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メイドは銃を抱く
「作戦失敗……ですね、撤退が無難な選択ですかね」
ヒッチコックは特に何も気にしていないような風に言う。
何故だろう……私は彼女が誰かに似ている気がしてならなかった。
「ふざけるな!何のために高い金を出して雇ったと思っている!」
「……はぁ。まぁ、沈む船に乗る趣味はありませんが……悪評に繋がりかねない、か」
ヒッチコックは立ち上がると、巨大な銃を放棄し、スカートの下から二丁拳銃を取り出した。
「ひ、ヒッチコック……」
戸惑うクリシュナを制して、前に出た。
「困惑はわかりますが、今は危険です。私が相手をするので下がって」
「あ、ああ……」
クリシュナが後ろに下がると私はナイフを構えた。
「やれやれ、とんだ貧乏くじだ。貴女みたいなのを相手にしないといけないなんて」
そう言うヒッチコックだったが、口調には焦りのようなものはない。
下手に動いて後ろを取られたら、クリシュナが危ない。
あえて動かず、相手がどう仕掛けるか伺う。
そんな私を見て、ヒッチコックは腕をだらんと脱力させた。
「……そうですか、では遠慮なくこちらから」




