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ダブり集

適齢期

作者: 神村 律子

 私は所謂「深窓の令嬢」と呼ばれる存在でした。


 生まれた時から沢山の使用人達に傅かれ、


「お嬢様」


と呼ばれて育ちました。


 他人には我儘と言われました。


 確かに兄弟姉妹がいない分、利己的に育ってしまったかも知れません。


 でも私は、その身分故に様々な人達に持て囃され、媚び諂われました。


 それを当然と感じ、もっとそうして欲しいと思う自分。


 誰も窘めてくれない。


 私の傲慢さは年を追う毎に酷くなっていきました。


 


 ある日、今までの振舞が全く通用しない時が訪れました。


 あまりにも突然過ぎる父の会社の倒産。


 何も聞かされていなかった私にとって、まさに「寝耳に水」でした。


 父は自殺し、母は失踪しました。


 何不自由なく生活して来た私にとって、一瞬にして漆黒の闇に突き落とされた心境でした。




 でも私は死を選んだり、姿をくらませたりはしませんでした。


 1つだけ私の性格で良い所があるとすれば、それは「絶対に諦めない」所だと思います。


 私は懸命に生きる術を探しました。


 今まで私に阿っていた人達が、仕返しとばかりに意地悪をして来た事もありました。


 それでも私は負けませんでした。


 何時か必ず見返してみせる。


 そう心に誓い、日々を送りました。



 そうした生活をしていた私にも、遂にその日が訪れました。


 「適齢期」です。


 まだ早い。


 そう思っていました。


 でも人それぞれ違うモノですから、仕方のない事かも知れません。


 私は震える手で市役所からの通知を開き、読みました。


「貴女の今までの生活データから試算した結果、貴女の死亡適齢期は今年の11月3日と決定致しました事をお知らせします」


 その日は私の60歳の誕生日でした。

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― 新着の感想 ―
[一言] 結婚かと思ったww 死亡とは… がんばったのに報われないですね。 かわいそうです。 結局彼女の人生はなんだったのでしょうかね… 虚しさでいっぱいです。 お察しします。 でもとても面白かっ…
2011/02/07 19:35 退会済み
管理
[一言] すみません。 一応作品の死の強制という恐怖は、分かっててコメントしたつもりなのですが、言葉足らずでした。 作品とは別で、大体あなたはこんぐらいで死にますよ、という行政サービスがあったらという…
[一言] 楽しく読ませていただきました。 死亡適齢期の通知ですが、怖いなあと思いながらも、 もし通知によって生活が改善されたならば、もっと生きれるかもしれないなあと考えていました。 心不全や脳こうそく…
感想一覧
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