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観客席から
後ろにいたクリシュナが語りかける。
「クリス、前へ出よう。陛下を……いや、父を助けなくては!」
「……」
「クリス!」
「もう少し……様子を見ましょう」
「そんな余裕なんて……!」
「……」
さて、どう伝えたものか。
"あの時"はどうだったか、詳細な記憶は飛び飛びでその時々に考えなくてはならない。
「……なにかキナ臭いんですよ」
「え?」
「不自然だとは思いませんか?こんな簡単に王宮の中央部に、パーティー会場なんかに襲撃されるなんて」
「それは……」
クリシュナは言いづらそうに顔をしかめた。
「……誰かが糸を引いてるからだよ。
この襲撃の噂くらいの情報は掴んでいた。しかし、確証がなかったから、誰にも言えず、対策を練っていたんだ」
「それが私だと?」
「情報を掴んだのは昨日、王宮に戻ってからだ。
君しか方法がなかった」
「ああ……いや、貴方の"言い訳"を聞きたい訳じゃないんです」
「っ」
悪い癖だ。
つい、クリシュナには当たりがキツくなる。
「要は、その糸を引いてるのが誰か、探れるかも知れないということです」




