粉砕
今、だーーーー!
私は床を蹴り、一気に距離を詰める。
そして、拳を振り上げながら跳躍しヒッチコックの上空へーー
「!!」
ヒッチコックが上から迫る私を見てみるみる青ざめる。
「『マグナムナックル』ッ!!」
そして拳を振り下ろした。
「くっ……!」
ヒッチコックは全てを諦め、目をギュッと閉じた。
ーー破裂音。
「……は……え……?」
恐る恐ると言った風にヒッチコックは目を開けた。
覆い被さるように私はヒッチコックの上にいた。
左手はヒッチコックの頭の横に。
しかし、『マグナムナックル』はそこではなく、右の拳。
残った拳銃を叩き潰した。
「貴女の……負けです」
「……どうやら、そのよう……ですね。
この状況から、体術で貴女に勝てるビジョンがありません」
全てを諦めて、脱力するヒッチコックを見て、私は身体を起き上がらせた。
手強い……相手だった。
単純な実力としては私が勝っていたと思う。
しかし、それを覆しかねない相手を幻惑する技量を持った相手だった。
ヒッチコックを殺さずに済んだのは運でしかない。
叩き潰し、弾け飛んだ拳銃。
運よく?当たらなかったが、その破片がヒッチコックの頭に当たっていたら、あるいは死なせていたかも知らないのだから……




