少女が落ちてきた夜
無意味だと感じつつも、動線上の邪魔な”狼”を切り捨てつつ、他の”狼”達を追う――
”狼”達の多くは建物の屋根の上を駆け、北西の方角へと向かっていた。
そして、私は見つけた――
”狼”達が集まる”標的”に――
「!?」
”狼”にまとわりつかれた人影が、屋根から落下した。
「危な――」
助けようと地を蹴るが、彼女の動きを見て、すぐに足を止めた。
無防備の姿勢で落下したかと思うと、”狼”達を下敷きにし、
タイル張りの地面に叩きつけると、自身はその衝撃を緩和するように、
反動で宙に舞い――そして、私の目の前に着地して見せた。
「あ、貴女は、この前の!?」
あの水夫のような――そうだ、セーラー服だ。
セーラー服の剣士、あの時の少女がそこにいた。
「――――」
「貴女が狙われていたんですか!?」
少女は答えず、私を見据えて、剣を構えた。
「■■■■■■■■■■■■■■■、□□■■■!!」
「!?」
今、なんと言ったのだろう?
言葉だったはずなのに、私はその言葉を認識出来なかった。
と、次の瞬間――
「!」
少女は私に向けて斬りかかった。
「く……!」
私はそれを受け止め、鍔競り合いの形になった。
「ま、待って下さい!今、貴女と戦う意思は――」
再戦したいという、気持ちはあった。
しかし、現状を見れば、そんな状況でないことがわかる。
”狼”達は私達の剣が重なったのを見て、取り囲むように様子を伺っていた。
狼だと言うのに、まるで、漁夫の利を狙うハイエナのように――
「――!!」
少女はなおも力を込め、私を斬り伏せようとする。
「く……!」
前回と同じだ。
私の声は届いていない。
こうなったら――
「――わかりました」
「!?」
剣を跳ね返すと、少女は跳び、一定の距離をとった。
「――お相手、しましょう」
私は剣を構え直した。
”狼”達の狙いが彼女ならば、彼女を街の外に追いやれば、”狼”達は街から去るだろう。
根本的解決ではないとはいえ、それで街の人は助かる。
「貴女を、倒します……!」




