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緩急
目は逸らせない。
それでも、意識は割かなければ対処は出来ない。
音と、それ以外に弾丸の動きによる振動を肌で感じとろうと、『エアスト・フィールド』を解除した。
「っ……!」
弾丸の軌道は私ではなく、後ろのクリシュナを狙っていた。
やられた。
ヒッチコックから視界から外すリスクを負ってでも、私はクリシュナを守るために振り返った。
「なっ!?」
「はっ!」
二発の弾丸が左右からクリシュナに迫る。
私は左右のナイフですくい上げるように弾丸を捉え、
そのまま両断してしまわない様に手を返して、床に叩きつけた。
「ぼ、僕を狙ったのか……?」
クリシュナは無事だ、今はそれ以上の事に気を割けない。
再び振り向いて、ヒッチコックを探す。
意外なことにヒッチコックは正面から二丁拳銃を構えてこちらを狙っていたーー狙っていた?
「っ!!」
否、既に弾丸を発射した後だ。
私は咄嗟にナイフで防御し、致命傷を避けた。
「うわっ!」
衝撃で、ナイフを離した。
2本のナイフは床を転がっていた。
ーーナイフを離した?私が?
「ーー!」
両手を見ると弾丸によって"穴"がそれぞれ空いていた。




