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説得
「茶番は必要ありません。
実際のところ、貴女はこんなこと望んでないんでしょう?
労力の無駄になるのが見えているのだから」
「……」
「わかってるんでしょう?
このまま、何をしようとも、しなくとも、ヤンカム王の失脚は見えています。
ヤンカム王のために戦っても、儲けはありませんよね?」
「ああ……何を言うのかと思ったら、そういうことですか。
確かに概ね、貴女の言う通りです」
「なら、無意味な戦いは必要ないとわかりますよね?」
「……ええ、全くもってその通りです」
「ヒッチコック!キサマァッ!!」
怒鳴るヤンカム王をヒッチコックは手で制した。
「……しかし、言いませんでしたか?
プロの傭兵は契約を全うしないといけません。
それが沈み行く船でも」
「っ……料金は回収出来ないかも知れませんよ?
今、銃を下ろすなら、クリシュナ王子に料金を肩代わりしてもらうよう説得します」
「前金は頂いているので、それは出来ませんね。
その後の回収のことはご心配なく……牢屋にいる人物から回収する"方法"はいくらでもありますので」




