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村人が世界を救って何が悪い  作者: まよねえず
第一章:悪魔の炎編
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24. 罪悪感

 エイド達の戦いが終わってから二週間が過ぎた。

 ベッドの上で手を開いたり握ったりしているエイド。近くにあった木の棒を手に取ると、剣を振るうように素振りを始める。そして、ベッドの上で跳躍すると、身を捻りながら一回転すると、綺麗な着地を見せる。


「ふぅ!やっと治った!」


 エイドはつい最近まで怪我人だったとは思えない程の元気の良さでガッツポーズをする。

 その横では、シュッシュ!と音を立てながら、軽いステップを踏んで見えない何かと戦っているエアリアがいる。


「私もばっちり!」


 それを見ていたフラムと、エイドとエアリアの診察に来た医者が、呆けた顔で見ていた。


「治ってますね」

「見りゃわかりますよ」


 医者の言葉に、フラムは思わずつっこんでしまう。


(完治するまで一か月以上はかかると言っていたにもかかわらず、たったの二週間で完治するなんて、こいつらバケモンかよ)


 人間以外のなにかを見るような目で見るフラムに、エイドとエアリアはじろじろと見てどうしたのだろうと、首を傾げる。

 すると、部屋の扉を誰かが叩いた。


「入っても良いか?」


 その声はロドゴスト王の者だった。

 エアリアは「どうぞ」と一言かけると、街の復興作業で少し疲れた様子の王が、側近を連れて入ってきた。

 王は包帯を外しているエイドとエアリアを見ると、ほっとした様子で言う。


「怪我の方は問題なさそうだな」

「はい!おかげさまでこの通り治りました!ありがとうございます!」


 エアリアは元気よく王に頭を下げる。


「気にするな。礼を言うのはこちらの方だ」


 王はそう言って、側近に何かを手渡すように言うと、上質な布で作られた袋を受け取った。


「ちゃんと礼も言えてなかったからの。改めて、この国を救ってくれてありがとう。少ないかもしれんが、これはほんの気持じゃ」


 王は袋をエアリアに渡す。受け取ったエアリアは予想より、手に重みを感じ少し驚く。

 袋の中身を恐る恐る空ける。その横で、エイドも一緒になって中を見る。すると、二人は目を丸くした。

 中には、目を瞑ってしまうほど輝く金貨が、これでもかというくらい入っていた。


「ギルドに掲載した依頼の成功報酬に加え、我々の気持ちも含め、合計金貨二十枚だ」

「「金貨二十枚!?」」


 エイドとエアリアは王の言葉に声をそろえて驚く。

 金貨二十枚となれば、数十年はしごとをしなくても暮らしていける程の大金だ。

 エイドとエアリアは(よだれ)を垂らして、光り輝く金貨を目に焼き付けている。すると、衛兵が少し曇った顔で、エイド達に聞こえないように王に尋ねる。


「本当に良いのですか?街の修繕費だけならともかく、城内の修繕費も合わせるとかなりの金額に――」

「黙れ!恩人の前だぞ!金ならどうとでもなる!」


 衛兵と王の会話が聞こえたエイドとエアリアの動きが、時が止まったかのようにピタリと止まってしまった。そして、顔から血の気が引いていき、顔が真っ青になっていく。

 エアリアは緊張からか、上ずった声で王に聞いた。


「あ、あの~……城の修繕費って、そんなにかかるんですか~……?」

「聞こえてしまったか。だが、そなた達が気にすることではない」


 王はこういっているが、そういう分けにはいかない。何故なら、城を破壊した犯人はこの二人なのだから。

 エイドとエアリアは後ろを振り向いてこそこそと話始める。


「ちょっとこれまずくない?」

「ああ。非常にまずい状態だ。口裏は合わせているが、いつばれるかもわからん。死罪何て言われてもおかしくないぞ!」

「死罪!?国救ったのに死ぬなんてごめんだよ!」

「ていうか、お前壊しすぎなんだよ!ほぼお前が壊したようなもんじゃねえか!」

「なによ!あんただって楽しんで壊したそうじゃない!私のよりたちが悪いでしょ!」

「うるせえな!そうするしかなかったんだよ!」


 言い争いをしていると、王が困った顔をしてこちらを気にしている。


「そなた達、一体何を話しておるんじゃ?」

「い、いえ!何も!」


 エアリアは目に見えて分かるほど動揺して返事をする。

 エイドは再びエアリアに小さく言う。


「ここは何としてでもごまかすしかない」


 エアリアは深く頷くと、改まって王に聞いた。


「差し支えなければ、修繕費がどのくらいかかるか教えていただきたいのですが……」


 王は話すかを迷っているが、渋々口を開く。


「なぜそこまで気になるかはわからんが、知りたいのなら教えよう」


 王は側近の兵に、説明するように促すと、衛兵が頭を軽く下げ、一歩下がったところから説明をする。


「城内の一階西側の全部屋がほぼ全壊していることに加えて、地下の古い用水路から続く大穴。そして、その大穴から更に各部屋へと穴が広がるように部屋が破壊されています。そして、王室に関しては全壊といっても良いでしょう」


 城の状態を改めて聞いたエイドとエアリアの体から冷や汗があふれ出してくる。しかし、そんなことを知る由もなく、側近の衛兵は続けて説明する。


「現在、ギルドと冒険者に対しての依頼料を調整しておりますが、ドワーフへの依頼料も合わせると、ざっと金貨二十枚は超えると思われます」


 その金額を耳にしたエイドとエアリアは、焦りのあまり、体ががたがたと震え始める。何とか止めようと力んでみるが、むしろ体の震えは大きなる。


「とのことだが、知りたいことはこれで全部かのう?」


 王の声を聞いた二人は、まるで説教をされた子供のように、肩を震わせピタリと止まる。

 エイドはエアリアの方へ目だけ向けると、顎を少し動かして合図を送る。

 何が言いたいのかを理解したエアリアはゆっくりと前にでて王の前に立つと、手に持っていた金貨入りの袋を前に出す。


「どうぞ……これ、使ってください……」

「いやいや、それは受け取れぬ!それは私たちの気持ちでもあるのだ」


 王は驚きながら、エアリアの手をぐっと押し返す。


(まずい!このまま受け取ってくれなと、最悪な展開になっちまう!)


 エイドは焦ったようにエアリアの隣に行き、エアリアの肩に腕を乗せる。


「ロドゴスト王よ!これは今俺たちがもらった。ていう事はこれを俺たちがどう使おうが問題ないだろう?」


 エイドのナイスアシストに、目を輝かせて親指を当てる。エイドはそれにこたえるように親指を立てた。


「しかし、それではそなた達に面目が立たぬ」

「いいんですよ!俺らが払いたいって言ってるんです。気が変わらないうちに受け取ってください」


 エイドはエアリアの手と一緒に、袋を半ば強引に王の胸に押し返す。

 王は一瞬戸惑っていたが、慌てて頭を下げる。


「かたじけない!この恩は一生忘れぬゆえ!」


 王は金貨の入った袋を側近の兵に渡す。


「今すぐギルドへ行って依頼をして来い!ドワーフへの声掛けも忘れる出ないぞ!」

「はっ!」


 側近の兵の一人が急いで部屋を飛び出していった。

 王は改まってエイド達の方を向き、礼を言う。


「何から何まで、本当に感謝する。とはいっても、何もなしにこの国から返すわけにもいかない」

「いえ、そんなお気になさらず!」


 エアリアは手を体の前で手を振って拒んでいるが、王は何かないかと必死に考える。すると、何か思いだしたかのように言う。


「そうじゃ!魔導四輪駆動車を用意しよう!」

「まどうくどう?」


 なんのことかわからないエイドとエアリアは首を傾げている。すると、さっきまで黙っていたフラムが急に口を開く。


「魔導四輪駆動車な。魔力を燃料にして車輪を動かす車のことだ。馬車と違って、魔力さえあれば休憩する必要もないし、重い荷物を運べるし、都会じゃ小型化した魔導四輪駆動車が頻繁に走っていて、主流な移動手段になってる」

「おぉ……!流石、鍛冶氏。詳しいな」


 エイドは感心したように言う。


「まあ、そういう事だ。旅をするなら必ず役に立つだろう」


 王はそう言うと、部屋を後にしながらエイド達に言う。


「そうとなれば、今からでも準備しよう!」


 王は張り切ったように何かをしゃべりながら、部屋を後にした。

 完全に足音が遠ざかったのを確認したエイドとエアリアは、ため息交じりに地面にへたれこむ。


「危なかった~……」

「ばれたかと思ったよ~……」


 緊張の糸が解けた二人を見て、フラムは鼻で笑う。

 すると、エイドが思いだしたかのように言う。


「そうだ、ヒスイたち元気にしてるかな~」

「それなら問題ねえぞ。じじいとヒバナと一緒だ。お前のこと心配してたぞ」


 フラムは笑顔でエイドに言った。

 この一件の後、身内に反逆者が出たということもあり、城内に関係者以外を入れることを禁じてしまったのだ。事件の被害者であるヒバナは魔物と通じているかもしれないと、信用が得られるまでの間、城内に入れなかった。また、ヒバナと共に行動していた、ヴェルフ、ヒスイも城内の出入りを禁止されていた。

 エイドとエアリアは怪我の治療で部屋から出られない。そこで、フラムが街の外にでて、ヴェルフの元に行き、様子を伺っていたのだ。

 エイドはフラムの話を聞き、安心して笑みをこぼす。


「怪我も治ったし、みんなの所に行こうよ」


 エアリアは嬉しそうに言って立ち上がった。


「それもそうだな。ヒバナちゃんのことも気になるし、行くか!」


 エイド、エアリア、フラムの三人は三週間ぶりの再会のため、ヴェルフの元を訪れることにした。

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