだが、夕方前という微妙な時間帯ということもあってか、人があまりおらず、何人かの冒険者もパーティー内で盛り上がっており、とても聞けに行ける状況ではなかった。
それに加えて、彼らの警戒心も強いのだろうか、俺のことを気にする者もいるものの、話しかけようとする素振りを見せる人は一人もいなかった。
自分から行けばいいのだろうが……己のコミュ障が憎い。
……だが、やはり思う。一人で動くには、限界があるのかもしれない。
「パーティーか……」
考えはしたが、「冒険者としての経験値0」「剣の扱い不可」「魔法使用不可」とかいう、何の役に立つかもわからない人材を欲しがるパーティーがあるとは思えない。魔力量が桁違いに多いとは言っても、その利点の活かし方があまり分かってない以上、それを売り文句にしても仕方がないだろう。
「俺、なんにもねぇな」
改めて現状を振り返ると、どうにも悲しい現実が見えてきた。
でも一応、パーティー募集の貼り紙が無いかだけ見ておこう……。
少し悲観的になってしまったが、それはそれとして、明確な目標は定まった。
まずは、何よりも情報を頭に入れることから始めよう。まずはアリムからもらった本を隅々まで読み込む。そこで得られなかった情報は、また別の本を買うとでもしよう。それなりに大きな町だ。探せば本屋の一つぐらいあるだろう。そこまで詳しいことじゃなければ、周りの人に聞けばいい。
そして、そのためにはお金が必要だ。生活水準を上げるためにも、冒険者業務に勤しむべきだろう。
「……寝るか」
これからの道筋を決め、明日に備えて目を瞑る。
ふと、アリムに聞けばいいのではないかと思いついた。あいつは自分のことを神だと言っていた、ならば、なんでも知っているのではないか。
目を開ける。
「……アリム」
試しに呼びかけてみても、返事はない。
……期待しない方がいいか。
あの出会いがイレギュラーだったと考えた方がいいだろう。
やはり、自分でどうにかするほかない。
より一層忙しくなるであろう明日からのことを考えて、俺は再び目を瞑った。
横書きにより、算用数字と漢数字を使い分けてます。
読んでくださった方には感謝しかありません。




