表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
村人が世界を救って何が悪い  作者: まよねえず
第三章:冒険者試験編
70/75

64.5 今夜はお楽しみですね

 受付を終えたエイド達は、エアリアが取っていてくれた宿へと戻っていた。

 冒険者試験が始まるのは翌日の午後からということで、時間を持て余したエイド達は街を散策し、日が暮れて今に至る。

 一日中街を歩き疲れたエイドは、汗を流してベッドに座り、一息ついていた。


「エリナ姉のやつ、くっついて離れねえからまじで疲れたぜ」


 エイドは首にかけているネックレスを手の中でくるくる回しながら愚痴を呟いていた。

 その頃、廊下を鼻歌交じりに歩いているミネット。


「いや~、風呂嫌いだけど、ここの大浴場はなかなかでしたな~」


 風呂上がりでほてっているミネットは、満足そうに歩いていたその時、部屋の前でもじもじしているエアリアを見つけた。

 ミネットは咄嗟に曲がり角に身を隠して気配を殺す。そして、エアリアが立っているのがエイドの部屋だと気づいたミネットは、にんまりと笑みを浮かべる。


(おお?なんか面白いことになりそうな予感♪)


 ミネットは心を躍らせていると、覚悟を決めたミネットがようやくエイドの扉を叩いた。

 返事と共に出てきたエイドにエアリアは少し驚いていた。


「読んでおいてびっくりするのはおかしいだろ」

「びっくりしてないし!」

「んで、何の用だよ?」

「あ、あの……ちょっと、話があるから、中に入ってもいい?」


 背中に何かを隠してもじもじしているエアリアに、不信感を抱くエイド。


「まさか、ミネットとグルになってどっきりとかするんじゃねえだろうな?」


 不意に飛び出した自分の名前に、ミネットは思わず壁に張り付いて、全力で気配を消す。この時、殺し屋をやっていてよかったと、心の底から思っていたミネットだった。


「ち、違うから!で、入ってもいいの?」

「まあ、別にいいけど」


 エイドの許しが出たエアリアは、周りを気にしながら、低い姿勢で部屋の中に入っていく。そして、扉が閉まった瞬間、


加速(ラピッド)!』


 目にもとまらぬ速さで扉の前に移動するミネット。

 音を立てず、ゆっくりと顔を扉に近づけ、耳を当てる。


(密室に年頃の男女が二人………何も起きないわけがない!!)


 恋愛が大好きな年ごろの乙女は、はちきれんばかりに心を躍らせていた。




 しばらくして、大浴場を堪能し、戻るときにばったり出会ったフラムとヒスイが廊下を歩いていた。


「あんな阿保二人の世話をして、ヒスイも大変だな」

「エイド兄ちゃんは気が緩めば知能指数一気に下がるから本当に大変」


 二人が話しながら歩いていると、息を荒げて聞き耳を立てているミネットが見えた。


「何やってんだ――」


 フラムが聞こうとした瞬間、ミネットは人差し指を口に当て、静かにするように促す。

 そして、二人にも聞けとジェスチャーすると、再び耳を扉に当てた。

 フラムとヒスイは顔を合わせ、言われた通りにミネットの後ろに回り、耳を当てる。

 すると、中からエイドとミネットの声が微かに聞こえる。


「ちょっと、私こういうの初めてなんだから、優しく脱がせてよね」

「しゃーねえだろ。俺だって初めてなんだから」


 その会話を聞いたフラムとヒスイは言葉を失った。フラムは思わずミネットに聞く。


「(おい、これどういうことだよ!?)」

「(フラムの思ってる通りだと思うよ~♪)」


 戸惑っている二人をよそに、エイドとエアリアの会話が進んでいく。


「よし、準備出来たな。じゃあ、入れるぞ」

「うん…………ちょっと、そんな乱暴にしないでよ」

「だから、初めてなんだからしょうがねえだろ」

「あ……入った…………」


 二人の会話に、聞き耳を立てている三人の顔は赤くなり、鼓動が早くなっていく。


「もう出していいか?」

「もう!?心の準備が――」

「いや、もう出すぞ」


 三人は更に扉に体重をかけていく。

 その時、ドアノブからバキン!と何かが砕ける音が聞こえた。

 瞬間、体重を支えることができなくなった扉が、勢いよく開き、三人は部屋の中になだれ込む。

 エイドとエアリアは何が起こったかわからない顔で三人の方を見る。


「「え?」」


 三人が二人の方を見ると、エイドの手には小さなロボットのようなものが握られていた。

 刹那、ロボットの腕はポン!と綺麗な音を立て、エアリアの額に直撃する。


「痛ッ!?」


 その状況に、三人は誤解していたことに気が付いた。

 二人が初めてだと言ったのは、あのロボットを組み立てることだった。そして、床に散らばっている包装。脱がせると言ったのはこの包装紙だった。

 そして、エアリアが乱暴に入れるなと言っていたのは、飛び出した腕の事。エイドが出すと言ったのは腕を発射させることだった。

 事の真相は、街をめぐっていたときに買ってきた玩具を、エイドと一緒に組み立てていたという、普通に考えれば、何ら違和感のない会話なのだが、三人はとんでもない勘違いをしていたのだ。

 それに気が付いた三人は、ゆっくりと立ち上がると、服の埃を払い、何事もなかったかのように部屋を出て行った。


「え?まじで何?」


 本当に何が起きたかわからないエイドは、疑問を通り越して恐怖を抱いていた。

 すると、おでこを抑えながら、エアリアが言う。


「黙ってこれ作ったから拗ねちゃったのかな?」

「だから言ったろ?フラムとミネットも誘おうって」

「でも、ミネットとフラムいなかったんだもん」

「まあ、いっか。それより、このロボこのリモコンってやつで飛べるらしいぜ?」

「ホント!?やってやって!」


 その後も、二人は気を取り直してロボットの玩具で長い夜を楽んだ。

 そして、夜が明けた……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ