表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/36

視えた色


 朝日だ。朝の匂いだ。

 鼻がつんとするような、どこか薄さを感じる、澄んだ空気だ。


 心が決まる。

 やっぱり俺は、これからこの世界で生きていくみたいだ。


「ぶえっくしょん!!」

 

 ところでみなさんおはようございます。色芽柊です。

 さて、昨日はアドレナリンやなんやらで体が火照っていたみたいでして、まぁ、夜というものは大層寒いものでございまして、ね、つまるところ、風邪をひいてしまったみたいです。


「ずずず……」


 鼻をすする音が、早朝の広場に小さく響く。

 頭も痛い。


 寒さで目を覚ましてしまうほどの気温ではないが、しっかりと体調に影響を与える程度には肌寒い。幸先が悪いことこの上ないが……これはチャンスかもしれない。


 昨日の出来事を思い出す。アリムに殴られた瞬間、俺は反射的に魔力を使った。自分の体が危機に瀕したことがトリガーになっていると考えれば、もしかすれば、風邪をひいて体がダメージを受けている今ならば、魔力について新しい何かをつかめるかもしれない。


「ふぅううう……」


 目を閉じ、深く息を吐く。

 俺はまだ体に流れる魔力というものを知覚できていない。だから、どんなに小さくてもその存在を認識したい。


「すうううぅぅぅ……ふううぅぅぅ」


 全身に意識を集中させる。

 どれくらい時間が経っただろうか、急に、ふわっとした感覚に全身が包まれた。ポカポカとして、温かい。


 感覚を逃すまいと、それを強く意識する。

 穏やかに、緩やかに、体を流れている。嫌な感じは全くしない。ただただそこにあるといったような、謎の安心感を覚える。


「……?」


 何だ?

 流れに……色がついた?

 感覚だけだったものに、色が視えた。実際に見たわけではないが、脳内にふわっと、浮かんできたのだ。


 青と……緑。


 2色だ。混ざり合っていない。絡み合うことはあっても、その2色は完全なる別物として体を流れている。


「つかんだ」


 流れが視えた。ただそこにあるだけだったものが、煙のようなモヤで脳内に現像される。


 規則的なそれを、自らの意思で動かそうと意識する。


「……」


 動かない。視えているのに、操ることができない。

 始めから自由自在に動かすことは、やはりできなさそうだ。


 ならば明確な目的をもって動かすべきか。

 一歩ずつでいい。何か小さな動きでも作れないか。


 意識を頭に集中させる。


 ……。

 …………。


 きた。

 流れに不規則性が生じる。

 微量ではあるが、ゆっくり、ゆっくりと、頭の上部にモヤが溜まっていく。


 さらに集めて、集めて、逃すまいとしていると……意識が……薄れてきた?


「……はぁ!?」


 思いっきり息を吐きだし、吸い込む。

 いつからだ、いつから呼吸をしていなかった。


 落ち着け、落ち着いて深呼吸をしろ。

 爆発しそうな肺に、ゆっくりと空気を流し込む。


 全身に冷や汗が流れる。


「はぁ……はぁ………はぁぁぁ」


 最後に深く息を吐きだし、ベンチに深くもたれかかる。


 集中しすぎていて、呼吸を忘れるなんて経験は始めてだ。

 体の深いところに入り込んでいたから、気づかなかったんだ。次に魔力を意識するときは、気をつけなければいけない。


 だが、


「痛みが……消えてる」


 額に手を当てる。

 頭痛が消えているのだ。体全体のダルさはまだ残っているが、頭は憑き物がとれたかのようにすっきりしている。


「成功したのか?」


 頭にモヤが溜まっていくような感覚を覚えている。あれが魔力を操るということなのだろうか。いや、実際に頭痛が治っていることからも、操り、効力を発揮させることができたと考えていいだろう。


 だが、安心、安定してできる保証はどこにもない。何度も挑戦する必要がありそうだ。


 今一度、魔力の感覚を思い出し、心に留める。


 時計を見る。あと少しで6時になりそうだ。

 確か、ギルドの門番が、冒険者の新規登録は朝の6時からできると言っていた。


 すると、町全体に鐘の音が鳴り響いた。

 どうやら夜だけでなく朝も鳴るらしい。まだ寝ていたい人からすれば迷惑極まりないだろうな。


「~~~ッ、よし」


 立ち上がり、全身を伸ばす。


 一体どんな感じなのだろうか。

 俺は、期待感とともに、ギルドへ向かって歩き出した。


 



 


 

 




 

 

更新

横書きに合わせて、算用数字を用いています。


嬉しいことに、何人かの方がブックマーク登録をしてくださりました。これからも頑張ります。

読んでくれた人には感謝しかありません。これからも見守っていただけると、泣いて喜びます。


いつか本屋で自分の本を手に取るそのときまで。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ