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村人が世界を救って何が悪い  作者: まよねえず
第二章:囚われの猛獣編
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おまけ:ゴールデンエイド

《グリンティア》へ向かっているエイド達だったが、少しだけ進行方向とはずれて移動していた。

 というのも、ミネットがもう一箇所、別で行ってみたい場所があるというのだ。


「で、お前が行きたいってその場所は、一体どんな場所なんだよ」


 エイドは魔導車の屋根で横になっているミネットに聞いた。

 ミネットは体を起こして、その場に座り込み、得意気に語った。


「そこはね、見る者すべての視線を奪い、魅了する、《黄金の泉》さ!」

「黄金の泉?」


 両手を広げて言うミネットとは相対して、いたって冷静なフラムは聞き返した。


「そう!無限に金が湧きだす泉は、気運があがるとかで、商人の御用達になってる、パワースポットさ!」

「なんだ、ただの金欲しさかよ」

「ミネット、金にがめついと男からもてないわよ」


 目をキラキラと輝かせるミネットに、エイドとエアリアは興味なさそうな口調で言う。しかし、その眼は金そのものになっていて、口からは涎があふれている。


「あんたらが一番興味ありそうじゃん」


 ヒスイは本を閉じ、外を歩く二人に冷静に言った。

 そして、ため息交じりに、興奮するミネット達に言った。


「いい?あの黄金の泉って、確かに金に見えるけど、本物の金じゃないの」


 その言葉を聞いてエイドとエアリアの目が普通に戻った。


「あの泉からは特殊な水が湧いてて、近くの金属を含んだ岩から流れた水が反応して金に見えるの」

「「へぇ~」」


 ヒスイの説明に感心するエイドとエアリアを見たミネットは、あの二人絶対にわかってないと確信する。まあ、実際に理解してないのだから当然なのだが。


「見た方が早いかもね。もうすぐ着くころだし」


 ヒスイは、魔導車から降りると、何やら周囲の植物を観察し、次々と摘み取っていく。

 エイドの家にいた時から、よく野草を持ってきては家で調合してたから、恐らくその材料集めだろうと、エイドは特に気にしていなかった。




 しばらくすると、茂みの奥が輝いて見えた。


「見て!あれがそうじゃない!?」


 エアリアが指を指すと、皆が視線を向ける。

 ミネットは魔導車から飛び降りると我先に茂みに突っ込んでいく。

 その後を追い、エイドとエアリアもおっていく。

 フラムとヒスイは、まるで無邪気な子供の面倒を見る母親のように大きなため息を吐いた。

 茂みを抜けると、そこには目を覆うほどに輝く、大きな黄金の泉があった。

 湧き出る水に波打つ度、金色の光を放つその姿に、全員言葉を失っていた。


「こ、これが《黄金の泉》…………」

「すごい………こんなものが自然にあるなんて…………」


 ミネットとエアリアは目の前の光景をどう表して良いか、わからずにいた。

 すると、後ろからヒスイが言った。


「言っておくけど、この水に飛びこもうなんて思わないでね。この水に飛び込んだら死――」

「とうっ!!」


 言葉を遮るように、エイドは迷わず飛び込んでいった。

 金色の飛沫をまき散らしながら、エイドの姿は見えなくなった。同時に、その場には静寂が訪れた。


「ヒスイちゃん、今なんて?」

「わ、私の聞き間違えかな~ヒスイ、飛び込んだらどうなるって~?」


 エアリアとミネットは現実から逃げるように、笑みを浮かべながらヒスイの方を振り向いた。


「飛び込んだら死ぬ」

「「……………………ん?」」

「飛び込んだら死ぬ」

「「二回も言わなくていいよ!!」」

「大事なことだから」


 まるで双子かのように声をそろえるエアリアとミネットに、ヒスイはいたって冷静だった。


「その水、体内に浸透しやすくて、一気に全身に浴びると、血液に溶け込んでうまく酸素を運べなくなる。そのまま、脳に酸素が運ばれなくなると――」

「呑気に説明している場合か!何とかして助けないと!」


 エアリアは説明をしているヒスイに大声で言うと、その場であたふたと慌て始める。と、その時だった。

 泉の中心から、何かが現れようとしているのか、もこもこと泡立っている。

 次の瞬間、両手を広げ、まるでどこぞの帝王が現れたかの如く、威厳ある格好で現れたエイド。

 その姿を見たエアリアとミネットは目を見開きこういった。


「「ご、ゴールデンエイドだ!!」」


 光り輝くエイドを見て目を輝かせる二人に対し、フラムとヒスイはまるで虫を見るかのように冷め切った視線を送っていた。


「で、でもどうやって浮いてるんだ!?」

「エアリア!あいつの足元、よく見て!!」


 ミネットに指さす方を見て、エアリアは驚いていた。


「そうか、浮いてるんじゃない!水面ぎりぎりの岩に立ってるんだ!しかも、片足で!!」


 よく見ると、エイドの足元には細い岩のようなものが立っている。その上に、エイドはプルプルと震えながら立っていたのだ。


「「ていうか、ゴールデンエイドって何?」」


 ヒスイとフラムは声をそろえて思っていたことを口にする。

 すると、エイドは岩を蹴って高く飛ぶと、エアリア達の前に着地する。

 そして、かっこよく決めようと、前髪をかきあげようとしたその時、ぐるんと白目をむいてその場にたおれてしまった。


「エイドぉぉおお!?」


 エアリアは次から次に起きる状況に、すでにテンションがバグっていた。

 すると、ヒスイが近づいてきて、エイドの胸を勢いよく踏みつける。すると、口から噴水のように金の水が噴き出してくる。


「この馬鹿が、何で忠告も聞けないんだ!面倒見るこっちの身にもなれ!」


 愚痴を吐きながら、何度も踏みつけるヒスイに、エアリアはドン引きして止めようにも止められない。一方、その後ろでは、腹を抱えて笑っているミネットとフラム。


「これでも飲んどけば二、三日で治るから、さっさと飲め」


 ヒスイは意識を取り戻したエイドに強引に何か植物をすりつぶしたようなものを飲ませる。


「ヒスイちゃん、それってさっき採ってた野草?」

「うん、この辺の植物はこの泉の水を吸って生きてる。だから、枯れてるのが多いんだけど、逆に言えば生きている植物はこの泉の水に対して抗体がある。それを使って薬を作ったの」


 言われてみれば、周囲草木の一部は枯れているものがある。


「まさか、あの時野草を拾ってたのって、こうなることがわかってたの?」

「こうなってほしくないと思って摘んでたけど、まさか、ここまで阿呆だとは思わなかった」


 大きなため息を漏らすヒスイは、笑い転げているフラムにエイドを運ぶように指示をする。

 こうして、エイド達は《黄金の泉》堪能し、その場を後にした。


 その後、エイドは完治するまでの間、黄金のう〇こをするたびに全員に見せようとしていた。

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